【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(番外編)】 「子ども病院跡地活用事業」にただよう暗雲(前)
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福岡大学の学長選挙の投票日が迫っている。同大学を巡っては、朔啓二郎現学長による業績の粉飾疑惑や教職員に対するハラスメント、「私物化」ともいうべき独断専行的な大学運営など、数々の問題が明るみになっている。そのことは学内外の関係者を不安に陥れており、そのため今回の学長選挙の行方には広く関心が集まっている。選挙戦は、朔現学長と某学部長による一騎打ちの様相を呈しているとのこと。福岡大学は西日本最大級の規模を誇る地域を代表する私立総合大学であり、誰が学長に就任するかで今後の地域社会は少なからず影響を受ける。そこで、朔学長の問題を告発し続けてきた(株)データ・マックスとNetIB-NEWSは、より学長の地位にふさわしい人物が選出されることを期待しつつ、「【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(番外篇)】「子ども病院跡地活用事業」にただよう暗雲(前・後)」(※)を掲載する。
※2023年6月7日付 「【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(番外編)】「子ども病院跡地活用事業」で病院棟の設計見直し&再入札?!」を加筆したもの
論文数「2,283本」がいまはなんと「439件」
福岡大の4年に1度の学長選が迫ってきた。2期目を狙う朔啓二郎学長は、ラストスパートというわけか、目下「票を獲得するためのパフォーマンスの派手さがますます増している」(福岡大関係者)とのことである。
一方、学内教職員の反応はといえば、「福岡大初の生え抜き学長を!」のスローガンで多くの関係者の熱い視線と期待を集めた前回とは異なり、今回は激しい怒りと嫌悪の声がさかんに聞こえてくる。学長としても医者としても、この人物をもはや、長い歴史と西日本最大級の規模を誇る「福岡大学の“顔”にしてはおくわけにはいかない」(福岡大関係者)と。
その理由は、関係者個人の立場や想いに応じてさまざまだが、みなが口をそろえて憤るのは、やはり研究業績水増し提示問題である。研究者の常識では考えられない、約40年のキャリアで2,000本超もの論文・著作数を大学HPで誇示しつつ、その内実は、同一の論文を重複掲載する、1つの著作・論考をバラし複数の業績のように提示する(「サラミ論文」)、他人の著作物を自分の研究業績として掲載する、はたまた学内での挨拶文や弟子と交わした数行のメール、学会旅行先でのグルメ記のようなものまで放り込んでいたという、くだんのイカサマ業績リストについてだ。
これを当取材班メンバーが本連載第1シーズンで、次いで講談社「現代ビジネス」で報道したのち、地元テレビに取り上げられるにおよび、学内で釈明を求める声が挙がった。朔執行部は「問題ない」「重複掲載はHPの仕様でそうなっていただけ」「メディアのいうことなど相手にする必要もない」などと言いつつ、批判を封じ込めようとしてきたことが知られる。
ならば、朔学長の研究業績リストは昨年と大きく変わっていてはならないはずだが、今春オシャレにリニューアルされた「研究者情報」サイトを訪問してみて驚いた。朔学長の研究業績(論文)数は、本連載開始当初は「2,283本」だったものが、いまはなんと「439件」!しかも、昨年までは大量に掲げていた日本語論文・著作がすべて取り去られ、英語論文ばかりを掲げているという不可解さ。
繰り返す。論文数は、年を追うごとに増えることはあっても減ることはあり得ない。既報の通り、我々の報道が始まってから朔学長は、何の釈明もなく自らの業績リストをコソコソ減らしてきたが、「問題ない」と教職員に断言してなお、またもや黙って1,800本も減らすとは…。アカデミアの矜持とか大学トップとしての誠実さとか、そういったものを求める気も消え失せた。朔氏のふるまいはもはや、ブラックジョークだ。
朔執行部が不透明なプロセスで強行し、まんまと落札してしまった「子ども病院跡地活用事業」にしても、関係者の話をよくよく聞けば、福岡大は、朔学長の見栄と無知につけ込まれるかたちで、百戦錬磨の積水ハウスにカモられた気配がある。学長選を目前に控えたいま、朔氏が今後も福岡大を率いるにふさわしい人物か否か、学内関係者がしっかり見極められるよう、「子ども病院跡地活用事業」をめぐる現時点での情報と問題をまとめておこう。
アクセス抜群の好立地
2014年に東区香椎照葉に移転するまで、福岡市中央区唐人町に置かれていた「福岡市立こども病院」。その跡地は、天神や博多へのアクセス抜群の、福岡市営地下鉄・唐人町駅から海側に徒歩5分ほどの場所にある。近隣にはショッピングモール「MARK IS 福岡ももち」があり、背後にそびえるプロ野球・福岡ソフトバンクホークスの本拠地「福岡 PayPayドーム」の威容も快い。市民の憩いの場である大濠公園や西公園も徒歩圏内。さらには、県立修猷館高校や西南学院大学などがある文教地区・西新へもさほど遠くない。
そんな一等地にあって、しかも約1.7haというまとまった敷地規模を有しながら、同跡地は10年もの間、空き地になったまま野ざらしの状態であった。というのも、市は移転の6年前となる08年12月に新病院(現在のこども病院)基本構想を策定し、その整備費用に充てるため同地を売却する方向で検討していたのだが、裁判で移転の是非を問われたために、跡地の活用の在り方にも非常に慎重な態度で臨んできたからである。
移転から10年以上が経過した21年になって、跡地活用に関心と意欲を有する法人(グループ)を対象とするサウンディング型市場調査を実施するなど、跡地活用に向けた具体的なプロセスがようやく動き始めた。22年5月には「こども病院跡地活用事業提案評価委員会」が設置される。こうして事業者を公募するはこびとなったのである。
事業者に求められたのは、周辺地域はもちろん、市全体がその恩恵を享受できるような魅力ある跡地活用を行うこと。積水ハウス(株)、大和ハウス工業(株)、三井不動産レジデンシャル(株)をそれぞれ代表とする3つのグループが、これに応じて名乗りを上げた。数々の良質なまちづくりを手がけてきた最大手のハウスメーカーや不動産会社の面々が、こぞってこの跡地を熱望したわけだ。福岡市内でも近年、高付加価値マンションの開発適地は乏しくなりつつあることもあり、彼らにとって垂涎の的であったことは想像に難くない。
そして23年1月、「WELL BEING GARDEN CITY(ウェルビーイング・ガーデンシティ)~過ごすだけで心も身体も健康になる持続可能なまちづくり~」を提案した積水ハウス・福岡大学グループが、優先交渉権者に選定されたのだった。本連載もこれまで、福岡大・朔学長が積水と組んでこども病院跡地を狙っている様子を報じてきたが、それが現実のものとなったわけである。
圧勝の美酒に水をさす不穏な噂
積水・福大グループの提案内容は、病院棟(内科総合病院)、健康プラザ、分譲マンション、防災備蓄倉庫も備えたコミュニティハウス、地域の交流スペース・イベントの場となる3つのガーデンからなる都市再開発事業である。27年春以降に順次開業予定とされている。うち、病院棟は5階建てで延床面積約8,300m2、117床規模のものになるとのこと。健康プラザは同約2,000m2で、1階に小児科クリニック、調剤薬局、カフェ、2~3階には健診センターが入居する計画だ。一方、分譲マンションは23階建(178戸)と9階建て(44戸)の2棟が建設されるといい、「ZEH-M Oriented」「ZEH-M Ready」という省エネ性能に優れた仕様の建物になるという。
積水・福大グループは応募の際、土地の購入価格として最高額となる122億円を提示し、みごと優先交渉権を射止めた。なお、他2グループの提示金額はそれぞれ90億7,700万円と60億5,000万円であった。提案評価委員会による評価も、公表された資料によれば、積水・福大グループは総合評価点824.30(満点は1000点)。次点の607.07を大きく引き離していた。
評価は大きく「全体計画」「導入機能および空間計画」「維持管理・運営計画」の3つに分かれ、そのなかでさらに9つの中項目、全体で15の小項目に分かれているのだが、驚くべきは、これらのあらゆる項目で、同グループはほかを上回る高評価を獲得していたことである。まさに「パーフェクトゲーム(完全試合)」というべき圧勝劇。次点よりも30億円、3位とは倍の購入価格を提示したのだから、圧勝するのは当然といえば当然かもしれないが、それにしても見事な勝ちっぷりである。
これだけ見れば、積水・福大グループの計画は熟慮に熟慮を重ね、練りに練られた、さぞかし「洗練されかつ完成度の高い」ものに違いないと思う人もいるだろう。プロジェクトにかける思い入れの強さ、真剣さがあるからこそ、これほどの高額も惜しまないのだろうと。ところが最近になって、そんなイメージを粉々にするような、穏やかならぬ噂が囁かれるようになっている。すなわち、福大が担当する病院棟建設に関し、建築計画の見直しおよび再コンペが行われるかもしれないというのだ。
(つづく)
【特別取材班】
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