2024年12月22日( 日 )

消費者契約法改正

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    契約は、当事者間での法的な取り決めですので、当事者間で納得して合意した以上、契約に従う必要があります。しかしながら、契約の当事者の一方が消費者であり、他方が事業者である場合には、「情報の質及び量並びに交渉力の格差」があることから、消費者の利益を擁護する必要があります。消費者契約法では、事業者の一定の行為により不利益を被った消費者が、契約を取り消したり、無効としたりすることができます。今年6月1日に改正消費者契約法が施行されていますので、概要を解説します。

 民法でも、詐欺や強迫により契約をさせられた場合には、その契約を取り消すことができますが、消費者が詐欺や強迫を受けたことを証明するのは難しいです。そのため消費者契約法では、次のような不当な勧誘行為があった場合に契約を取り消すことができることになっていますが、改正法では「困惑類型」の(3)(4)と(9)の内容の追加がされました。

【誤認類型】
(1)重要事項についての不実告知
(2)断定的判断の提供
(3)不利益事実の不告知

【困惑類型】
(1)不退去 
(2)退去妨害 
(3)勧誘をすることを告げずに 退去困難な場所へ同行し勧誘(例:景色を見に行こうなどと誘って、交通の便の悪い山奥に連れて行かれた先で勧誘) 
(4)威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害(例:親に相談するといったのに対し、もう大人だから自分で決めないとダメなどと迫って相談をさせない) 
(5)不安をあおる告知 
(6)好意の感情の不当な利用(デート商法等) 
(7)(高齢者などの)判断力の低下の不当な利用 
(8)霊感などによる知見を用いた告知 
(9)契約締結前の義務実施など(契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難に) 
(10)過量な内容の契約

 消費者向けビジネスをされている企業では、自社の勧誘方法に問題がないか、改めて検討する必要があります。

 また、消費者契約法では、消費者に一方的に不利益な契約条項を無効とする規定があります。その1つとして、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項や、事業者の故意または重過失による損害賠償責任の一部を免除する条項は無効とすると定められています。他方で、軽過失に限っては、事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項を盛り込むことが認められています。

 そこで改正法では、軽過失による行為にのみ、賠償責任の一部免除が適用されることを明確にしていない免責条項は、無効とされることになりました。

無効となる例 : 法令に反しない限り、1万円を上限として賠償します
有効となる例 : 軽過失の場合は1万円を上限として賠償します

 御社の契約書の条項が「無効となる例」のような不明確な内容になっていないか、検討が必要です。

岡本弁護士
岡本弁護士

    また、消費者が、契約解除をする場合の損害賠償や違約金の金額を定める契約条項については、「平均的な損害」の額を超える部分を無効とするとされていますが、「平均的な損害」の意味が明確ではありません。そこで事業者は、説明を求められたときには、消費者に対し算定根拠の概要を、適格消費者団体に対し算定根拠(営業秘密を除く)を説明する努力義務が課せられました。そのため、違約金等の算定式やそれが妥当なものであることを、説明できるようにしておく必要があります。


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本  成史
(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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