2024年12月22日( 日 )

【BIS論壇No.421】一帯一路10周年記念シンポジム

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 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は10月14日の記事を紹介する。

 10月13日、「一帯一路」10周年国際シンポジウムが都内のホテルで開催され、参加した。 中国、カンボジア、スリランカ、パキスタン、タイなどからも駐日大使、一帯一路研究関係者などが参加。日本からは福田康夫・元総理大臣、二階俊博・日中友好議員連盟会長、経団連副会長・佐藤康博氏などが参加した。5時間近くの会議で熱気あふれる討論が行われた。主要討論は(1)シンクタンクの観点から『一帯一路』の国際貢献、未来の展望、第3国市場に於ける日中協力、(2)アジア太平洋対話、中パ経済回廊、『一帯一路』融資課題、「インフラによる相互接続」、(3)メディアフォーラムでは「一帯一路実体験」についてメディアからみた「一帯一路」などが討論され、有益であった。

 討論終了後、関連団体による協力覚書調印式も行われ、日本からは筆者も関与している「一帯一路日本研究センター」代表の進藤栄一・筑波大学名誉教授、国際アジア共同体学会会長が調印式に日本を代表し参加された。今後、中国、日本、ASEANを中心に一帯一路研究協力がさらに促進されることを期待したい。

 「一帯一路」は 、そのうちの「シルクロード経済ベルト」の提唱から10年を経て、世界の7割近くの132カ国が参加した。第三国市場協力や、道路、鉄道、港湾などインフラ建設にも実績を上げている。ラオスやインドネシアでは高速鉄道が完成。スリランカ、ギリシャ、カンボジアなどでは港湾建設で実績を挙げている。中国と欧州を結ぶ「中欧班列」では25カ国、215駅を結び、中國・欧州の物流革命が起こっている。

 一帯一路では物流のみでなく、とくに発展途上国と教育、環境、文化、メディア協力にも注力している。 パキスタンでは経済回廊、発電所建設、ラオスでは鉄道建設など実績を挙げている。2028年にはタイまでの鉄道網も完成予定であるという。スリランカのハンバントタ港は、欧米で「債務の罠」論で批判されているが、港の建設費債務はスリランカの対外債務の10%に満たず、金利も低利に抑えてあると、当時このプロジェクトに関与されていた呉江浩・中国駐日大使が強調されていた。呉大使は、一帯一路は軍事面での提携ではなく、多国間国際貿易投資の拡大、共同発展を目指すものであり、「人類運命共同体」の構築を目指すものであるという。Derisking、Decoupling、分断を目指すものではない。逆に対話、団結、協力、Win-Win の関係を目指す未来志向の構想であると力説しておられたのが印象的だった。

 この意味で、日中に於いても第3国市場で相互協力し、日中協力をさらに進めたいとの強い意向が示された。10月17、18日には北京で第3回一帯一路首脳会議が10周年を記念して開催され、習近平主席が主催される。この会議には世界から130カ国の首脳、30の国際機関代表も参加する。

 一帯一路10周年を迎え、日本はメディアを含め、一帯一路に批判的論調を見直し、一衣帯水、隋、唐時代からの日中友好関係を未来志向のものへとさらに拡大強化し、21世紀のシルクロード建設に尽力することが強く求められている。それが30年以上にわたり衰退している日本経済の再建、再構築にとっても喫緊の命題であることを官民ともに強く認識すべきであろう。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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