2024年11月05日( 火 )

年忘れ~タカギ、売却額1,000億弱は盛ってる?? ファンドの秘密主義に管を巻く(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

タカギの行く末とファンドの秘密主義

 タカギの将来はどうなるだろうか。

 日本産業推進機構(NSSK)に買収された後、創業者の髙城寿雄氏は会長を退任したものの、現代表はいまだに寿雄氏の妻・髙城いづみ氏が務めており、息子の寿太朗氏も取締役に名を連ねている。髙城家は3割程度の株を残していると見られるが、その大半は息子の寿太朗氏がもつと考えられる。

 寿雄氏の願いは寿太朗氏に「モノづくりのタカギ」を継いでもらうことであった。だが、高校から海外に留学し、海外のセレブと交友関係をもち、ファンドをやりたいと言っていた寿太朗氏が、タカギの株を持ち続けることはあっても、北九州に帰って本社を継ぐ気があるとは考えにくい。

 その一方で、寿雄氏がどうしても経営にタッチして欲しくなかった妻で現社長のいづみ氏は、今はタカギを年商1,000億まで成長させる気で満々だという。だが、いづみ社長にそのような決定権はない。すべてはNSSKがタカギの出口をどこに設定するかにかかっている。

 タカギのファンド売却が報道されてから、売却を歓迎する声は内外からちらほら聞かれた。それはほかでもなく、前経営陣退陣後の混乱に対して行く末を危ぶむ声が大きかったからだ。

 タカギに限らずファンドによる企業買収は来年もますます活気づくと予想されている。ファンドによる買収が歓迎される背景には、非上場会社の問題点としてしばしば取り沙汰される、創業家による会社の私物化や経営の不透明性が挙げられる。また、ファンドに対する期待として、経営のプロが送り込まれることや、従前のやり方にとらわれない業務効率化の推進、設備投資のための資金調達力、採算性がない事業の思い切った合理化など、変化が激しい時代に日本企業が適応するための新陳代謝として、ファンドの機能に期待する声は大きい。

 だが、ファンドにも懸念点がある。それは家族経営とは別次元の秘密主義だ。ファンドは出資者に対しての情報は上げるが、取引先などへの信用情報の開示はむしろ不透明になる場合すらある。ちなみにタカギの23年3月期の損益と財務情報は、大手企業調査会社からはいまだに入手することができない。ファンドにぶら下がった企業の経営で最優先されるのは、自社がより高く売られるための企業価値の向上であって、取引先との長い付き合いを念頭に置いた信用に対する配慮の優先度は自ずと下がるのである。

 企業の経営革新として買収の重要度がますます大きくなる時代、ファンド流の経営流儀が日本の中小企業をどのような方向へ向かわせるのか、NSSK傘下タカギの行く末に今後も陰ながら注目する。

(了)

(前)

関連記事