積極的平和主義に強い危機感~事業家・関根健次氏(3)
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ユナイテッドピープル(株) 代表取締役 関根 健次 氏
冷静でポジティブで未来志向
――ガルトゥング博士の講演やワークショップを通じて、改めてどのように感じられましたか。
関根 博士がとてもニュートラルで、リベラルなスタンスに深く感銘を受けました。さかんに「平和」を訴えかける方というのは、しばしば極度に「戦争が嫌だ」という感情論に向かいがちです。
博士にはリアリストな一面があります。今回、「専守防衛」「憲法9条第1項の堅持」「北東アジア共同体」という3つの提案が出されました。第1項「戦争の放棄」についてはもっと世界に広めるべきだという反面、第2項前段の「戦力の不保持」については変更してもいいのでは、と言っています。
日本の地政学的な状況を考えると、米軍にすぐに出ていってもらい、自衛隊もまったく武器を持たない状態にするのは現実的にはできないだろうということです。単に感情に流されるのではなく、クールに物事を考えて答えを導きだしているのです。博士の出発点は、冷静でポジティブで未来志向。私はここに感銘を受けました。彼の考え方をもう少し知りたくて、いろいろな質問をしていると、「私の頭はリアリスト、心はアイデアリストだ」と表現していました。アイデアリスト、つまり理想家の心がすごく燃え上がるときに、頭ではクールダウンして心と行き来しているということです。
また、博士自身が「意外に思うかもしれないが、自民党の考えにはいくつも賛同するところがある」と言っていました。あるメディアのインタビュー中には、「戦後70年の安倍談話において、首相は謝り続けるべきではないという趣旨のことを話したが、とても賛同する」と答えました。
博士の考え方からすると、謝り続けるという行為は建設的ではない。未来志向で日中、日韓で解決方法を導く方がポジティブだというわけです。その思考の出発点がとても素敵で印象深かったですね。博士は200カ所以上の紛争調停に関わったようです。たとえば、ペルーとエクアドルは領土問題を抱えて長らく紛争が続いていました。1995年、エクアドルの大統領から博士に「紛争を解決するアイデアがほしい」という連絡があったそうです。そこで博士は、争っている領土を共同所有し国立公園にする提案をしました。そこに商業施設や観光、ビジネス、プライベートで交流するスペースを作ろうというわけです。さっそくこれが取り入れられ、和平協定も実現しました。
博士の功績は国家間の紛争に限らず、人間対人間、宗教対宗教などもあります。ノルウェー出身で数学、社会学を学び、20代でアメリカのコロンビア大学で社会学の助教授をしていました。そこでたまたま、白人と黒人の紛争調停に関わりました。数学を学んでいたことから、複数の問題解決パターンが瞬時に思い浮かんだそうです。そのころから、平和について何か貢献したいという気持ちが芽生えていたそうです。
その後、ノルウェーに戻り、1959年に世界初の平和研究機関である「オスロ国際平和研究所(PRIO)」を設立しました。このころから「積極的平和」を提唱し始めました。当時は平和研究といっても戦争研究ばかりで、平和そのものについて考える研究がありません。そこで、博士自らの手で「平和学」という研究分野を作ったのです。今では世界中に著名な教え子が数限りなくいるそうです。(つづく)
【大根田 康介】<プロフィール>
関根 健次(せきね・けんじ)
ユナイテッドピープル(株)代表取締役
一般社団法人国際平和映像祭 代表理事
1976年生まれ。ベロイト大学経済学部卒(アメリカ)。大学の卒業旅行で世界半周の旅へ出る。途中偶然訪れた紛争地で世界の現実と出会い、後に平和実現が人生のミッションとなる。2002年に世界の課題解決を事業目的とする非営利会社、ユナイテッドピープル株式会社を創業。2009年から映画事業を開始。2011年から国連が定めたピースデー、9月21日を広める活動を開始。同年、一般社団法人国際平和映像祭を設立し、ピースデーに毎年国際平和映像祭(UFPFF)を開催している。著書に『ユナイテッドピープル』がある。法人名
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