2024年12月26日( 木 )

【由布市問題(2)】老舗温泉旅館玉の湯と由布市行政による住民いじめ(2)

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 全国に知られる温泉地・由布院。同地を代表する老舗高級旅館「玉の湯」と由布市役所が、地元住民の意向を無視して、長年、住民所有とされてきた水路に排水を流すための工事計画を進めている。住民側は、近年多発する豪雨で床下浸水することもあるなどと懸念し、市民団体を結成し反対活動を進めている。話し合いを行っているが、玉の湯と行政の態度は改まらず工事中止の仮処分も検討している。

事の発端と住民の嘆願書

 前回の「老舗温泉旅館玉の湯と由布市行政による住民いじめ(1)」で取り上げた由布院の老舗旅館である(株)玉の湯が進める「(仮称)玉の湯サービスアパートメント」の建設に際して、当初はサービスアパートメントからの排水は問題となっていなかった。

 事の発端は、2022年6月に玉の湯社長の桑野和泉氏が、サービスアパートメント建設予定地周辺の住民宅に建設趣旨への理解を求めて、社員を伴って訪問したところから始まっている。

 同年11月1日に地鎮祭が行われ、地鎮祭の催行にあたって近隣住民の一部が呼ばれている。その後、近隣住民は、建物が立つことで住民が利用している市道が狭くなることを知り、通行の安全性が懸念されることから、住宅側にある水路にフタをするなどの処置を求めて、2人の由布市議会議員通じて、市に対し嘆願書を提出しようとした。

 ところが、この嘆願書が、2人の市議のうち地元選出の市議に渡されたまま、市に提出されていなかったことが今年3月に入り発覚した。

 この間に、由布市役所の湯布院庁舎にある地域整備課建設係が、水路の確認のため現地を訪れている。水路は、幅は30センチほどで、住民宅やアパートメントサービス南側にある大分川に注いでいる。

水路所有者に対する市見解の翻転

 大分川は、大分県中部を流れる大分川水系の本流で、一級河川である。大分川源流(九重連山の東側に位置する由布岳の南西麓)から由布市挾間町の天神橋までは、大分県庁の大分河川事務所が管轄する県の管理区域となっている。天神橋から先は、国土交通省九州地方整備局の大分河川国道事務所の国直轄となっている。アパートメントのエリアは、大分県の管轄である。

 この数年頻発している豪雨において、大分川は支流を含めて増水による災害が発生している。アパートメントサービス周辺の近隣住民は、過去に、床下浸水を伴う水害の経験があり、由布市のハザードマップにも50センチから3メートルの浸水想定区域とされており、アパートメントサービスの排水を放流することを住民は危惧している。

 そもそも、水路の所有者は、水路に面する住民であることを市側も認めていた。昨年、住民が、水路上に置くだけで簡単に溝を覆うことができるグレーチングの設置を市に要望した際に、由布市は「水路は住民個人の所有なので、市は対応できない」と回答していたのだ。ところが、今年7月に入って由布市はその説明を突然翻し、「地域整備課の職員の説明は間違いである」と回答してきたのである。

 しかし、住民は、水路箇所の固定資産税も支払っており、公図でも水路の記載は確認できない。また、当該水路は本来、その周辺住民が利用することを前提とし、宿泊施設の大量の排水を想定していない。今年7月には、由布市内を流れる大分川水系支流の花合野川で作業中だった男性作業員2人が大雨で増水した川に流され死亡する事件もあり、住民の不安は大きい。

 排水問題ばかりでなく、アパートメントの工事で発生する騒音や振動、粉塵について住民側から苦情が出されていたにもかかわらず、玉の湯と施工業者は真摯に対応せず、由布市役所も指導などをしていない。

 本件について、何ら誠実に対応しない由布市役所や玉の湯に対して、周辺住民は個人では対応できないと考え、理解を示す市議などの協力を得て、23年5月、「湯の坪の水路を守る会」を結成した。ここで本格的に住民運動が開始されたが、由布市が水路の所有を住民ではなく市にあると、突然見解を翻したのは、住民の動きに危機感を覚えたからに他ならない。

 次回は、一貫して住民側に立って本件に取り組んでいる由布市議会議員・髙田龍也氏のインタビュー内容を取り上げたい。

(つづく)

【特別取材班】

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