2024年11月21日( 木 )

コロナの危機感を足がかりに、積極的な事業転換で新たな冠婚葬祭業へ

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(株)ラック

コロナを契機に果敢な経営判断
ウェディング事業を新機軸へ再編

 冠婚葬祭事業を手がける(株)ラックは2023年3月期の決算で売上高が約53億円となり、創業以来の過去最高を更新した。新型コロナウイルスの流行で婚礼業界が大打撃を受けるなか、ラックは大きな事業転換で危機を乗り越えた。

(株)ラック 代表取締役社長 松井秀二 氏
(株)ラック
代表取締役社長 松井 秀二 氏

    19年12月に創業者である柴山文夫前社長が死去。20年1月に松井秀二氏が社長に就任したが、その直後、コロナの流行で2月から結婚式場の予約がすべてキャンセルとなった。松井氏は、以前から抱えていた不採算部門の整理に着手する。

 「もしコロナがなかったら新人社長がいきなりそんなことはできないでしょう。コロナがあったからこそ将来に目を向けた経営目標をスムーズに設定することができたように思います」と松井氏は振り返る。

 従来からの不採算部門だけでなく、主要事業であるウェディング事業の再編にも踏み切る。ウェディング事業の主力で最大15億円程度を売り上げていた結婚式場「リッツファイブ」の営業を22年6月に終了した。そしてリッツファイブのプランナーを中心とした「ウェディングプロデュース事業」を立ち上げた。結婚式場の紹介や、貸衣装、ウェディングフォト、結婚式のプロデュースサービスも行う。大分地区では、大分のウェディングを元気にするということで、ショッピング施設パークプレイスのなかに、結婚式場紹介カウンター「スイッチ」を同年12月にオープンさせた。式場紹介は自社式場を2割程度、残り8割は他社式場の紹介にあてる。それによって他社との連携を強化し、相互送客への効果を見込む。

 松井氏は事業再編を次のように語る。「リッツファイブには思い入れがありましたから、終了して本当に正しかったのかどうかいまだに考えることがあります。しかし、私たちが目指すべきは、あとから振り返って、これで正しかったのだと思えるように、新しく切り開く経営姿勢が大事だと思っています」。

コロナ後の主力は葬祭事業
周辺事業の展開で収益力強化へ

INORIA大野城
INORIA大野城

 福岡と大分を拠点として、それぞれ西日本典礼と大分典礼を展開する葬祭事業は、23年3月期、売上高約43億円であった。年間施行件数はついに5,000件を超えた。ますます増える需要に対応するために、今後も葬儀場の建替えや新設を進めていく予定だ。22年12月には「INORIA宗方ホール」をオープン。「INORIA(イノリア)」は小規模斎場である。

 コロナ禍以降、葬儀の小規模化が進行しており、葬儀の単価は平均で1件あたり100万円を切っている。だが、葬儀が小規模化している一方で、施行件数は今後も確実に増える。そこで葬祭の周辺事業として不動産事業や遺品整理サービスを立ち上げ、件数の増加を新たな事業チャンスにしていく。とくに不動産事業は、家族が東京などの遠方に在住で、亡くなった本人の住居が空き家になるケースが少なくない。そのときに、空き家処理を手伝うサービスは、家族の負担の大きな軽減にもなり、今後、需要が増えるものと見込んでいる。

第三の事業、「福祉事業」「飲食事業」
将来の多業種シナジーをにらむ

レッツ倶楽部中島
レッツ倶楽部中島

    新たに福祉事業に乗り出し、21年8月にFCで自立支援型デイサービス施設、「レッツ倶楽部野方」をオープンした。要介護認定を受けた高齢者をサポートするデイサービスを提供する施設で、日常生活に必要なトレーニングを提供する。続いて22年1月、大分市に「レッツ倶楽部中島」、同4月、早良区に「レッツ倶楽部高取」、同10月に「レッツ倶楽部野間大池」、23年6月に「レッツ倶楽部荒江」をオープンした。事業全体としては24年3月期から黒字化する見込みだ。介護事業は今後、同社の柱になる可能性がある事業だが、現時点で大規模な投資による自社施設の建設等は考えていないという。国の介護政策の転換などを見極めながら、できるだけ小さい投資規模で事業ノウハウと、同社の主力事業である葬祭業とのシナジーの可能性を探っていく。

レッツ倶楽部高取 スタッフ
レッツ倶楽部高取 スタッフ

 また、飲食事業としては、22年5月に「井手ちゃんぽん」FC店を熊本県1号店として熊本市南区に出店。同じく「井手ちゃんぽん」の姉妹店である「井手カツ丼」FC店を、7月にオープンする「ゆめタウン飯塚」のフードコートに出店する。飲食事業も運営ノウハウを培いながら、将来的には、日本の食を武器にした海外事業の展開を考えている。

人材力がラックのサービスの根幹
新しい世代が新しいラックを創っていく

 松井氏は同社における人材の重要さについて次のように語る。
 「当社の仕事は、『人に尽くすことが好き』という気持ちがなければ、本当のサービスにはなりません。新しい世代の社員には、顧客に対する奉仕の気持ちを基礎に、経営へのボトムアップを実践してほしいと思っています。そのために、これからのラックをつくっていくのは自分たちであるという自覚の元で、理念をつくってもらいました。理念の中核には『一流のおせっかいで、あなたの“とき”を感動で満たす』というものがあります。この理念を忘れずに、新しいラックを創っていってほしいです」。

 そして、次のように続けて語る。
 「経営も彼らのモチベーションを高めるために応援します。5月に全社員平均で5%のベースアップを行いました。そのような経済的な面も含めて、社員にとっても良い会社であり、それがひいてはお客さまにも評価していただける会社になると信じています」。


<COMPANY INFORMATION> 
代 表:松井 秀二
所在地:福岡市博多区東比恵3-14-25
設 立:1967年12月
資本金:6,575万円
TEL:092-473-0101
URL:https://j-lac.com

<RECRUIT> 
募集職種:エンディングプランナー、ライフプランナー、ブライダルスタッフ、ドレスコーディネーター、フラワーコーディネーター、介護職
応募資格:2024年卒業見込の方
採用実績:2022年度/8人
     2023年度/7人
問合せ先:r-nakao@j-lac.com
採用担当:総務課 中尾


<プロフィール> 
松井秀二
(まつい・しゅうじ)
1956年11月、福岡市博多区出身。日本経済大学経営学科卒業後、(株)西日本互助センター(現・(株)ラック)に入社。冠婚事業部RITZ5課長やRITZ5支配人、冠婚事業部部長などを経て、2007年冠婚事業部執行役員、09年取締役、12年常務取締役に就任。20年1月代表取締役社長に就任。

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