コロナ下で抜本的な組織改革を図り、鮮やかにV字回復を遂げる
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(株)如水庵
ピンチを最大のチャンスに変え
組織を改革(株)如水庵の森正俊氏が代表取締役社長に就任したのは2020年4月1日。1週間後に緊急事態宣言が発令された影響で売上が8割減となった。いきなり不穏な船出となったが、実は父である恍次郎氏(現会長)も同じような経験をしている。1970年の社長就任から3年後にオイルショックが起こり、倒産の危機に陥ったのだ。このとき、福岡相互銀行(現・西日本シティ銀行)の四島司頭取(当時)からは「こういう時には一定の規模になっていないと、嵐が過ぎ去った後に経営が難しくなる」とアドバイスを受けた。苦しかったものの、不退転の覚悟で業務拡大に取り組み、10年後には10倍以上の売上規模を有する企業に成長をはたした。この経験から恍次郎氏は「オイルショックのおかげで今がある」と語ったという。周囲からは社長就任のタイミングに同情する声を寄せられるなか、恍次郎氏は「本当にいい時に社長になった」と実感のこもった一言を正俊社長に投げかける。
早稲田大学でラガーマンとして活躍していた正俊社長は、逆境に立ってこそファイトが出てくるという持ち前の性格を生かし、このアゲインストの風をフォローの風に変えていく。歴史を振り返ればスペイン風邪が収束するまで3年かかった。コロナも3年と判断し、社歴や理念、ものづくりの技術のすばらしさなどを再確認し、「ウィズコロナで成長し、アフターコロナで飛躍しよう」という心構えを社内に浸透させていった。
具体的には、「付加価値UPの『7project』」を考案し、短期で実現できる「筑紫もち適正価格」プロジェクト、「おもてなし」プロジェクトから、数年の時間を必用とする「工房人材育成」プロジェクト、「物流改革」プロジェクトなどの7つの課題を取り上げ、1つひとつの問題点を洗い出し解決していくことで、収益性を向上させ、組織の効率性を図っていった。現在は、短期プロジェクトだった「筑紫もち適正価格」プロジェクトは、「販売強化」プロジェクトという名称に変更し、筑紫もちの価値を上げていくチームに発展している。
「物流改革」プロジェクトは、今後予想される物流クライシスに対応するもので、物流部門だけでなく、製造部門、販売部門を含めた同社のサプライチェーン全体を改革するプロジェクトであるため、ある程度まとまった時間は必要となる。
恍次郎氏が社長だった時代は長期にわたりカリスマ性を発揮し、すべてを自分で決めていたが、正俊社長はそれぞれの職場のリーダーに権限を委譲し、リーダーの元で働くメンバーたちが力を発揮できるようにした。店舗のリニューアルもコロナのおかげで実現できたと言って過言ではない。
企業の体質改善に全力を注いでいった結果、営業利益率はコロナ前の1%から7%に跳ね上がり、黒字体質の企業に生まれ変わった。「今から考えるとコロナというきっかけがあったからこそ、思い切った企業改革が断行できたと思います」と語る正俊社長。3~5年かかると思われた組織改革が1年でできた感覚だという。「コロナは収束に向かっており、海外からの観光客も増えれば、さらに業績も上がっていくことでしょう」と意気込む。
同社の主力商品である「筑紫もち」は、九州産の「ヒヨク米」をこだわりの水で練り上げた餅の上に黄な粉がまぶしてあり、黒砂糖の蜜をかけて食するという人気の菓子だ。韓国にもこの「筑紫もち」とよく似た「インジョルミ」という菓子があり、観光で訪れた韓国人が、「インジョルミ」よりもおいしいと評判になり、SNSで拡散され、韓国人の来客も増えているそうである。
DXにも積極的に取り組む
同社はデジタル技術で業務の効率化を図るDXにも力を注いでいる。エビラボというデータ解析を行っている会社が提供しているAIを活用した販売予測システムである。過去のPOSデータや出荷データ、天気をAIに読み込ませ、さらに、メディアの紹介実績やコンサートなどが開催される情報などの外部要因を入力することにより、仕入れや製造の計画が立てられる。たとえば、2017年と18年の2年間で蓄積したデータを基に19年にそのデータを当てはめてみると、85%という高い確率で的中するという。
具体例を挙げれば、日持ちしない商品だが、「いちご大福」という白餡に季節のフルーツを包み込んだ人気商品がある。システム導入で仕入れ計画や生産者への発注量を決めて製造計画を立てることができるようになった。イチゴの廃棄ロス減少にもつながり、当初敬遠していた人たちからも「早く導入していればよかった」と称賛の声が挙がった。
連綿と受け継がれる職人の技
同社にとって熟練の職人が有している技術は無形資産のなかでも最大の価値といえる。この職人を育成し、将来に向けて継承していくためのプロジェクトが2つある。1つ目は、「工房人材育成」で、社内講師、社外講師を招へいし、職人を育成するとともに、ライン生産、品質管理、安全衛生を含めた人材のスキルアップと多能工化に取り組む。2つ目は、大福類のブランディング「おふく大福」プロジェクトである。「いちご大福」など白餡に旬のフルーツを包み込んだ大福類をコロナ使用の自家消費向けにブランディングした。博多駅マイングの既存店と、ららぽーと福岡の新店舗に職人を配置し、ミニ工房を構えた。
「庵」に込められた思い
建物を表す単位として、大規模なものから小規模なものの、順に「堂・殿・院・軒・庵」となっている。如水庵の庵とは、庵(いおり)を結ぶという言葉がある通り、非常に小規模の住宅を意味する。「如水庵はその社名が示す通り、目の前にいるお客さまを大切にし、小規模な空間だからこそ実現できる心づくしのおもてなしの精神をこれからも大切にしていきたいと考えております」と正俊社長は語る。
コロナで多くの企業がその舵の切り方に戸惑うなか、同社は見事なV字回復をはたした。そして、最後に、社長はコロナが収束した23年を飛躍の年にしたいという。飛躍とは、「従業員全員が自分の仕事に誇りを感じ、さらに、互いの能力を引き出しながら成長すること」にあるという。コロナを大きな転機と捉え、大胆な組織改革を断行した同社の飛躍はまさにこれからなのだろう。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:森 正俊
所在地:福岡県古賀市青柳3476-17
設 立:1989年11月
資本金:1,000万円
TEL:092-410-3244
URL:https://corp.josuian.jp/<RECRUIT>
募集職種:総合職
応募資格:経験は問わない
採用実績:2022年度/6人
採用予定:6~10人
問合せ先:jinji@52-net.com
採用担当:人事部 大串、後藤
URL :https://corp.josuian.jp/recruit/
<プロフィール>
森 正俊(もり・まさとし)
1976年、福岡市博多区生まれ。2000年早稲田大学卒業後、同年に(株)電通九州に入社。16年12月に(株)如水庵に入社。20年4月に代表取締役に就任。コロナ禍を企業体質改善のタイミングをととらえ、さまざまな改革を断行。利益率の高い強固な経営基盤を築き上げた。法人名
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