韓国経済ウォッチ~ナノテクノロジーの夢(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
最近、さまざまな分野で、「ナノ」という言葉をよく耳にするようになっている。「ナノ」というのは長さの単位で、1ナノメートルは1メートルの10億分の1の長さを指している。すなわち、その極微の世界を対象にするのが「ナノテクノロジー」である。ナノとは長さのことであるから、いろいろな分野が対象になるのは、容易に想像ができる。たとえば、原子や分子、DNAの大きさはナノレベルであり、そのようなものが対象となって研究開発が活発に行われている。ナノテクノロジーは、原子や分子などを自由に制御することで、親素材を開発したり、微細のデバイスを開発したりするもので、非常に応用範囲が広く、半導体素子などのIT分野、医療、化粧品などのバイオテクノロジー、環境分野などに使われている。いわば、未来技術の広大な基盤となるのが、ナノテクノロジーである。
このナノテクノロジーの研究開発は、15年ほど前からいろいろな分野で行われていた。半導体の分野では、超LSIの回路の線幅はナノレベルになっているし、さらに微細化するための努力が続けられている。医療分野では、細胞の研究、遺伝子診断に用いるDNAチップの開発などにナノテクノロジーが有効に利用されている。また化粧品の開発などでも、吸収力を高めるために、ナノテクノロジーがすでに応用されている。
このようにナノテクノロジーは、広大な範囲で製造、開発などの基盤になるので、国家の産業競争力を底上げするのに、とても大事なテクノロジーである。アメリカでは2001年にクリントン大統領がナノテクノロジーを国家的戦略目標として掲げ、国を挙げて研究開発を推進してきた。アメリカ政府はナノテクノロジーの素晴らしい可能性を具体的に国民に示して、アメリカに産業革新をもたらそうとしていたのだ。製造においては基盤をなくしたと言われて久しいアメリカだが、ナノテクノロジーで製造の復権を目指している。
アメリカのこのような動きに刺激を受けて、日本もナノテクノロジーへの国家的な戦略樹立が実施されるようになった。ナノテクノロジーは21世紀に大きく発展する分野であると、誰でも考えている。しかし、ナノテクノロジーはこのように期待される一方で、環境や人体への影響などを懸念する声もあるのは事実である。たとえば、吸収率の良くなった化粧品は、将来、人体にどのような影響をおよぼすのか誰にもわからない。
今回は、各国が競うように研究開発に力を入れているナノテクノロジーについて、韓国ではどのように対応しているのかを触れてみたい。
韓国の未来創造科学省と産業通商資源省、環境省は、「ナノテクノロジー産業化戦略」を発表している。この戦略は、すでに国家科学技術審議会の運営委員会の議決を経て、確定されたものである。この戦略の内容としては、次世代テレビの新製品に、ナノ素材技術である量子点(Quantum Dot)技術を導入する予定であることと、「モノのインターネット(IoT)」が普及されることによって、ナノテクノロジーがますます必要になってくるため、 市場の変化にうまく対応すると同時に新しい成長エンジンを見つけ出すために、政府はナノテクノロジーの開発に力を入れていくことを謳っている。
韓国政府は、まず7つの産業化技術を優先的に開発することによって、100社のナノテクノロジー企業を育成するとともに、インフラを充実させるという目標を掲げて、政府予算を1,772億ウォン割り当てることにしている。
その結果、2020年までにナノテクノロジーにおいて世界2位の水準を確保するとともに、世界ナノ市場シェアの20%を確保するという構想である。世界ナノ市場の規模は13年に1兆ドルだったが、20年には3兆ドルに成長すると予測されている。この市場でシェア20%を占めるということは、言い換えれば、6,000億ドルの売上を達成できる巨大産業を育てるという意味にもなる。政府はこの目標を実現するために、3次元ナノ素子、IoT環境センサー、食品安全センサー、機能性ナノ繊維、白金を代替する触媒用のナノ素材、稀有元素を代替する産業用素材、省エネー水処理システムなど、産業化が目前に迫っている7つの技術を確保する予定である。
(つづく)
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