イランの女性解放運動
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DEVNET JAPAN 顧問
前駐ノルウェー日本国大使
田内 正宏 氏Net I・B-Newsでは、ニュースサイト「OTHER NEWS」に掲載されたDEVNET INTERNATIONAL(本部:日本)のニュースを紹介している。DEVNETはECOSOC(国連経済社会理事会)によりその総合諮問資格を認定されている非政府組織(NGO)。「OTHER NEWS」(本部:イタリア)は世界の有識者約1万4,000名に英語など10言語でニュースを配信している。今回は11月17日掲載の記事を紹介する。
今年のノーベル平和賞は、イランの女性解放運動の象徴であるナルゲス・モハンマディ氏に贈られた。彼女は、イランの神権政治による女性の抑圧と差別に対して、人権擁護センターの副代表として長年にわたり闘ってきた。その結果、彼女は何度も逮捕され、鞭打ち刑や長期の禁錮刑などの重い刑罰を受けた。しかし、彼女は決して屈することなく、自分の信念と理想を貫いた。彼女は、イラン国内だけでなく、世界中の人々に勇気と希望を与えた。
ノーベル平和賞は、この1年間で人類のために最大の貢献をした者・組織に与えられる。この1年間で最も印象的だった出来事は、イランで起きた大規模な市民運動だった。2022年9月、若いクルド人女性がスカーフ着用をめぐって道徳警察に拘束され、死亡した事件が発端となり、全国各地で政府への抗議デモが広がった。何十万ものイラン人が「女性・命・自由」というスローガンを掲げて、平和的にデモを行った。このデモは、1979年に神権政治が権力を握って以来、最も大きな規模となり、体制を揺るがす可能性を示した。
政権はデモを弾圧しようとしたが、デモ隊は屈しなかった。多くの犠牲者が出たが、それでもデモは続いた。その中心にいたのが、モハンマディ氏だった。彼女は獄中からデモ隊に支持を表明し、仲間の囚人と連帯行動を組織した。彼女はまた、世界に向けてメッセージを発信し、イランで起きていることを訴えた。彼女は、「より多くの者が閉じ込められると、我々はより強くなる」と述べた。
ノルウェー・ノーベル委員会は、この市民運動を高く評価した。委員長のベリット・ライス・アンデシェンは、「モハンマディ氏は自由の闘士だ。彼女はイランにおける人権、自由、民主化のために勇気ある闘いをした。そして何十万もの人々が神権政治の女性抑圧に反対することを示した。今年のノーベル平和賞はそのことを認めて与えられた」と説明した。
イランでは20年前にも同じ人権団体からシーリーン・エバーディー氏が平和賞を受賞したが、その後もイランの女性の状況は変わらなかった。しかし今回は違うと委員長はいう。「デモンストレーションの力強さが増し、若い人たちが増え、より多くの勇気を示したことだ。社会の奥深い部分で変化が生じていることを期待している。平和には時間がかかるが、しかし思い出してほしい。アパルトヘイトが崩壊するのに3つの平和賞を要したことを。昨年イランで起こったユニークな動きは平和賞に値する」と述べた。
ノーベル平和賞は、イランの女性解放運動に対する国際社会の支持と連帯を示すものだ。イラン政府は、この授賞に反発し、介入主義と非難したが、それは無視できるものだ。人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利の承認は世界平和の基礎だからだ。重要なのは、イラン国内で自由と民主化を求める声が高まっていることだ。モハンマディ氏はその声の代弁者であり、リーダーである。彼女は、イランだけでなく、世界中の女性にとってのヒーローである。彼女に敬意と感謝を表し、イランの市民の運動を支持したい。
(了)
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