ラグビーW杯2023の行方~日本代表、分水嶺となるイングランド戦 (後)
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オールブラックスがチャンピオンか
今後のラグビーW杯の行方は、正直、予想が難しい。最近のラグビー界は勢力地図が激しく動き、まさに群雄割拠の様相を呈するW杯である。
そんななか、チャンピオンに最も近いとされるのがフランス。地元開催で、圧倒的ホームアドバンテージを有する。W杯前の2023年のテストマッチ(6カ国対抗=シックス・ネイションズ含む)の戦績は7勝2敗と、好調を維持している。そして、冒頭でも記した通り、初戦はオールブラックスに勝利した。今後は、イタリア、ナミビア、ウルグアイとの対戦が控えるが、順当にいけばプールA1位で決勝トーナメントへ進出するだろう。
ただし、イタリアも好調だ。2023年シックス・ネイションズでは5戦全敗したものの、イングランド・スコットランド・ウェールズ・アイルランドそしてフランスに対して善戦。そして、W杯直前のテストマッチ2戦(ルーマニア、日本)は完勝している。スキルフルなパス&ランを縦横無尽に展開しながらの果敢なアタック。そして規律高い堅守のディフェンスでゲームマネジメントを行う。侮れない対戦相手である。
チャンピオン候補は、フランス以下、ニュージーランド、南アフリカ、アイルランド。それに続くのは、イングランド、オーストラリア、アルゼンチンだ。日本は10〜12番手と目されている。ブックメーカーなど、周囲の予想はいかに?
筆者は、オールブラックスがファイナルに進出しチャンピオンになると予想する。繰り返す通り、日本での前回2019年のW杯は、優勝候補最有力とされながら3位で終了。今大会は、「チャンピオンの再奪還」がミッションとされる。ワールドラグビーの世界ランキングでは、1位がアイルランド。以下、南アフリカ、フランス、そしてオールブラックス。オールブラックスは常に世界ランキング1位でないと、ニュージーランド国民から厳しい批判を浴びせられる。彼らにとって、ラグビーは国の威信そのものである。よって、敗北は許されない。
フランス戦後、LOサム・ホワイトロックは「チャンスを自らつかまないと。キャッチパスであれ、ラックの掃除であれ、自分たちのシンプルなスキルを発揮できなかった重要な場面がいくつかあった。そこで適応し、成長し、より良くならなければならない」とコメント。SHアローン・スミスは、「試合には多くの注目と緊張があった。敵地でのビッグゲームだった。でも、私たちは自由にプレーできた。ただ、いくつかの実行力が足りなかった。
対応策を練る上で、言葉は不可欠だろう。しかし、オールブラックスが栄光を手に入れるには、行動こそが最も重要である。口だけでなく、歩くことも必要なのだ」と振り返りながら、次戦以降を見据えるメッセージを発した。圧倒的に「強い!」と言わしめた以前のオールブラックスと比べ、戦い方にやや物足りなさを感じたのはたしかである。前述したW杯直前の南アフリカ戦での大敗など、「オールブラックス危うし」との論調が日増しに強くなってきた。そしてフランスとの初戦。戦前から「オールブラックス不利」との予想が大半のなかでの戦いは、体躯を当てるバトルで競り負けた。ブレイクダウン成功率は93.8%とフランスと互角であったものの、勝負どころでフランスの後塵を拝するかたちとなった。一方で、「さすがオールブラックス」という世界標準のアクションも見られたこともたしかだ。
2分、名手FBボーデン・バレットの精妙なクロスキックが、WTBマーク・テレアのトライを演出。43分、No8アーディー・サヴェアのスペースへのチップキック、CTBリエコ・イオアネからの高速なロングパスにより、テレアが2トライ目を決める。52分には、右コーナーへ飛び込んだフランスWTBダミアン・ペノーを、SOリッチー・モウンガの獅子奮迅のカバータックルで止め、トライを阻止。
おそらく、プールA2位で決勝トーナメントに進むだろう。歴史的敗北を喫したフランスにリベンジするには、ファイナルに進出するしかない。今後も強敵との戦いが続く。それでもオールブラックスは、どこよりも経験値が高く、個人の心技体そしてゲームモデルの創造力は今なお世界トップを走る。例を挙げると、前述したリッチー・モウンガの、優れた危機管理能力による得点阻止力。そして、フィールドプレイヤー全員の世界屈指のパス&ランスキルにもとづく、強靭で美しいメイクライン構築による独自性の高いアタックの創造と実践。予選プールでの戦いのなかで、メンバーは1人ひとり、丹念に1つずつアクションを修正しながら、オールブラックスの戦い方をつくり上げていく。今できるアクションを100%発揮しながら、ピークを定めていく。
秋も深まる10月28日(日本時間10月29日)にエリスカップを掲げているのは、オールブラックスか?もしくは他国か?はたまた日本か?!寝不足の日々が続く。
(了)
【青木 義彦】
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