2024年07月27日( 土 )

【読者プレゼント】新刊『生きた言語とは何か』大嶋仁著

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 NetIB-NEWSで「知っておきたい哲学の常識」などの連載記事がある福岡大学名誉教授・大嶋仁氏が新刊を上梓した。NetIB編集部は5名の方に、こちらの新刊『生きた言語とは何か 《思考停止への警鐘》』をプレゼントする。応募方法は下記を参照されたい。著者による新刊の紹介文も合わせて掲載する。

『生きた言語とは何か 《思考停止への警鐘》』
著者の言葉

生きた言語とは何か 《思考停止への警鐘》    本書でいう「生きた言語」は私たちの感覚に密着し、私たちの生身から生まれ出た言語という意味です。私たちは幼かったとき、おそらくそうした言語を用いていました。

 しかし幼時ばかりでなく大人になっても、私たちはそうした言語を使い続けています。たとえば、「あいつは根っこが腐っとる」というとき、私は植物の根、樹木の根が地中で腐っているイメージを思い浮かべているのです。このイメージ言語は感覚と直結しており、それがこの表現を「生きた」ものにしています。

 一方、「2+2=4」はどうでしょう。これを身体感覚と結びつけることは容易ではありません。具体例として、「みかんが2個、もう2個あると全部で4個となる」を考えても、それは「2+2=4」という初めから身体感覚を超絶した「死んだ言語」の一例に過ぎないのです。

 数式というものはたしかに「死んだ言語」です。であればこそ、抽象性と普遍性をもつのです。普遍性をもつとは、宇宙のどこにでもこれに当てはまるものが見つかるという意味です。これはまことに凄いことですが、身体をもち、感覚をもち、感情を持つ私たちは、仮にある目的でこれを使用することはしても、そこに入っていくことはできません。

 数式は死んだ言語であるけれども、これもまた言語です。それが私たちの知能を発達させ、科学を構築してきたことは事実です。現代は科学の時代ですから、この抽象的かつ普遍的な言語が私たちを支配していることになります。

 このような言語を徹底して活用するのが人工知能、すなわちAIです。その急速な進歩に応じて、私たちのそれへの依存度もどんどん増えています。これを使うと複雑な計算が一瞬に出来、しかもその答えが正確無比となれば、誰でも使用したくなって当然です。

 生成AIといって、私たちの要求に応じて新たな計算式を組み立て、常に私たちの要求を満たそうとする人工知能もあります。これまた急速に進歩しつつあります。では、これらの最新知能は、私たちの従来の知能に代わるものとなるでしょうか。

 答えは否です。この知能は前にも言ったように数式を基礎にしており、その言語は数学的ですが、私たちの知能は日常言語に依拠しており、その言語は数学的言語よりはるかに不規則かつ多様性に富んだものだからです。数学的言語でこれをカバーすることは、とうてい無理なのです。いずれそのギャップも埋まる、というのは楽観的過ぎると思います。

 人工知能は煩雑な計算を省いてくれるので便利至極です。将棋のプロはそのことを知っているので、みなAIを使って腕を磨いています。将棋というものが、100%でないにせよ、数式化できる世界だからです。しかし、身体も、感覚も、感情ももたないAI言語は、私たちの「生きた言語」に対応できません。それゆえ、日常言語の翻訳には向かないのです。

 たとえば、先に私が使った表現、「あいつは根っこが腐っとる」を人工知能に翻訳させたらどうなるでしょう。AIの言語にはこういう日常言語表現には歯が立たないのです。しかも、私たちの日常会話は文脈に著しく依存しており、それもAI翻訳を難しくしています。AIは文脈を読み取ることが極めて下手なのです。AI翻訳は、文脈に依拠する度合いの少ない領域でのみ活躍できるのです。

 私たちの知能がAIと付き合い過ぎることで、私たちの言語がAIの言語のようになってしまう危険性はあります。そのようなとき、私たちの言語は死に、私たちの思考は停止してしまうでしょう。私が本書の読者に考えてもらいたいのはその点です。この問題に興味のある方には、ぜひとも読んでいただきたいと思います。

【大嶋 仁】


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 『生きた言語とは何か 《思考停止への警鐘》』

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お申込み専用アドレス:hensyu@data-max.co.jp
FAXの場合はこちら:092-262-3389
           (読者プレゼント係宛)

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