2024年11月22日( 金 )

東久邇宮国際文化褒賞 受賞者の声(3)警護力を強化して世界平和へ貢献する

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

高宮城 ネスター 氏

 23年7月17日、東京の八芳園にて東久邇宮国際文化褒賞授与式が執り行われた。受賞者の1人、高宮城ネスター氏は、(株)エグゼクティブプロテクションのプロフェッショナルとして35年以上の経験をもち、これまでに5人の元米国大統領の警護を担当した。高宮城氏が校長に就任した、要人警護のスペシャリスト養成校の立ち上げ経緯と今後の展望について、(一財)東久邇宮国際文化褒賞記念会総裁・代表理事で、(一財)DEVNET INTERNATIONAL代表理事でもある明川文保氏との特別対談エピソードを交えながら振り返りたい。

日本中に衝撃が走った銃撃事件から1年

    2022年7月8日に起きた安倍元首相銃撃事件は日本中を震撼させた。卑劣な犯行が白昼堂々と行われた衝撃とともに、警護の在り方に関してさまざまな議論が巻き起こった。

 ネスター氏は「私も何度も映像を見ました」と前置きしつつ、日本の警護がはらむ問題点について、次のように指摘する。「これは奈良県警だけの責任ではなく、SP個人を責めることでもありません。想定されるケースごとの訓練が、十分ではなかったと思います。また、演説の立ち位置ですが、周囲360度にあれだけ空間をつくる配置は通常ありえません。どうしてもというなら、人を増やすべきでした。米国では現場の警護担当者が意見や要望を出せますが、日本は上からの命令に従うスタイルであることも問題でしょう。」

 同氏は、日本でアーティストのコンサートの警護に当たった際、ゲートで行われるチェックシステムの甘さに驚いたという。この国はもはや安全な国とは言い難い。時代とともに、攻撃に使われる手法なども複雑化していることを、日本人は強く認識すべきだろう。

要人警護を担当するプロ

 ネスター氏は、エグゼクティブプロテクションのプロフェッショナルとして、35年以上の経験をもつ。高度で専門的な個人保護を提供し、これまで5人の元米国大統領の警護を担当した。鍛えられた肉体と鋭い眼力で、多数の外国要人、聖職者、企業幹部、芸能人、著名人などの住居地や職場の、技術的・物理的保護戦略を立ててきた。さまざまなイベントやコンサート、映画などでも警備を担当し、嵐のハワイ公演やGLAYの20万人コンサートでは警備責任者として現場の安全確保に尽力している。ちなみに、SP(Security Police)は要人警護を担当とする警察官を、Body Guardは要人の身辺を警護し誘拐や殺害などの脅威から守る人(およびその職業)を指す呼称である。

要人警護のスペシャリスト養成校を立ち上げ

 明川氏は安倍晋太郎氏の私設特別秘書を26年間務めた。岸信介氏、安倍晋太郎氏、安倍晋三氏と、この政治家一家との三代にわたる交流を振り返りつつ、要人警護の強化や見直しの重要性、そして国の防衛力について、氏は次のように話す。

 「秘書時代、空港における金属探知機の設置に予算をつけるため尽力しました。岸氏は暴漢に刺されたり、三木武夫氏は右翼関係者から殴られたりしていますし、日本ではそのような事件が起こるたび、少しずつ要人警護の在り方が見直されてきました。

 私は警護はハードとソフトの両面が必要だと考えています。日本はこれが世界に比べて遅れていると言わざるをえない。そこで、DEVNETの主導でアカデミーの設立を宣言しました。たとえば、海上を運航する船が武器を使用することは現状では難しいです。銃をもった海賊に囲まれても放水で応対しています。これではリスクが高すぎます。」

より高度な訓練の場を

 これからの警護は、急速に変化する時代に合わせて高度な知識とスキルが求められる。AIは急速に進化し、セキュリティをかいくぐるハッカーは後を絶たない。国内の問題はもちろん、戦争をめぐる対応など難しい国際問題に向き合う世界の指導者たちは、さまざまな危険に晒されている。アカデミーでは可能な限り、リアルな訓練の場を用意する予定だ。備えあれば憂いなし、という言葉があるように、いつ起こるか分からない有事への最大の対策は、訓練の質と数なのだ。

 明川氏はアカデミーの今後の見通しについて、「訓練場等については、概ね山口県内で調整ができました。ただ、射撃訓練の問題があります。銃刀法の規制が厳しく、外国人の生徒が国内で銃を扱うことが難しいので、こちらは別の方法を検討しています」と話す。

世界へ向けたメッセージ

 ネスター氏は、「運営にあたり、さまざまな知識と人材が必要となります。現在、知人数人に協力を呼びかけています。トレーニングセンターのインストラクターだった人物や、大統領のセキュリティドライバーなどを集めて、チームつくる予定です」と意気込みを語る。世界中から入学希望者を募り、経験豊富な講師陣があらゆる場面を想定した訓練を用意して、ハイレベルな要人警護のプロを育成するのだ。

 明川氏は「アカデミーの卒業生を雇用し、世界へ派遣するためのカンパニーを立ち上げる計画まで立てています。世界の王族や首相をはじめ、経済界、芸能界、スポーツ界へ派遣していくのです」と述べつつ、卒業生の未来と活躍の場にまで思いをはせる。

 アカデミーの開校は個々の要人の警護はもちろん、世界中の人々の安心安全、そして平和に繫がるだろう。重要な役割を担う両氏の活躍に、今後も目が離せない。

【清家 麻衣子】


<プロフィール>
高宮城  ネスター
(たかやなぎ・ねすたー)
沖縄県出身。1984年から現在まで(株)エグゼクティブプロテクションにて、多数の外国要人、著名人、セレブ、企業重役などを保護するプロフェッショナルとして活躍。クライアントとその家族を保護し、安全で安心な環境を提供する。また、映画やスタジオ、アーティストのコンサート、イベントなどの警護をコーディネートしている。

(2)

関連キーワード

関連記事