【企業研究】コロナ禍からの回復進むも課題は山積~福岡国際空港
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九州・福岡の空の玄関口である福岡空港を運営する福岡国際空港(株)は、コロナ禍による旅客大幅減の影響による苦境から立ち直りつつある。一方で、滑走路増設を含む施設開発コストなどが重荷になり、債務超過からの脱却にはまだ時間がかかりそうだ。
前途洋々の出発だったが
福岡空港民営化にあたり、2018年5月に福岡エアポートホールディングス(株)を代表とする「福岡エアポートHDグループ」(九州電力(株)、西日本鉄道(株)、チャンギエアポートインターナショナル(シンガポール)、三菱商事(株))が、利便性の向上や設備投資の総額などで他を上回り契約を勝ち取った。その契約内容で注目すべきは、不動産所有権を国が保有したまま運営権を支払う方式をとり、福岡エアポート側が運営権対価総額4,460億円について30年間、毎年140億円超を国に支払うというものだ。
福岡国際空港(株)は福岡エアポートHDグループの出資により18年7月に設立。同年11月に以前からターミナルビル運営を行っていた福岡空港ビルディング(株)を子会社化し、19年2月に同社を吸収合併した。なお、23年3月末時点の持株比率は福岡エアポートホールディングスが49.57%、NNR・MC空港運営(株)(西鉄グループ)が39.13%、福岡県が10%、九州電力が1.30%となっている。
福岡国際空港の設立初年度の19年3月期連結決算は8カ月決算だったことや、ターミナルビル運営のみだったことで売上高は55億5,000万円、44億100万円の最終赤字となった。それでも旅客数は国内線、国際線とも過去最高となり全体で2,484万人を確保。とくに、国際線が大幅増となり早期黒字化への機運が高まるなど、前途洋々ともいえる滑り出しだった。
コロナ禍で債務超過に
しかし、新型コロナウイルス感染拡大で状況は激変した。最もコロナ禍の影響が大きかった21年3月期の旅客数は全体で約650万人。うち国際線は需要がほぼ消滅し1万人にまで落ち込んだ。これを受け、子会社の(株)福岡デューティーフリーを清算するなど収益改善を図り、さらに運営権対価の支払いの猶予を受けるが、最終赤字は219億円を計上し、36億3,800万円の債務超過となった。22年3月期は前期比21.1%増の売上高177億円となったが、最終赤字171億円、債務超過は197億円に拡大した。
そして、コロナ禍による行動制限が縮小、解除された23年3月期は、国内線利用客が1,570万人にまで回復。国際線利用客は昨年10月以降増加し、総計225万人(19年期比23%減)となった。その結果、売上高は312億1,000万円となり、営業赤字は19億200万円。最終赤字は91億6,300万円にまで赤字幅は縮小したが、債務超過額は拡大している。
借入金は、国際線ターミナルビル増改築工事や、国内線側での商業施設・ホテル・オフィスなど複合施設の開発などにともなうもので、26年3月期までの竣工を目指している。なお、中国や東南アジアなどからの新規路線就航の実現など、国際線の需要喚起に務めており、24年3月期については旅客数2,078万人(国内線1,606万人、国際線471万人)、売上高430億円、営業利益9億円を計画している。
当期利益に関しては79億円の赤字となる見通しとしていた。ただ、10月29日に韓国のLCC・イースター航空が福岡-仁川(インチョン)線の就航を3年半ぶりに再開するなど、国際線を含む便数や旅客数が回復している。中国便の回復が遅れているという状況もあるが、業績、なかでも収益性の改善は予想を上回るペースで進むことも考えられる。
発着機能はパンク状態
福岡空港の機能はすでに限界を迎えている。滑走路は2,800mの1本しかなく、週末の夜などに天候の影響がある場合は複数の機体が着陸待ちになり、最悪の場合、出発地へUターンするなどのケースがあるからだ。それを象徴するのが9月4日夜、乗客125人を乗せたフィリピンLCCのセブパシフィック航空が、着陸門限の午後10時までに着陸できず、結果的にマニラへ引き返したというもの。こうした事象は今年だけでも複数回発生している。
国は総事業費約1,643億円(ほかに民間事業費200億円)をかけ、既存滑走路の西側(国際ターミナル側)に2,500mの滑走路を25年をメドに開設する計画。完成すれば、定時発着回数は現行の年16万4,000回から18万8,000回になり過密状態を緩和できるとされる。ただ、福岡空港は市街地に近いという地理的条件もあり、今後も国際線を含め発着回数が増加することが予想されるため、新滑走路が完成したとしても早晩、パンク状態になるだろう。
いずれにせよ、48年の目標値である旅客数3,500万人(国内線1,900万人、国際線1,600万人)に対応するには心許ない状況だ。24時間発着が可能な北九州空港の機能強化(現状では入国手続きができない)と連携の強化を含め、抜本的かつ総合的な対策が求められる。
【田中 直輝】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:永竿哲哉ほか1名
所在地:福岡市博多区大字下臼井782-1
設 立:2018年7月
資本金:178億5,000万円
業 種:空港運営
売上高:(23/3連結)312億1,000万円法人名
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