スタートアップの「玉石混交」を体現、テックアットの顛末(前)
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(株)テックアット(東京都新宿区、延山勇貴社長)は、8月末までに事業を停止した。
テックアットは創業当初、家具のD2Cビジネスを手がけていた。大阪府出身で福岡にそれほど縁のない延山氏が福岡に拠点を置いたのは、家具の産地・大川がきっかけだ。家具のつくり手と消費者を直接つなぐことで、「いいものをより安く」提供するため、20年6月には「オーダーロボ」というBtoB仕入プラットフォームの運営も開始していた。
その後、美容品の取り扱いに移行したのは、体験型ストア運営のb8ta inc.(米国)がきっかけだった。b8taは、ICTを活用してリアル店舗内における消費者の行動記録を分析し、メーカーにフィードバックすることで、メーカーは改良や次の商品開発に活用することができるとして注目されていた。この美容版を延山氏はcanme(当時はnewme)でやろうとしていたようだ。事業のコンセプトと延山氏の過去の実績(出前館の経営企画責任者などを歴任)から、投資家ウケはよく、出資は順調に集まっていったが、「福岡の店舗が賑わっているのを見たことがない」という声も聞かれるほど、肝心の売上は伸び悩んでいたようだ。
テックアットの出資者からは、投資家から資金調達するため、売上高を架空計上していた疑いについての情報も寄せられた。
「出資からしばらくして、延山氏から『売上をつくるために何かしらの名目で請求をあげさせてほしい。金は返却する』と連絡があった。事業コンセプトには将来性を感じていたが、メーカーから聞く評判に懸念を抱いていたこともあり、そのようなことはできないと断った。」
これに協力した者も複数名いたという。その甲斐あってか、大型の資金調達に成功。テックアットは当面の資金繰りに余裕ができた。しかし、その後も収益確保は難航が続いた。「間貸し、売上保証」を謳って資金を集め、運営を続けてきたものの、メーカーらへの支払い遅延も相次ぎ始めた。
(つづく)
【永上 隼人】
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