2024年11月23日( 土 )

ステルスマーケティングの規制

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 消費者に広告であることを隠して行う宣伝行為のことを、ステルスマーケティング(ステマ)と言います。第三者になりすまして自社の商品・サービスの宣伝をしたり、インフルエンサーやアフィリエイターに利益を供与して依頼し、広告であることを隠して商品・サービスについて好意的な情報を発信してもらうなどの行為のことです。

 ステマについて、以前は日本では明確な規制はありませんでしたが、今年10月から、景品表示法による不当表示規制の対象に追加されることになり、違反は措置命令等の対象となります。

 消費者は、企業による広告・宣伝であるとわかっていれば、ある程度の誇張・誇大が含まれていることも考慮して、商品・サービス(商品等)を選びます。しかし、広告・宣伝とは知らずに、第三者の感想であると誤って認識してしまうと、その表示の内容をそのまま受けとってしまい、消費者が自主的かつ合理的に商品等を選ぶことができなくなるかもしれません。この点で、ステマは問題があるということになります。

岡本弁護士
岡本弁護士

    消費者庁が定める運用基準によると、①「事業者が自己の供給する商品または役務の取引について行う表示」であって、②「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」がステマ規制の対象となります。

 ①については、事業者が表示内容の決定に関与したか否かで判断されます。たとえば、第三者(インフルエンサーやアフィリエイター、その他一般の消費者)による投稿であっても、事業者が表示内容の決定に関与していればこの要件に該当しますし、第三者の自主的な意思による表示であれば、ステマ規制の対象外になります。内容の決定に関与したといえるかという点は、情報のやり取りの有無、依頼や指示の有無を含む、両者間の具体的なやり取りの態様や内容、対価の内容と、その主な提供理由、事業者と第三者の関係性などから判断されます。なお、アフィリエイト広告については、通常、事業者がアフィリエイターに自らの商品等の表示を委託し、アフィリエイト広告を通じた商品購入数に応じた報酬を約束し、対価を提供しますので、この要件に該当します。

 ②については、一般消費者にとって、事業者の表示であることが「明瞭である場合」や「社会通念上明らかである場合」は該当しません。たとえば、「広告」「宣伝」「プロモーション」「A社から商品の提供を受けて投稿している」「PR」と表示されている場合が挙げられます。ただし、動画広告で、認識できないくらい短時間のみ「広告」と表示したり、SNSで、大量のハッシュタグに紛れ込ませて「#PR」と記載するなどして、広告であることが一見してわかりにくいケースは、②に該当して規制の対象になる可能性があります。

 今年10月1日以前から表示されているものでも、同日以後も継続する表示や同日以後新たに行う表示が禁止対象ステマに該当することを回避するため、各表示について、前記①②の要件に該当しないようにする対策が必要です。

 前記の通り、アフィリエイト広告は基本的に①に該当しますので、「PR」表記を付すことをアフィリエイターへの報酬の支払条件とする契約をすることなどが考えられます。

 また、商品等の販売を促進する地位や立場にある者(担当役員、管理職、担当チームの一員等)が、その立場等を秘して、個人アカウントで、商品等の販売を促進するための表示(たとえば、商品等の画像や文章を投稿し認知向上させようとする表示など)をSNSに投稿する行為も、①の要件に該当することもあります。そのため、社内的にも「PR」等の表示を義務づけるルールを整備するなどの対応も必要になります。


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本  成史
(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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