2024年11月22日( 金 )

『ヨコミネ式』教育法の原点(前)

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社会福祉法人 純真福祉会 理事長 横峯 吉文

徹底した現場の尊重

 我が国の教育界における『傑物』とされる横峯吉文氏。同氏は『ヨコミネ式』教育法の創始者であり、鹿児島県志布志市内で『ヨコミネ式』の保育園を3カ所運営する、社会福祉法人純真福祉会の理事長である。6年前に全国ネットのテレビ局の報道番組でクローズアップされ、全国的に大反響があり保育・幼稚園関連の教育関係者や幼児の子育て中の親御さんからの問い合わせや相談が連日多数舞い込んだ。後に、国内の約360カ所の保育・幼稚園で『ヨコミネ式』が導入され、約10万人の園児が育っていき現在に至る。また、同法人の志布志市の保育園に入園を志願する方々の申し込みも年々増加し、近年はキャンセル待ち(ただしキャンセルする方は、皆無に等しい)の状態が続いている。なかには、北海道から転居し入園したご家族も存在するなど、『ヨコミネ式』教育法は、高い評価を受け世の中から求められているのである。

 横峯吉文理事長は、女子プロゴルファーの横峯さくら選手の父・横峯良郎氏の兄であり、さくら選手にとって伯父にあたることでも有名である。一方で横峯理事長は、いわゆる高名な教育学者でもなければ教育論者でもない。長年子どもたちと接し、どのようにすれば子どもたちの能力を引き出せるのかを、子どもたちを育てながら一緒につくり上げてきた─まさしく現場での活動を徹底し、尊重している。横峯理事長は自衛官、地元のスーパーマーケットの経営の職務を経験しながら、地元の少年少女へスポーツなどで通じた育成の活動を行ってきた。子どもたちと一緒に汗を流しながら、子どもたちの成長を見守り、励まし、支えてきたという。そのようななか、知人の教育界関係者が鹿児島県内にて保育園を運営し、良好経営を実践していることを見て一念発起。1981年に保育の世界へ入っていったのである。

 そのなかで横峯理事長は、「当時、我が国の保育の仕組みは子どもたちの成長のためになっていない」と痛感し、独自の方式である教育法を自ら研究・探求し、『ヨコミネ式』をつくり上げた。「すべての子どもは天才で、ダメな子は1人もいない。すべての子どもが天命を受けてこの世に生まれてきた。その天命を最大限発揮させたい」という理念のもとで実践する。その本質は、「自ら考え、自ら判断し、自ら行動・実践すること─すなわち自立することです」と、横峯理事長は『ヨコミネ方式』教育の真髄を語る。

横峯 吉文 理事長<

横峯 吉文 理事長

 「当時、あらゆる研究や探求を重ねて、今あるやり方にたどり着きました。『これだ』と確信し、皆に知ってもらおうと啓蒙活動を行いました。しかし、なかなか振り向いてくれないのです。なぜか─。それは、私自身が上段から物を言う態度で先生らに接していたからです。その『上から目線』に気づき、私自身がまずは態度を改善し、先生と一緒に取り組むことをいたしました。それから認めていただき、徐々に子どもたちの成長ぶりが高まり、成果が目に見えて出てきました」(横峯理事長)と、試行錯誤を繰り返し、先生と子どもたちと共に園庭で日々を過ごしながら『ヨコミネ式』をつくり、築き上げてきたことを力説する。机上の空論ではない、教育の現場での活動がすべてであるのが『ヨコミネ式』だ。

過保護の一掃

 『ヨコミネ式』の教育法は、「学ぶ力・体の力・心の力」が土台で、その手法は「読み・書き・計算・体操・音楽」で構成されている。すべてに『ヨコミネ式』の独自のノウハウが凝縮されており、単なる記憶だけの学習やかたちだけの運動など、小手先のテクニックを鍛える手法とは一線を画す、真逆の方法・真理だ。

 現在、保育園・幼稚園から『有名』小学校へ進むためのテクニックや方法を教えるやり方を徹底している教育関係施設の内容を、頻繁に見聞きする。だが『ヨコミネ式』では、先生は教えない(各所、基礎の段階では、園児に教える)。子どもたちを、見守り、励まし、支えるのである。

 「私も含め、先生は子どもたちには教えません。子どもたちに考えさせて、どのようにするとうまくいくかを、自ら気づくことを待ちます。子どもたちの可能性を信じます。どうすれば子どもたちの能力を発揮できるのかを、私たちは追求するのです。子どもたちを導いていくことです。それらの相互の関係をつくり、環境を整えることが私たち大人の役目です」(横峯理事長)と、子どもたちを認め、尊重して関わることが『ヨコミネ式』の源流である。

 そこには、短絡的に『ほめる、抱きしめる』などといううわべの『優しさ』は一切ない。むしろ、厳しい言葉が飛び交う。「テキパキ、キビキビ素早く行動しろ」「返事は!?返事しろ!」「声が小さい!聞こえない」「よーし、いいぞ!もっとできるぞ!」「整列!遅い!やり直し!」「人の前を横切るな!後ろを通れ!」などなど…、これらの言葉はほんの一例である。現在の都会の保育園・幼稚園では、ほとんど見られない光景である。そこには、甘やかしや過保護などは一切ない。子どもたちができるまでやらせる。もちろん、子どもたちの力量を先生らが把握したうえでのことである(たとえば、むやみに大きな声で返事しろと言っているのではない。その子どもの最大限の力を引き出すための叱咤激励であることが本質である)。子どもたちは、先生の指摘を的確にとらえて、自分で修正しようと努力している。

 システム化した幼児の教育現場で慣れ親しんだ方々には、理解し難いかもしれない。なぜなら『愛情』の基準と本質が、『ヨコミネ式』とは違うからである。
 「当初は、子どもによっては泣いたり、わめいたりして、やりたくないと駄々をこねる子どもはいます。それでもやるように促します。させてみます。うまくいかなくてもやらせます。当然、先生ら大人がきちんと見守って励まし、支えていることが大前提ですよ。子どもは天才ですから、経験し新たな発見をするのです。そしてできるようになるのです。そうしたら、次のステップへチャレンジする─その導きをして、その環境を整えてあげることが大人・先生の役割です」(横峯理事長)と、子どもの可能性を信じて、経験させることに対して重きを置いている。

 それは、何でも子どものためと大義名分をかざして、事前にお膳立てしたり何かを与えたり、すぐに答えを教えたりすることが、最高の愛情であるという『過保護』のなかでの勘違いした教育を提供する大人たちに対する、「そろそろ気づけよ」という強烈なメッセージではないだろうか。現に、同法人の保育園の子どもたちは、目が輝きのびのびとハキハキとした言動で明るく、楽しく、朗らかに日々を過ごしている。残念ながら、福岡市内の同世代の子どもたちには、ほとんど見られない。

(つづく)

■INFORMATION
社会福祉法人 純真福祉会
代 表:横峯 吉文
所在地:鹿児島県志布志市有明町野井倉8547-1
設 立:1981年3月
TEL:099-471-4600
URL:http://www.yokomine.jp/

<プロフィール>
yokomine_pr横峯 吉文(よこみね よしふみ)
1951年3月、鹿児島県志布志市生まれ。社会福祉法人純真福祉会「通山保育園」を設立。現在は3つの保育園と「太陽の子山学校演習場」「太陽の子児童館」の理事長。そのユニークな「ヨコミネ式」子育ては全国的に話題となり、カリキュラムとして採用する保育園、幼稚園が急増している。

 
(後)

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