2024年12月21日( 土 )

【福岡IR特別連載125】長崎IRの崩壊「根っ子はすべて同じ」 岸田政権に思う(中)

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長崎県および佐世保市行政の人材能力不足

 これには管轄行政の長崎県と佐世保市の諸々の失敗があっての結末であり、それは人材の能力不足が招いたものである。政府の選択は止むを得ないものであった。

 長崎県行政、佐世保市行政、財界関係者、ほぼすべての人たちが何も気づかないうちに22年9月、ハウステンボスの所有者であったHISの澤田氏によって手のひらで転がされた結果なのだ。ハウステンボスの中華系企業PAGへの転売は、コロナ禍での本業の急激な売上減による深刻な経営難に際し、澤田氏という企業経営者が危機を回避する為、水面下で巨額な取引を行い、「1人勝ち」しただけの話なのである。

 これらすべては筆者が事前に想像していた通りであるが、今回の「長崎IRの崩壊」は、一方で各関係者たちの誰にとってもすべてが「結果良し」で完了したと言ってよい。

 なぜなら、「承認しなかった政府が悪い。自分たちの責任ではない」という関係者一同が何よりも望んでいた「自己保身の目録」がその通りになったからだ。ただ、これらは「運良く」たまたまの結果にすぎない。

 これでハウステンボスの再生とHISの自己再建、IRの政府承認否決と三方すべて、収まるところに収まったといえる。この結果に、関係者の皆さんは胸を撫で下ろしたのではないか。澤田氏の危機回避能力の高さと国際ビジネス経験に心から感謝すべきだろう。

 大石長崎県知事の「政府に不満」「再申請も視野」という発言をマスコミは報じているが、これはただのパーフォマンス、ポーズにすぎず、そんなことをするはずはない。当人と関係者はこの結果を「心から喜んでいる」と思われる。

福岡IRの雇用効果は3.4~5万人

 福岡IRの施設の建設は約5万人の新たな雇用を生み、施設稼働後は約3万4,000人の安定雇用を生むと見込まれる。米国Bally'sは22年3月の記者会見において、1人あたりの年収は約378万円、間接労務費は約473万円が最低の基準となると発表している(当時の為替レート1$114円で計算。現在のレートで換算すれば1.27倍となる)。全国の地方公務員の平均年収(総務省令和3年度調査)は約630万円、民間企業の平均年収は約443万円(いずれも平均年齢は42~43歳)と、IRの年収を大きく上回っている。

 税金で食べている公務員が民間企業の社員よりはるかに高い給料を貰っているのが、この国の特質すべき現状であり、年収300万円以下の人たちは全就業者の20%程度はいるといわれる。このように不公平で大変な「格差社会」が存在している。低所得者は毎日の生活が大変で辛酸を舐めて生活している。正規、非正規問わず民間の賃金アップが難しいなか中、IRによる雇用効果は重要なインパクトをおよぼし得るのだ。

 これだけ、民間と行政の所得格差を速やかに埋められる巨大な開発事業(投資額は4,800億円以上)はほかに類をみない。また福岡市財政の将来的な不安解消にも大きく寄与する(福岡市の税収は年間約340億円増を見込む)し、西日本および九州地域の所得の向上をもたらすなどその経済効果は計り知れない。実に壮大で魅力的なプロジェクトなのである(福岡IRのYou Tubeを参照)。

 この「格差是正が実行可能」な管轄行政と政治家は何を躊躇するのか!米国企業はこの我々の郷土福岡都市圏においてIRの実現を目指して巨額の投資を行うことをすでに発表し、日本側に推奨しているにもかかわらずだ。

 それゆえ、福岡IRの誘致開発促進は、福岡市行政および市議会の今後の責務であり、義務でもあるといえる。これまで事前の準備作業をしてきた人たちの苦労を理解、感謝し、実現に向けて最大限の努力をすべきである。

 我々郷土福岡の民間企業の若き経営者たちが多大な費用と時間をかけて計画を準備してきた。24年からは、管轄行政を主管する高島市長が積極的に率先垂範となる行動をとることを強く期待する。

 これまでは長崎IRが先に手を挙げていたとの理由で、福岡経済界などへの遠慮があったと思われるが、その環境はすでに大きく変わった。福岡IR誘致は官民一丸となって積極的に進めるべき事業だ!

「ギャンブル依存症」を理由の無知で偽善の反対派

 この画像のレターを見てもらいたい。宛先はBally'sを誘致し記者会見を事実上主催した福岡IR誘致促進委員会の地元責任者および以前から福岡都市圏へのIR誘致を積極的に促進してきた福岡青年会議所宛に23年12月9日に「まちこわし大賞」の表彰状として送られてきたものだ。テイストの悪い冗談ではないか。これに反論する気もないが、少しだけ、現在の国際環境等の状況を解説しておこう。彼らがこれを読んで素直に理解するとは思えないが・・・。

 コロナ禍とインターネット科学技術の急速な進歩で、我が国における公営ギャンブル──競馬、競輪、オートレースなど──のネット投票は毎年倍々の売上増を示すなど、過去の環境とは一変している。現場でも女性や若年層の来場者が増えるなど、大変な人気傾向である。身近なスマホ利用によりゲーミング人気に拍車がかかり、市場が巨大かつ広範囲になっているのだ。このようにネットと現場の垣根などは一切存在しなくなっている。

 これらの影響により「ギャンブル依存症患者」が増えるとの懸念があるようだ。しかし、Bally'sは米国のプロのカジノ企業であり、こうした問題をよく理解しており、かつ対応する能力を備えているので、任せることが肝要だろう。福岡市・県および国はそれに必要な助成などを行えばよい。

(つづく)

【青木 義彦】

(125・前)
(125・後)

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