耐震不足マンション訴訟、鹿島と木村設計の責任は?(2)
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工事監理者を偽装?
木村建築研究所は工事監理者ではないと言っているものの、その主張は裁判で通用するのだろうか。
「工事監理」とは、「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているか否かを確認すること」(建築士法第2条第7項)とされている。
また、建築基準法は、建物の規模に応じて建築士法に規定する建築士である工事監理者を定めなければいけないと義務付けており、その義務付けに違反した工事はできないとしている。新生マンション花畑西の場合、建築士法では1級建築士の資格が義務付けられている。建築確認申請書(副本)には、工事監理者として木村建築研究所と、1級建築士である木村忠徳代表の記載があり、添付の住宅金融公庫融資物件の設計審査誓約書には、工事監理者として木村建築研究所と木村忠徳代表の記名押印がある。
これに対し、木村代表は「監理者の依頼を受けたこともない」「監理者ではなかった」「誓約書の署名押印は偽造」と主張。鹿島も「現時点では、誰が監理を行ったか不明」と言う。それが事実ならば、工事監理者が木村代表以外の別の者だったか不在だったことになり、確認申請や工事自体の建築基準法違法が問われる。
建築確認申請や住宅金融公庫融資の設計審査に虚偽記載があったというのは、申請者らが刑法の公正証書原本不実記載や偽造公文書行使の罪に当たる可能性も生じかねないので、驚きの主張だ。だれが監理者だったのか
記者が久留米市情報公開で入手した資料のなかに、木村建築研究所が保管していた確認申請書(副本)の申請書と図面がある。
久留米市によれば、新生マンション花畑西の耐震不足が発覚してから、住民の陳情を受けた久留米市が木村代表から聴取した際に任意提出されたものだという。木村代表は、みずから設計に関与したマンションの工事監理者ではないのに、約20年間、自分が監理者として記載された建築確認申請書を所有していながら、一切異議申し立てをしてこなかったことになり、不自然だ。工事監理者の変更届出をさせるなどの措置を怠り、名義貸しを黙認していたことになる。
建築士には、建物の基本的安全性を確保するために、建築基準法などの法の実効性を失わせるような行為をしてはいけない義務がある(最高裁判決、2003年11月14日)。工事監理者が誰か不明のまま、15階建て鉄骨鉄筋コンクリート造りマンションが建築されることは常識ではあり得ない。
原告側は、「鹿島は、工事監理者が木村代表だったか否か明らかにすべきだ」と求め、「木村は、見え透いた嘘を言うな。責任逃れだ」と怒りの声をあげている。(つづく)
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