シェアオフィス米大手ウィワークが破産申請(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏時代の寵児であったウィワーク
ウィワークは2010年の設立以来、日本を含む世界39カ国でシェアオフィスを展開し、日本のソフトバンクグループも出資して、世間の注目を集めることとなった。ソフトバンクは同社に対して合計でおよそ160億ドルに上る巨額の金額を投資した。
ウィワークはその当時ベンチャーブームもあり、急速に成長した。ビルを長期契約でリースし、短期間の契約でベンチャー企業に貸し出す業務だけでなく、ベンチャー企業同士のネットワーク形成、運動レッスン、その他事業としてビールや飲料を提供するサービスもした。同社は社員の勤務データを収集し、分析して業務効率の向上に貢献するIT企業であるとも主張した。
そのようなことが受けて、同社の企業価値はIPO直前の2019年1月には470億ドルに達した時期もあった。しかし、IPOが失敗し、同社の価値は下落し始めた。その後、経営再建を経たウィワークは、2021年10月にSPAC(特別買収目的会社)と合併することによって上場をはたす。同社はその後、昨年23億ドルの赤字を計上し、今年の上半期も約7億ドルの損失を発生させている。
その結果、これ以上経営を継続できず、破産申請となったわけだ。ウィワークの破産で、同社に多額の投資をしたソフトバンクは多くの損失を被ることになった。孫社長の信用にも傷がついたことはいうまでもない。周囲の反対を押し切って断行した投資がこのような結末になり、孫社長は責任を問われることになるだろう。
米商業用不動産全般に影響か
世界の不動産市場はダブルパンチを受けている。在宅勤務という勤務形態が広がり、オフォス需要が減っているところに、高金利の悪影響が重なったからだ。中国も不動産バブルがはじけ、世界のどこを見回しても不動産業界は大変な時期である。そのなかでも、商業用不動産は景気の影響を受けやすい分野である。
ウォールストリートジャーナルによると、世界の商業用不動産向けの貸し出し規模は約2兆ドルで莫大な規模の市場である。商業用不動産の不渡りリスクは1年前より35.8%上昇したという。新型コロナウイルスの感染拡大の後遺症からまだ回復できていないなか、利上げで空室が増え、賃貸料は下がり続け、不動産物件は収益悪化の状態である。空室率は30年ぶりに最高水準に達しているという。
それに、利上げでビルの価値が下がることになり、銀行貸し出しの延滞や不払いも増加している。貸し出しが不良債権化すれば金融機関にも打撃となる。景気の冷え込みで空室は増え、顧客をさがすのが難しくなった反面、賃料はさがっていて、金融機関へ支払う利子は増加する。低金利で資金が潤沢にあったときに通用したビジネスモデルが崩れることになったわけだ。不動産景気の低迷は、社会の消費も委縮させ、さらなる景気の冷え込みをもたらす。
労働人口の減少、ラッシュアワーの出勤を嫌がるといったライフスタイルの変化など、その他にもオフィス需要を減少させる要因は多いようだ。それで商業用ビルを住居に変えるような対策を取っているところもあるが、今のところあまり効果はないようだ。オフィス不況がもたらしたウィワーク破産の余震が今後も続きそうだ。
(了)
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