スタートアップの「玉石混交」を体現、テックアットの顛末(後)
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テックアットのリアル店舗・canmeに置かれた「委託販売」商品の所有権は、基本的に出品者(メーカー)にある。ECモール販売用に倉庫で保管された商品も同様だ。
海外進出支援を行うA社は約半年前、テックアットへ出資したうえで、newmeの越境EC参入で提携していた。A社の社長は、「グループ会社と合算で500万円をテックアットに出資した。海外で商品を販売するための成分分析やサイト作成、輸出を含めた物流業務などを当社が行い、テックアットが国内メーカーのとりまとめを担うものだった」と話す。提携後、A社側の準備は滞りなく進んだ。グループ会社が運営する倉庫への商品搬入、サイト作成、成分分析なども終わり、あとはテックアットのゴーサイン待ちだったという。
テックアットのゴーサインとは、A社への支払いだ。「入金さえあれば明日にでもスタートできる状態だった」(A社)といい、メーカーもテックアットに支払いを済ませたにも関わらず、テックアットはA社への支払いを渋った。今年7月になっても支払いはなく、延山氏は「7月末には支払う」と言ったものの、現在も支払われていないことはいうまでもないだろう。
なお、テックアットが今年開催した大規模イベントで、A社がインフルエンサーらを手配した費用(数百万円)の支払期日も7月末だったが、これももちろん未払いとなっている。「出資金を除いても、損害は1,000万円を軽く超える」(A社)という。そして、9月1日、テックアットの代理人弁護士から「通知書」が届く。要約すると、「破産申立を予定しており、破産開始決定がなされれば、管財人が管理保管するので、保管している商品の搬出は控えてほしい」というもの。グループ会社の倉庫に保管したままの商品は、これによりメーカーへ返却できず、動かないモノのために倉庫の床が使用され続けている状況だ。
A社の社長が延山氏と最後に交わした言葉は、「大手ECコンサル会社へ事業を売却する。支払いなどについては、その会社としてほしい」というものだった。実際に大手ECコンサル会社の役員ともコンタクトがとれたが、8月には音信不通に。別の投資家からも、同じ大手ECコンサルへの事業譲渡に関する情報提供があったことからも、その方向で話が進んでいたことは事実だろう。しかし、最終的にこの事業譲渡は破談になったようだ。
その後も資金繰りが改善することはなく、8月31日までに運営してきた店舗をすべて閉鎖。事業を停止する事態となった。● ● ●
スタートアップが盛んに持て囃され、多くの資金が投下されることも珍しくなくなった。テックアットが本社を置いていた福岡市は、よりその傾向が顕著である。しかし、スタートアップはそもそも玉石混交だ。テックアットは残念ながら「玉」ではなかったが、延山氏もまだ若い。次の事業を興すにしても、粗雑な後始末で退散するのではなく、立つ鳥跡を濁さず、潔く退場してもらいたい。
(了)
【永上 隼人】
法人名
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