【福岡IR特別連載123】寝首を掻かれてもまだ気付かない長崎県行政
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HIS澤田氏がハウステンボスを中華系企業に転売して1周年
長﨑IRが先日、“ハウステンボスへのIR誘致に反対する市民団体、長崎県に要望書を提出“として久しぶりに各マスコミに報じられた。これは、大石賢吾知事以下、長崎県行政がいまだに愚かでお粗末な発言をしていることに対して、反対する市民団体「ストップ・カジノ!長崎県民ネットワーク」が、”本件IRは、国への申請後に、その区域整備計画の変更を行うことは手続き上許されていない“として、即刻政府への申請を取り下げるべきという要望書を提出したのだ。長崎県行政はいまだ、出来もしないことに執着し、責任転嫁をしているが、現実を認めて自己反省すべきという、しごく当然の主張をしている。
筆者は昨年の早い段階から、とくにハウステンボス(HTB)の中華系企業への転売(JR九州らHTBの株主も全株式を中華系企業PAGに売却)以降、長崎IRの計画は杜撰な「絵に描いた餅」であり、元から不可能であると繰り返し論じてきた。長崎IRの計画はHTBの転売時点で事実上すでに崩壊していたのである。
「【福岡IR特別連載119】大阪IR、岸田政権、予想通りの政府承認」
岸田政権は次の選挙などへの影響や地方都市行政および議会などへの配慮から、IR問題についての回答を曖昧にしているが、長崎IRの実現困難はすでに答えが出ているも同然だ。岸田政権は混乱に終止符を打つため、早々に大阪を除く新たな2カ所の申請受付と併せて、はっきりと説明、告知をすべきである。
このHTB売却は昨年9月施行の「重要土地利用規制法」直前の“滑り込み土地転売"であった。PAGは中国習近平政権に極めて近いとされ、国際ビジネスに関する能力と経験は長崎県行政やその関係者とは比較にならない。
「【福岡IR特別連載104】長崎IR、日米経済安全保障と重要土地利用規制法」
寝首を掻かれた、長崎IRの管轄行政とその関係者達
日米韓の首脳が先週末、米国キャンプデービッドで会合および共同記者会見を行った。米国は近年、中国、ロシア、北朝鮮との安全保障上の問題を念頭において、自由主義諸国の同盟関係の強化が図っている。平和・安全保障をめぐって世界が大きく2つの勢力に分かれた状態であることが懸念される。
「重要土地利用規制法」の施行も遅ればせながらこの安保上の文脈に位置づけられる施策で、事実上は、取りも直さず"中国習近平政権"の中華系企業や個人を対象とした「経済安全保障問題」の重要な一環だ。HTBに隣接する佐世保には米軍基地および自衛隊基地が置かれており、同市は我が国古来の戦略的な西の防衛の要であり、インテリジェンスの面でも地勢学上重要な場所である。そこに中華系企業が所有する施設が政府からIRとして承認を得ることはあり得ないだろう。
長崎IRを推進していた関係者はHTBが中華系企業に転売されることを誰一人予想していなかった。良識ある政治家らは以前からその愚かさを批判してきた。自民党の片山さつき氏や国民民主党の玉木雄一郎氏らが強く憂い、YouTubeで積極的に訴えている。それから約1年が経過し、長崎県行政とその関係者らもさすがに理解していないはずがない。
大石知事、県、佐世保市行政の関係者、さらには公に応援してきた九州経済連合会会長・倉富純男氏(前西日本鉄道社長)やJR九州の石原進・元会長などは、その後何らコメントをしておらず、どうやら反省することなくいまなお長崎IRをバックアップしているようだ。
この国の地方の各組織の人の大半は、平和ボケで国際感覚はほとんど持ち合わせておらず、無責任で本当にお粗末だ。本来なら、寝首を掻かれて怒り心頭に発するはずだが、その愚かさに気づかず未だマスコミの取材に応じることすらできない体たらくというのが、長崎IRの現状である。
長崎IRは、関係者を手のひらで転がし、HTBをPAGに超高値で転売したHIS澤田氏の「1人勝ち」で終わった。もっとも、ビジネスにおいては寝首を掻かれた方が完全な能力不足であり、澤田氏を批判するのはお門違いだ。
インターネットゲーミング(カジノやスポーツベッティングなど)市場が世界で急速に拡大している。ネットでは公営ギャンブルと隔てる垣根などはなく、近未来では世界中のどこでもプレイが可能になるだろう。IR開発は近い将来のインターネット・プラットフォームの構築において大変重要だ。IRはまた、管轄自治体にとって巨大な税収源となり、雇用を含め計り知れない経済効果をもたらす。IR開発誘致が“ギャンブル依存症の拡大"につながるというのは時代遅れの認識だ。
大阪市を中心とした関西大都市圏におけるMGMとオリックスの共同体による「大阪IR」を筆頭に、昨年、正式に記者会見を行った福岡市を中心とした北部九州大都市圏における米国Bally's等による「福岡IR」、そして、いずれ表に出て来る東京都を中心とした首都圏の「東京IR」のみ、この3つのIR構想しか絶対に採算は合わない。筆者は当初から繰り返しこの3カ所で確定すると断言している次第である。
【青木 義彦】
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