鉄道インフラの老朽化と今後の課題(中)
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運輸評論家 堀内 重人
九州のローカル鉄道で、老朽化した線路などの社会インフラの維持管理が課題になっている。九州の鉄道は、1889年に開業しているから、130年以上の歴史があり、日田彦山線や平成筑豊鉄道などでは、明治時代に掘削されたトンネルも見られるなど、老朽化が進行しつつあるといえる。この問題は、九州だけではなく、日本全体に共通の問題でもある。
そんな中、10月1日からは、地域公共交通活性化再生法が改正され、「鉄道事業再構築協議会」の創設が可能となり、国も従来以上に鉄道事業の存続・活性化に関わるようになった。再構築協議会を開催して、鉄道事業の活性化を目指すようになった場合は、従来よりも手厚い補助が実施されるようになるなど、改善が見られる。
本稿では老朽化が進むインフラを更新させるための財源確保策についても、言及することにしたい。鉄道事業再構築事業の概要と再構築協議会
鉄道事業の継続が困難か、困難となる恐れのある旅客鉄道事業を対象としており、地方自治体と鉄道事業者が共同で、鉄道事業再構築事業計画を作成し、地方自治体が支援することで、鉄道事業者の経営改善を目指すとしている。例を挙げれば「公有民営」の上下分離経営が該当する。これを実施すれば、インフラは「公」が維持管理費を負担するようになるため、トンネルや橋梁の設備更新が進むだけでなく、鉄道事業者は運行に専念できるようになる。
「公有民営」の上下分離経営を実施しただけでは、利用者は増えない。利用者を増やすには、サービス改善が必要であり、鉄道事業者がインフラの維持管理に要した費用を、サービス改善に回さなければならない。
利用者が激減した路線・区間がある一方、廃線を懸念する沿線自治体とJRの溝が埋まらず、協議に入れないケースが多い。そこで国が再構築協議会の設置を可能とする改正地域公共交通活性化再生法が、23年10月1日に施行された。
国土交通省は、1日当たりの輸送密度が1,000人未満の路線や区間を優先して、再構築協議会の対象とする方針であり、鉄道事業者か自治体の要請に基づいて設置する。再構築協議会を開いているときに、1日当たりの輸送密度が1,000人を超えても、再構築会議が解散にはならない。3年を原則に協議し、投資して施設やサービスを高度化させたうえで鉄道として存続させるか、バスなどに転換するかを決める。この場合も、3年を経過しても議論が平行線になる場合もあるが、かつての国鉄再建法のように、鉄道事業者が一方的に鉄道を廃止することはできないし、3年を超えても協議することも可能である。いずれの場合も、設備投資が必要となるが、その費用を国が支援する。
再構築協議会の第一番になるのが、芸備線の備後庄原~備後神代(新見)の68.5kmになった。同区間は、JR西日本が発足した1987年度当時の輸送密度は570人だったが、沿線の過疎化や少子化の進展、高速道路の整備もあり、JR西日本の減量化ダイヤの繰り返しや、徐行区間の増加などによる「負のスパイラル」も加わり、2019年度の輸送密度は48名と、会社発足時の1/10以下にまで減少した。その結果、かつて「日本一の赤字ローカル線」と言われた美幸線並みの輸送密度となり、全国でも有数の低輸送密度区間となった。
利用促進策を話し合うため、広島県・岡山県の両県と庄原市と新見氏の両市に、JR西日本が21年8月に検討会議を設けた。
だがJR西日本は、22年5月に存廃を含めた議論に、決着を付けることを要請した。JR西日本が拙速に結果を求める対応に、沿線自治体は廃線を警戒して検討会議を拒否した。その後は、広島県・岡山県の両県が、23年2月にヒアリングの場を設け、意見交換は続けていた。
地域住民との連携と新たな収入源の確保
かつての鉄道事業も含めた交通事業は、独立採算で運営されていたが、自家用車などの他の輸送手段の発達もあり、黒字路線の利益で、不採算路線の損失を内部補助することはもはや難しくなり、行政が欠損補助を行って、不採算路線を維持する必要が生じるようになった。
だが昨今、各自治体も財政難で頭を抱えており、かつ不採算路線などは、過疎化や少子化の進展などもあり、利用者数の減少に歯止めもかかっていない。そこへトンネルや橋梁などの社会インフラの老朽化の問題も、深刻化している。
内部補助に依存したユニバーサルサービスの提供も困難であるが、行政が欠損補助を行うことも困難になりつつあるため、今後のローカル線などの在り方が問題となる。
それに対し、筆者は以下の4つの施策を考えている。
(1)「52席の至福」(西武鉄道)のような観光列車を導入して、ローカル線の増収を目指す
(2)サポーターの出資を募り、欠損補助の資金を得る
(3)ローカル線・ローカル鉄道に対する評価基準を変える
(4)JR九州などが行う不動産事業など、鉄道事業以外の事業を強化して、鉄道事業の損失を内部補助する原資を生み出すこれらの具体的な内容を次回解説する。
(つづく)
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