2024年11月14日( 木 )

時代の先を見据えてきた近鉄エクスプレスのグローバル戦略と展望(後)

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運輸評論家 堀内 重人

 日本のフォワーディング業界において、日本通運、郵船ロジスティクスとともに御三家と呼ばれる近鉄エクスプレス。1948年に近畿日本鉄道(近鉄)の国際貨物部門として業務を開始したことに始まる。当初は業務局観光部の管轄であったが、航空事業の将来性を見極め、航空貨物を専門に取り扱う日本初の会社となった。本稿では、この近鉄エクスプレスの沿革と今後の展望について論じたい。

業界に先駆けて中国・米国へ進出(つづき)

国際物流 イメージ    近鉄エクスプレスはまた、1980年代から中国ビジネスを展開してきた。

 85年の北京連絡事務所の開設を⽪切りに、上海、深圳、珠海、⼤連、厦⾨にそれぞれ駐在員事務所を開設。95年1月には、深圳に現地法⼈であるKWE深圳を設⽴している。

 中国ビジネスを加速させる転換点は、96年に現地企業との合弁会社「北京近鉄」を発⾜させたことである。同社は、航空・海上貨物輸送、ロジスティクス、中国国内輸送を中⼼に事業を拡⼤。KWEグループの中国展開の牽引役となった。

 2005年には、外国系物流業者としては初となる、中国の国内航空貨物取扱いのライセンスを取得する。さらに、07年には上海市の郊外に位置する外⾼橋という地区の保税区内に4万6,000m2の⼤型倉庫を開設するなど、中国経済の発展・拡⼤とともに、近鉄エクスプレスの中国での事業は拡⼤していった。

国際輸送サービス網の構築

 米国では1970年代半ば、カリフォルニア州のサンフランシスコ周辺でエレクトロニクス産業が急速に発展、「シリコンバレー」と呼ばれるようになった。すでにKWE⽶国を設立していた近鉄エクスプレスは、米経済の中心がこうして東海岸から西海岸へ移行するなか、のちにグローバル・カンパニーへと発展するエレクトロニクス企業との取引をいち早く開始し、事業拡大の足がかりとしていった。

 中国および米国への進出の成功を受けて、85年以降は世界各国に次々と海外現地法⼈を設⽴していった。85年2⽉にKWE英国、6⽉にKWEドイツを設⽴する。87年4⽉にはKWE台湾を、さらに同年6⽉にはオーストラリアと韓国に、それぞれ駐在員事務所を開設した。こうして短期間のうちに国際的なドアtoドアの輸送サービス網を確立し、のちの複合一貫輸送の礎を築いていったのだ。実際、この時構築された国際輸送サービス網は、さらに維持・拡⼤を続けながら、現在も近鉄エクスプレスのビジネスの発展に⼤きく寄与している。

今後の事業展開

 先にも触れたとおり、近鉄エクスプレスは2015年2⽉、シンガポールに本社を置く海運会社Neptune Orient Lines Limited (NOL)傘下のAPL Logistics Ltd(APLL)の全株式を取得することを発表。同年5⽉に完全⼦会社化した。

 APLLは北⽶・アジアを中⼼にロジスティクス事業を展開する物流企業である。⾃動⾞、リテール、消費財などを扱う⽶⼤⼿企業を中⼼に、⾼付加価値な戦略的物流サービスを提供する企業として定評がある。

 近鉄エクススプレスのサービスに、APLLが有する北米市場や自動車、リテールなどのロジスティックスという強みが組み合わされば、新たな価値を顧客に提供することが可能となる。APLLの子会社化はこうして、近鉄エクスプレスにさらなる事業拡大の道を拓くものとして、大きな期待を寄せられている。

 20年5⽉、近鉄エクスプレスは創⽴50周年を迎えた。今後の大きな目標として、以下の2点を掲げている。

(1)主⼒事業である航空・海上フォワーディング事業を基軸とし事業規模を拡⼤すること
(2)戦略的物流事業ではライトアセットモデルを基本に幅広い顧客ニーズに対応すること

 この2つを経営⽅針の軸とし、変化の激しい国際物流市場のなかで持続的な成⻑を⽬指すとしている。

 直近の中期経営計画では、欧米メガフォーワーダーに伍して戦うため物量拡大を最重要課題と位置付け、「航空貨物70万t、海上コンテナ貨物70万TEU(20feetコンテナで換算)」を目標としている。

 「"Global Top 10 Solution Partner"〜⽇本発祥のグローバルブランドへ〜」という⻑期ビジョンも策定。近鉄エクスプレスはいま、次の50年に向けて、新たな歴史を歩み始めている。今後の躍進に期待したい。

(了)

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