労働時間と休憩時間
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働き方改革関連法案の一環として「時間外労働の上限規制」が法制化され、適用猶予されていた建設事業、自動車運転の業務、医師などについても、来年2024年4月1日から適用されること(2024年問題)を、本誌『まちづくり』でも何度か取り上げています。そのため、労働時間の管理がこれまで以上に重要になっていますが、始業時刻と終業時刻を管理していれば十分というわけではありません。始業時刻から終業時刻までの拘束時間から休憩時間を差し引いた「実労働時間」が重要ですので、休憩時間を特定できなければ、正確な実労働時間の管理ができません。
労働基準法で、労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を労働時間の途中に与えなければならないとされています。また、使用者は休憩時間を自由に利用させなければならないとされており、使用者の指揮命令下に置かれている時間は労働時間であるとされていますが、「労働からの解放が保障されているか否か」で判断しています。
ビル管理人が仮眠時間中でも警報などがあったときには、何らかの対応が必要な場合などは、何事もなければ眠っていることができるとしても、労働からの解放が保障された休憩時間とはいえません。また、飲食店で客がいないときに店員がテレビを見ながら客を待っている時間や、トラック運転手が集荷地点に到着しても、長時間の荷待ち時間が発生し、スマートフォンでゲームをしているような時間については、外観上は休憩時間に当たるようにも思えますが、客が来れば直ちに接客等の作業に従事しないといけなかったり、車列の進行に合わせてトラックを前進させないといけないなど、労働からの解放が保障されていない「手待時間」は休憩とはいえません。
なお、貨物運送事業において、貨物トラックの発着時間の関係で生じる「手あき時間」については、その時間を労働者が自由に利用できるのであれば休憩時間に該当するという通達もあります。もっとも、実態によって判断は異なります。すでに荷物を預かっており、その場を離れられないとか、荷物の到着次第直ちに作業に従事しないといけない状態であるなど、労働からの解放が保障されていない場合は休憩時間に該当しません。
休憩時間については、原則として賃金が発生しませんが、「手待時間」などのように実質的に労働時間にあたるならば、賃金が発生することになりますので、注意が必要です。
使用者としては、繁忙期等のために、休憩時間中に、労働者に何らかの対応をしてもらわざるを得なくなった場合、その分の休憩時間をずらして取得してもらえれば問題ありませんし、労働時間の途中に取得していれば、分割して休憩を取得させることも可能ですので、適切な管理が必要です。
<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所
所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/
<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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