溢れるチャレンジ精神と地域貢献への想い 逆境でも積極経営を貫き、売上記録を更新
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(株)プレジデントハカタ
博多のまちに根ざして約30年
九州および県内各地への交通のアクセスの良さから、ビジネス客、観光客を問わず多くの来訪者が滞在先に選ぶ福岡市博多。「プレジデントホテル博多」(197室、以下、プレジデント)はその博多駅前1丁目に位置し、来年30周年を迎える。同ホテルの名前は「明日のプレジデントに最高の休息を──」という想いが由来であり、この実現のためにおもてなしの信念を持ち続けてきた。2015年に同ホテル1階に「和創作呑処 緩音(かのん)」を開設(20年5月に改装)し、九州の食材にこだわった食事により、主に30代~50代のビジネスマンに寛ぎを提供している。
別コンセプトのホテルとして、14年3月、博多駅の筑紫口側に「ホテル ラ フォレスタ」(96室、以下、フォレスタ)をオープンした。森を意味する名称の通り、都会のなかのオアシスをテーマとしたデザインで落ち着いた癒しの空間を演出し、20~30代の女性から人気を博している。
運営企業は(株)プレジデントハカタ。その前身の(有)友杉商事は1968年に誕生し、博多駅前で「友杉賃貸ビル」を経営していたが、老朽化にともない建替えが必要となった。山笠やどんたくを積極的に支援していた博多っ子の創業者が、博多のにぎわいづくりに貢献したいとの想いから、当時博多エリアでまだ多くなかったホテルの建設を決断した。3代目となる現代表取締役社長・友杉隆志氏はまさにその地で生まれ、山笠などとともに育った。友杉氏は今年新たに福岡市ホテル旅館組合を設立、組合長に就任し、同業者をまとめ行政への窓口となるべく奔走している。「人のため、町のために奉仕する」が、友杉家で代々受け継がれてきた精神である。
コロナを奇貨として挑戦を続ける
プレジデント、フォレスタが高い稼働率を誇るなど好調が続いていたところ、20年に新型コロナウイルスの感染拡大という事態に襲われる。5月には1カ月の休館も余儀なくされた。利用者が激減し先が見通せないなか、友杉社長はフォレスタに入っていたテナントの契約が21年1月までの定期借家契約であることに注目し、直営に切り替えることを決意。もともとアメリカの雰囲気のカジュアルバーを開きたいという想いがあり、その夢を実現すべく21年3月にピットブルブラザーズというバーをオープンした。当初は、1次会はプレジデントの緩音で、その前の0次会や2次会でのニーズを想定し、営業時間を午後12時までとしていたが、長引くコロナ禍で午後7時までの時短営業を強いられた。ランチの中核となる商品として店の雰囲気にあったハンバーガー(商品名:ピットブルバーガー)を開発。宅配やテイクアウトの需要が増えていた時期とも重なり、予想以上のヒットとなった。
友杉社長が当時思ったことは、経営者である自身が落ち込んでいてはいけないということ。自身を奮い立たせようと新しいことに取り組んでいると、「社長がなんだか楽しそうにやっている」という雰囲気が社員にも伝わり、社員が自分たちもと前向きになってくれたと当時を振り返る。
21年5月にはアネックス(14室)をオープンさせた。このホテルはもともとプレジデントの2軒隣の別のホテルで、コロナによるインバウンド客の減少で苦境に陥っており、買収の打診を受けたことがきっかけだ。借り受けることに決め、プレジデントの別館とした。アネックスの客室は約30m2と広めのワンルームで、バス・トイレ別の設計で3~4人の滞在に適した部屋であった。プレジデント本館の主な客層は1~2名での利用であり、差異化しやすかったのも幸いした。
同じく21年からプレジデントの全面的な改装を実施した。1994年の開業からまもなく30年を迎えるということで、当初は2022年の実施を予定していたが、コロナ禍で稼働率が大幅に下がり、空き室が出たことを逆手に取り、前倒しで実施した。21年秋から22年の夏にかけて、3億円を投じた。アネックスもそれに合わせてベッド、ベッド周りの設備や照明器具などの入れ替えを行った。
友杉社長の挑戦はもともと有していた施設にとどまらない。22年9月にホテルエトスイン博多およびホテルエリアワン博多(いずれも博多区堅粕)の運営受託に踏み切った。それぞれ改装を実施し、旧エリアワンは4月からホテルサードプレイス博多アネックス(53室)として、旧エトスインは5月からホテルサードプレイス博多(126室)としてリオープンさせた。サードプレイスというのは、宿泊客にとって「家庭(第1の居場所)でも職場(第2の居場所)でもない心地の良い第3の居場所」になるようにとの想いを込めて名付けられた。2期工事としてロビーの改装を8月から予定している。なお、同社で両ホテルの従業員を引き続き雇用している。
3月は過去最高の売上を記録、挑戦は続く
プレジデントは改装により本館の客室の正規料金を約3,000円引き上げることができた。コロナ禍で波はあったものの、22年10月の全国旅行支援実施以降、宿泊客が大幅に回復し、23年3月は単月で過去最高の売上を記録した。コロナ禍で借入金の増加と赤字経営に直面したが、経費の徹底的な見直しと削減により経営はスリム化している。
友杉社長はコロナ以前を振り返り、「当時は稼働率が平均で98%あり、追われているような日々だった」と語る。コロナは一度立ち止まって物事を考えるよい機会となったという。
2施設の運営受託により客室は計486室に増えた。すべてが博多エリアに集積しているが、今後は災害時のリスクなどに備えるため、博多以外の地域や県外での受託運営も視野に入れていくという。コロナ禍で体力をすり減らしたホテルのなかには経営が厳しくなり、運営を委託しようという動きが増えていくと睨んでのことだ。
友杉社長の頭のなかには、やってみたいことが多くあるという。同社は現在、シティホテル寄りのビジネスホテル(主に30代後半~40代の宿泊客向け)、ビジネスホテル(20代~30代中心)、インバウンド(訪日外国人、学生中心)の3タイプのホテルを運営しているが、チャレンジ精神とこれまでに経験した蓄積を基に、さらなる新たな挑戦を見せてくれるだろう。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:友杉 隆志
所在地:福岡市博多区博多駅前1-14-7
設 立:1968年7月
資本金:2,400万円
TEL:092-411-6659
URL:https://president-hotel.jp
<プロフィール>
友杉 隆志(ともすぎ・たかし)
1971年1月生まれ。福岡市出身。福岡大学附属大濠高等学校、福岡大学法学部卒。2000年、(有)友杉商事に入社、常務就任。04年、(株)プレジデントハカタに社名変更。06年、代表取締役社長に就任。23年、福岡市ホテル旅館組合を設立、組合長に就任。趣味は魚釣り、キャンプ、映画鑑賞。法人名
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