2024年11月03日( 日 )

【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(番外編)】朔学長!!学長選挙の立候補辞退のススメ

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 朔学長、いよいよ9月17日は福岡大学学長選挙の投票日ですね。当社が総力をあげて選挙分析をしたところ、あなたが優位に立っているようです。対立候補の4人のなかには「俺が学長になってやる」と自信満々の御仁がいてまとまりません。現職のあなたに勝てるはずがないのは明白です。まずは2期目当選おめでとうございます。
 ところで当選されたら万々歳というわけにはいきません。下記に「私立学校法の改正」の説明を掲載しています。貴方がこの改正法に沿って運営していくとは考えられません。当社においてもトコトン勉強します。学者人生、最後の最後になって後悔されないことを願ってやみません。

【青木 義彦】

令和7年4月1日に施行される私立学校法の改正について

 私立学校法の一部を改正する法律案が令和5年4月26日に参議院で可決され、同年5月8日に公布されました。この改正の概要についてお話ししようと思います。

【1】改正の目的

 今回の改正の目的は、私立学校における業務を執行する理事・理事長と、監視監督を行う監事・評議員会の役割を明確化し、両者を分離することで、両者の相互牽制が行えるようにすることと考えられます。

 もっとも、この点文科省は「建設的な協働と相互けん制」と述べていることから、いたずらに学校内で対立関係をつくるという意図はなく、あくまで不正防止に必要な範囲での相互牽制ということでしょう。

 従来の私立学校は、役員の選任等の人事権について、理事長が強力な権限を有しており、監事の選任についても理事長が行うなど、必ずしも学校運営の執行と監視監督が十分に分離独立して機能しているとはいえない状態でした。

 理事長が強力な権限をもちうる現行法は、理事長の強力なリーダーシップを発揮するには適したシステムといえますが、今回はリーダーシップよりも、監事・評議会による監視監督を強化することで、学内における理事長・理事会と監事・評議員会の相互牽制を期待し、これにより学内の不正を防止することを重視した改正といえます。

 法律というものは、全国民に公平に適用されるものですから、特定の学校の問題や不祥事の再発防止は目的とはしていませんが、近年起きた規模の大きい学校での不祥事を意識して、同様の不祥事の再発防止を考えての改正とも思われます。

 以下、重要と思われる変更点を見ていきます。

【2】役員の選任は役員選任機関が選任する

⑴ 理事・理事長の選任方法の変更
 これまで理事と理事長の選任は、寄附行為という会社でいうところの定款に当たる規定に基づいて選任されていました。

 これが改正法では、理事選任機関という新たな組織を置いて、ここが選任することになりました(私立学校法30条1項)。しかも、選任時には評議員会の意見を聞くことも法律で定められています(同法30条2項)。そして、理事長は理事で構成する理事会で選任することになりました(同法37条1項)。

 これは、これまで各学校の寄附行為に任せていた理事・理事長の選任について、複数の意見を聞き、反映できる選任システムとするように変更されたといえますし、後に述べる兼職の禁止と近親者の就任制限と併せて考えると、役員を理事長の身内だけで多数派となるように構成することが難しくなるようにしたものといえます。

⑵ 監事の選任
 監事は、学校法人の業務財産状況等を監査し、理事の不正行為の差し止めも行う役職ですが、これまでは評議員会の同意を得て理事長が選任していました。

 これが改正法では、評議員会の決議で選任されるようになり(同法45条)、理事長は監事の選任に関わらなくなりました。監事の業務は、理事長も含めた理事の活動の監査を含む以上、選任に理事長が関わらない方が適切との判断があるのでしょう。

 後に述べるように、評議員は理事との兼職が禁止されているため、監事の選任に業務を執行する理事・理事長が関われないようにしたものといえます。

【3】役員兼職の禁止と役員の特別利害関係人(配偶者または三親等内の親族)が役員に入る場合の人数制限など

⑴ 理事について
 理事は監事、評議員との兼職が禁止されます(同法31条3項)。そのうえで、理事の配偶者または三親等内の親族は、理事としては1人まで、評議員としても1人までしか就任できず、監事については就任してはならないと定められています(同法31条6項)。さらに、他の理事の誰かと特別利害関係がある理事は、理事の総数の3分の1までという制限もあります(同法31条7項)。

 これは、理事を理事長や特定派閥の身内だけで構成させないという強い制限を課したものといえるでしょう。

⑵ 監事について
 監事は理事、評議員、学校の職員だけでなく、子法人がある場合にはその役員や職員とも兼職が禁止されます(同法46条2項)。さらに、他の監事と特別利害関係があってもいけないし、評議員についても特別利害関係人は1人までという制限もあります(同法46条3項)。なお、理事親族の監事への就任禁止は現行通り継続するようです。

 これらも監事が理事や理事長から独立した監査を行えるようにするための規制といえます。

⑶ 評議員について
 評議員は理事、監事との兼職が禁止されます(同法31条3項 46条2項)。また、評議員と特別利害関係を持つ評議員は1名までしか就任できず、さらに理事、監事、評議員のいずれかと特別利害関係を持つ評議員と、子法人の役員を務める評議員は、評議員総数の6分の1までという制限もあります(同法62条4項 62条5項3号)。

 そして、評議員の選任は寄附行為で定めることになっていますが、理事や理事会が評議員を選任する場合であっても、理事や理事会が選任した評議員は、評議員総数の2分の1までという規定もできており(同法62条5項2号)、理事が過半数の評議員を選任することは、寄附行為で定めてもできないことになりました。

 これらは評議員会を理事や監事から独立した機関とするための規定であり、この後に述べる評議員会・評議員の権能を十全に発揮させる目的があると考えられます。

【4】評議員会・評議員の権能の強化

 現行法での評議員会の位置づけは基本的に諮問機関であり、主な職務は学校法人の業務や財産状況、役員の職務執行について意見を述べ、答申を出すことです。

 これが改正法では、諮問機関であるという位置づけはそのままですが、評議員会による監視、牽制機能が大きく強化されています。

 とくに今回の改正法では、一定の場合に評議員会や評議員が理事の行為の差し止めを求めることができるという規定が新設された点が大きいと思われます。

 これは、理事が学校法人の目的外の行為や、法令、寄附行為に反する行為をし、これによって学校法人に回復不能な損害を与える恐れがあるとき、まず、評議員会は幹事に対して、理事の行為をやめさせる訴えを裁判所に提起することを求めることができるというものです(同法67条1項)。

 監事にはこのような場合には理事の行為を止めさせる訴えを提起することが認められているので(同法58条1項)、評議員会はその権限の行使を促すことができるということになります。

 さらに、評議員が評議員会に対して、理事の行為を止めさせるための訴訟を監事に求めるよう決議を求めたにもかかわらずその決議が否決されたとき、または評議員会が幹事に対して理事の行為を止めさせる訴訟を求めたのに監事がその訴訟を提起しない場合には、評議員が理事の行為を止めさせる訴訟を提起することができるようになります(同法67条2項)。

 これは、一定の場合には評議員が理事の行為を止めさせる裁判を起こすことができるという規定であり、監事が不正を見逃す場合でも、理事の不正を告発して止めさせようとする評議員が評議員会の少数派であっても、裁判によって理事の不正行為を止めさせることができるという非常に強力な規定であるといえるでしょう。

【5】まとめ

 今回の法改正は、役員の兼任禁止や特別利害関係人の就任制限によって、業務執行を行う理事・理事長と、それを監査する監事、諮問機関であるが業務の監視も行う評議員会を独立した機関として相互に牽制する組織とし、とくに諮問機関である評議員会に監視と牽制の権能を強く持たせることで、理事の不正行為を防止することを期待したものといえるでしょう。

 これは、なるべく多くの関係者からの意見を聞いての学校運営を期待する改正ともいえます。

 理事長をはじめとした業務執行役員のリーダーシップが強ければ、学校の改革などはスムーズに進むでしょうが、強すぎるリーダーシップは悪い方に働けば独断専行になってしまい、不正行為を誘発することもありえます。

 そのため、役員のリーダーシップについてある程度制限を加えてでも、適切な学校運営のために、多くの関係者の意見が反映されるシステムを採用したのだと考えられるのです。

【弁護士/小橋 弘房】

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