岸田首相の中東3カ国歴訪と日本のエネルギー危機回避策(後)
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、8月18日付の記事を紹介する。恐らく中国は地団駄を踏んでいるに違いありません。
なぜなら、ほぼ2世紀にわたって「人口世界一」の座にあった中国ですが、インドに追い抜かれたわけですから。
国連の最新の人口統計予測によれば、去る4月末、インドの人口は中国を上回ったと報告されました。本年末のインドの人口は14億2,900万人で、中国は14億2,600万人と予測されています。このままでいけば、インドの人口は2063年には17億人を突破するはずです。
インドで最も人口の多いのは首都のニューデリーで、3,000万人を超えています。もし、ニューデリーが国であれば、世界で50番目に人口の多い国になります。
しかも、インドの特徴は若年層の大きさです。中国では人口の15%弱が65歳以上で、この比率は年々増加しています。言い換えれば、人口の高齢化が急速に進んでいるわけです。長年、「一人っ子政策」を続けてきた影響もあり、子どもの数は抑制されてきたのが中国。一方のインドは女性が平均して6人の子どもを出産してきました。
やはり人口の多さは経済力にも影響します。インド国立銀行の予測によれば、GDPですでにイギリスを抜いたインドですが、ドイツや日本も間もなく追い抜き、29年にはアメリカ、中国に次いで世界第3位の経済大国に躍り出るとのこと。今後10年以内に、インドのGDPは現在の3.4兆ドルから8.5兆ドルに急増すると見られています。ちなみに、今年の経済成長率は7%と予測されています。
そうしたインドの未来に期待し、アップルを筆頭に欧米の企業は、この人口超大国への投資と工場進出の動きを加速中です。
よく知られていますが、インドは「ゼロの発見」に象徴されるように数学教育に秀でています。そのため、IT人材の宝庫ともいわれるほどで、日本を含め欧米各国ではインド人のITエンジニアの活躍が目白押しです。もちろん、インドにはかつてのカースト制度の名残もあり、社会階層間の対立もあります。しかし、経済的な豊かさが広がれば、そうした「負の遺産」も早晩克服されるに違いありません。
日本ではほとんど知られていませんが、インド人の大富豪の数は中国に引けを取らないほど急増しています。自然再生エネルギー会社である「アダニ・エンタープライズ」は過去5年間で資産価値を50倍に拡大しました。30年までに世界最大の自然再生エネルギー企業になることが確実視されています。同社の創業社長であるアダニ氏はモディ首相と同郷で、モディ首相の選挙活動を全面的に支援してきた人物です。港湾、道路、鉄道などインフラ整備ビジネスで財をなしたアダニ氏ですが、モディ首相の経済政策にも深く関与しています。現在、モディ首相はアメリカともロシアとも距離を置く、いわゆる「第3国外交」を強力に推し進めており、「グローバル・サウス」の代表を目指しているに違いありません。日本にとっても連携を深める相手としての重要性は増す一方です。
最近のインドの技術的躍進を象徴しているのが、月面探査機の打ち上げといえます。「チャンドラヤーン3号」と命名されたロケットは順調に飛行を続けており、8月23日には月面着陸が予定されています。しかも、地球から見て裏側にあたる月の南極付近へのソフトランディングを目指しているのです。南極付近は水の存在も有望視されているため、インドとしては将来の月面基地を想定し、着々と布石を打っている模様です。これまで月面到着を成し遂げたのはアメリカ、ロシア、中国ですから、インドは4番目となります。
もちろん、インドが目を向けているのは月に限りません。モディ首相はインド国内のインフラ整備にも並々ならぬ意欲を見せています。記憶に新しいはずですが、インドでは293人の乗客が死亡し、1,000人以上が負傷するというインド史上最悪の列車の衝突事故が起こったばかりです。世界最大の人口を擁するインドですから、日々の列車利用者の数も半端ありません。インド国有鉄道は1日平均1,300万人の乗客を運んでいます。駅の数も7,300を超えていますが、モディ首相は、そのうち、1,300の駅を改築するという計画を発表しました。30億ドルの予算を投入し、エスカレーターの設置、待合所の完備、公共スペースと商業施設の併設など、今後2年以内に完了させるとのこと。それと同時に、30年を目標に、1,200の駅に自然エネルギーによる発電設備を完備するともいいます。こうした鉄道の改良工事と自然再生エネルギーへの転換によって新たに110万人の雇用も生み出すというのがモディ首相です。宇宙と地上に「Made in India」を拡大しようとの構想に他なりません。
こういう今こそ、日本はインドとの連携を進めるチャンスです。
次号「第353回」もどうぞお楽しみに!
著者:浜田和幸
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