2024年11月22日( 金 )

中ロの政府高官が北朝鮮を同時訪問したワケ

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、7月28日付の記事を紹介する。

中国・ロシア・北朝鮮 イメージ    北朝鮮では7月27日は「戦勝記念日」とされています。朝鮮戦争の休戦協定が結ばれた日であるからです。この日に合わせて、ロシアからはショイグ国防大臣が、中国からは李共産党政治局員が率いる代表団がピョンヤンを訪問しました。北朝鮮にとってはアメリカ軍を追い出した記念すべき日と見なされ、毎年、大々的な軍事パレードが挙行されています。

 とはいえ、新型コロナウイルスが影響し、2020年以降は外国の政府高官が北朝鮮を訪問することはありませんでした。今回、ロシアのショイグ国防大臣がピョンヤンを訪問したわけですが、どうやらプーチン大統領から極秘のメッセージを携えてきているようです。

 何かといえば、金正恩総書記の健康回復のためにロシアが長年研究してきた治療法を伝授するという提案に他なりません。実は、このところ金正恩総書記は体調を崩しているようです。

 たとえば、7月8日の「金日成29周忌」に際して、太陽宮殿を参拝する金正恩の写真や動画は一切公開されませんでした。毎年、この模様は大々的に写真や動画とともに公開されてきていましたが、今回は記事での紹介はあったものの、写真は添えられていません。

 また、7月26日、金正恩総書記は朝鮮戦争で戦死した中国兵の墓地を訪問したと報道されましたが、その様子を伝える映像もありませんでした。しかも、7月12日に「火星18」ミサイル試射を行った際に、現地で指導したとされる金正恩総書記の写真が2枚だけ公開されましたが、顔が異常にむくんでいたのです。

 さらには、これまでの発射成功の場面では、幼い娘を同伴したうえで、党の最高幹部らと喜びを全身で表す写真や映像が紹介されたものですが、このときには座ったままの写真しか公開されていません。韓国やアメリカの情報機関の分析では、「金正恩の体調は相当悪化しているに違いない」とのこと。

 そこでロシアのプーチン大統領は自らが実践している「特別治療法」を伝授しようとしたようなのです。そのために、わざわざショイグ国防大臣を派遣することにしました。

 なぜなら、この治療法はショイグ国防大臣がプーチン大統領の「不死願望」に応えるため、アルタイ山脈に住む紅鹿の枝角から採取した血の風呂を活用するもので、ショイグ国防大臣が自らを実験台とし、試行錯誤の上で、安全性と効果のほどを確認したとされているからでしょう。

 プーチン大統領は「ロシア帝国」の復活、すなわち、旧ソ連邦の再生を願っています。そのためにはウクライナをロシアに編入するだけではなく、旧ソ連邦を構成していた15の共和国もロシアに組み込みたいと構想を温めているようです。

 その際の切り札が「延命治療法」であり、サンクトペテルブルクに設立された「延命長寿研究所」で実験が繰り返されていて、ベラルーシはもとより中央アジア諸国の最高指導者らも特別待遇で治療を受けています。

 そうした知見に基づき、プーチン大統領は「永遠の命」を手に入れる夢を追い求めていると推察されるのです。プーチン大統領から見れば息子のような年下の金正恩総書記ですが、体調不良は否定のしようがないため、「何とか助けてやろう」と考えたのでしょう。

 ショイグ国防大臣の説得が功を奏すれば、金正恩総書記はアルタイ山中にあるとされる特別の湯治場で治療を受けることになるかも知れません。もちろん、中国からも伝統的な漢方や鍼灸治療の専門医を派遣するとの申し出が李政治局員を通じて伝えられた模様です。

 要は、ロシアも中国も金正恩の延命治療を通じて、北朝鮮を取り込み、さらには「グローバルサウス」と呼ばれる資源国の独裁者らの囲い込みを図ろうと目論んでいると思わざるを得ません。世界一の長寿大国を自負する日本とすれば、ロシアや中国に負けない手法を確立し、「健康外交」に活かすべきではないでしょうか。


 次号「第351回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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