2024年に向け、ますます鮮明になる日本株優位(後)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は11月6日発刊の第343号「2024年に向け、ますます鮮明になる日本株優位」を紹介する。世界混迷で際立つ日本の明るさ
このように世界的な不安の種が大きければ大きいほど、日本の明るさが浮上する、という珍しい事態が起きている。過去30年間、日本は世界の劣等生であり続けた。世界で唯一長期デフレに陥り、名目GDPは30年間の長きにわたって500兆円強と横ばいで推移し続けた。世界で唯一30年にわたって賃金上昇が止まり、韓国にも追い抜かれるという有り様であった。
世界株式のバスケットであるMSCIACインデックスのなかで、かつて40%を超えていた日本の比率は5%とほぼ10分の1まで低下した。この間世界の投資家は日本株を売り続け、日本株比率を引き下げれば運用競争に勝てたのである。日本人だけでなく、世界の投資家にも日本軽視、日本無視の態度が染みついてしまっている。
その日本が突如として世界最高ブライトスポットになりつつある。図表2はTOPIX 対SP500指数の倍率であるが、1990年に8.3倍でピークを付けた後、急低下し2022年年初に0.42倍まで低下して大底をつけた模様である。その後急伸し、現在は0.54倍となっている。この日本の変化に持続性があると信じていいのか、世界の投資家は耳目をそばだてている。
日本の明るさの背景にある2要因、①主体的変化
一体、日本に何が起きたのであろうか。2つの大変化に注目すべきである。第1は主体的変化である。2013年以降のアベノミクスの時代に、日本企業と経済は大きく体質を改善させた。企業は改革と新ビジネスモデルの構築により、利益率は2倍になり、過去最高利益を更新し続けている。公的年金GPIFの運用益は108兆円と4倍増となった。税収は10年間で7割増となった。遅れていた賃金上昇も始まり、2%インフレが視野に入りつつある。
多くの日本企業は物まねではない独創的なビジネスモデルを打ち立て、企業統治の改革が大きく前進し、株主の要請にこたええる収益力を確保するに至っている。この企業で形成された価値は、今のところ潤沢な内部留保として、退蔵されている。この企業に滞留する所得の還流を促進するべく、岸田政権は、貯蓄から投資へという好循環を引き起こす、新しい資本主義政策を遂行している。
①賃金引き上げ促進、②PBR1倍以下企業の是正措置要求、自社株買い、増配促進など利益還元の誘導、③NISA改革など投資促進により、日本株の株式需給は大きく改善されるだろう。
日本の明るさの背景にある2要因、②地政学環境の大変化
第2に外部環境、日本をめぐる地政学環境の大変化がある。米中対立が深刻化し、かつて日本たたきに狂奔した米国が、対中デカップリングのために強い日本を必要とし、そのための円安を容認するようになったのである。大幅な円安の定着により、日本経済の大きな枠組みが変わった。円高が原因となったデフレの時代が終わり、2023 年の日本経済はバブル崩壊後最も明るい数量景気の年となっているが2024年はそれが加速するだろう。
J カーブ効果により円安初期の価格面でのマイナス場面が終わり、数量増の乗数効果が表れる後半の時期に入っている。円高で日本から海外に逃げて行った工場や資本、ビジネスチャンス、雇用が、円安によって日本に戻ってきつつある。円安はまた、インバウンドを増加させ、外国人観光客が日本の津々浦々の地方内需を刺激している。
トヨタの6割増益に象徴される強い日本
この日本企業の急回復の象徴がトヨタの利益急増である。トヨタは2024年3月期の連結純利益予想を3兆9,500億円(前期比61%増)、従来予想比5割増となる上方修正を発表した。これは過去最高益を4割も上回るものであり、為替前提などから見てさらなる上方修正の余地を残している。半導体不足解消による生産増、車の機能向上にともなう値上げが貢献した。米国での23年7〜9月の平均販売価格は4万674ドル(約610万円)と、4年間で19%上昇した(Wards Automotive News)。
過当競争で採算悪化が進行している中国とは逆に、消費者の購買力が旺盛な米国での販売基盤の強さ、およびブランドロイヤリティの高さがものを言っている。大幅な円安がそれに拍車をかけた。半期ベースの売上高純利益率は、トヨタ11.8%と、多額の補助金の恩恵を受けるテスラの9.4%を上回った。時価総額2倍以上の市場の寵児テスラを上回るトヨタの収益力は、日本企業の稼ぐ力の向上をうかがわせる。
EV投資にともなう負担は今後本格化する。トヨタは30年までにEVだけで5兆円を投資するとしている。本格化するEV投資競争においては、持続的なキャッシュ創出力が勝利の決め手となる。日本の時代到来を示唆する出来事といえる。
(了)
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