2024年12月23日( 月 )

ラグビーW杯2023の行方~日本代表、分水嶺となるイングランド戦 (中)

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チリ戦以上のハードワークを

ラグビー イメージ    日本代表の第2戦目の相手はイングランドである(日本時間9月18日午前4時キックオフ)。

 イングランドとの一戦について、プールD内では、「チリの次に勝利できる確率が高い」とする予想があるが、まったくの見当違いである。W杯に出場する代表チームは、どこも強く難敵である。北半球で唯一W杯優勝を経験しているのがイングランド。日本で開催された前回の2019年大会ではファイナリストである(南アフリカに敗れ、準優勝)。現時点(9月11日付)におけるワールドラグビーの世界ランキングは6位。日本はこのイングランドと過去10回対戦し、すべて黒星。厳しい戦いであることは明らかである。その後に控える、アルゼンチンそしてサモアという強豪との戦いは、非常にタフになる。2大会連続で決勝トーナメントに進出するには、18日のイングランド戦が分水嶺になる。「アルゼンチンは初戦のイングランド戦でポイント0である。日本は5ポイント得たので断然優勢」と述べる関係者もいるが、そのような点数勘定など無意味だ。

 イングランドは、豊かな体躯を生かしたフィジカルなラグビーを構築する。正面から身体をコンタクトさせながらボールを支配。スクラムとラインアウトのセットプレイも強固だ。さらに、強烈なタックルによるボールの再獲得にも長けている。ボールを支配し続けて、長短ともに多彩なキックを繰り出し、陣地も支配しながらゲームマネジメントをするそのスタイルは、1世紀間不変と言われている。

 初戦のアルゼンチンとの戦いで、イングランドSOジョージ・フォードは、27得点すべてを叩き出した。

 イングランドは11分、FLトム・カリーが危険なタックルでレッドカード。14人での戦いを強いられた。それでもSOフォードの正確無比なキックが、この逆境を跳ね返す。ペナルティゴール6本、ドロップ3本の、合計9本のキックをゴールポストに突き刺したのだ。特筆すべきは、ドロップゴール3本のうちの2本をハーフウェイ付近から決めたとおり、
50〜60mの距離はフォードにとって射程圏内であること。つまり、自陣ではもちろんのこと、相手陣の10m内でもペナルティを与えてはならないのだ。さらに、ブレイクダウンを優勢にコントロールされると、易々、フォードのドロップゴールの餌食になる。華やかなアクションはほとんどないが、アタック、ディフェンスとも堅実かつ強靭なスタイルで相手を圧倒し、ゲームを支配する難敵だ。では、日本代表はどのように戦うべきか。

(1)ブレイクダウンを減らすこと
(2)ペナルティーを減らすこと
(3)テリトリーを70%以上支配すること

 この3点に尽きるのではないか。

 チリ戦のブレイクダウンは69回で、成功率は94.2%。安定した数値であったものの、イングランドとの戦いでは、ブレイクダウンでのバトルは苦戦が予想される。なぜなら、どこよりも大きく強い体躯をフルに活かしたアクションでのバトルで、ボールを支配・奪還する戦法をとるからだ。日本代表はイングランド代表と比べて、体格的には劣勢である。ここで真っ向勝負して勝てる確率はゼロに近い。のみならず、フィジカルおよびフィットネスの消耗を徒らに増大させてしまう。

 ディフェンスの時間が増えると予想されるイングランド戦では、日本の強みである堅い守りを続けねばならない。そして、少ないチャンスのなかで、より高い精度のパスを操りながら、素早いラインアタックを仕掛けていくことだ。イングランドディフェンスに捕まったら、餌食にならぬよう1、2秒以内にブレイクダウンでのボールリサイクルを行い、粘り強く高速アタックを仕掛けていく。あとは、自陣はもちろんのこと、相手陣10m付近でのゲーム時間を極力減らすことである。そのためには、テリトリー獲得を最優先させたキックでゲームマネジメントする。より速いプレッシャーによるチームディフェンスを80分間実行すること。つまり、チリ戦以上のハードワークが要求される(とくにディフェンス)。これらを継続し、成功率を高めていけば、日本代表史上初のイングランド戦勝利も見えてくる。

 開幕戦での「史上初」(オールブラックスの予選プール黒星)に続き、9月18日が日本の、そしてW杯の歴史に残る1日になるよう、2015年、日本が南アフリカに勝利し「ブライトンの歓喜」として全世界を驚愕させたあの日の再来となるよう、心より武運を祈る。

(つづく)

【青木 義彦】

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