会見で見えたウクライナの現実 アビスパvsシャフタール・ドネツク
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サッカーJ1リーグアビスパ福岡は18日、ウクライナのFCシャフタール・ドネツクとウクライナ復興支援チャリティーマッチを行う。17日、都内で前日記者会見が行われた。会見には、シャフタール・ドネツクのマリノ・プシッチ監督、主将のMFタラス・ステパネンコ選手、ヘオルヒー・スダコフ選手、アビスパ福岡からは長谷部茂利監督、MF金森健志選手、DF森山公弥選手が登壇した。
冒頭、主催のAPAMAN(株)とアビスパ福岡を代表して、川森敬史APAMAN常務取締役・アビスパ福岡代表取締役会長より、チャリティーマッチ開催の意義と背景について説明があった。概略は以下の通り。
APAMANと全国賃貸管理ビジネス協会は東日本大震災に際して無償の住宅提供を行っているが、今回のウクライナでの戦災に際して、住宅に携わる事業者として何か支援をしたいと考え、今回のチャリティーマッチを企画した。APAMANの大村浩次代表取締役は何度も現地を訪れ、被害の実態に心を痛めている。
ウクライナ国内には支援を必要とする方が2,180万人、損壊した家屋が140万戸におよんでいる。また日本国内には、2,109人のウクライナ避難民在留者が戦火を逃れている。試合当日(18日)は国連が定めた「国際移住者デー」。この日に試合を行うことで、戦災の影響で移住を余儀なくされている方々への思いをいたしていただければと考えている。
続いて、両監督・両クラブの選手がコメントを述べた。シャフタール・ドネツクのプシッチ監督は「サッカーの試合をするからには面白いゲームを見せたい」、長谷部監督は「強豪のシャフタール・ドネツクに立ち向かい、いい試合にしたい。勝敗以前にリスペクトのあるプレーをしたい」とコメントした。
質疑応答では、シャフタール・ドネツクの選手に質問が集中。「日本ではウクライナ支援への関心が薄れているといわれるが、そう感じることはあるか」という問いに、ステパネンコ選手が「私たちは戦争に直面している。日本ではそうかもしれないが、関心の薄れを実感したことはない」と答えるなど、彼我の認識の格差を感じるやり取りもあった。
「シャフタール・ドネツクは、本来のホームスタジアムであるドンバス・アリーナから離れてもうすぐ10年(※)になるが」という筆者が問うと、2020年にシャフタール・ドネツクでプロデビューしたスダコフ選手は「僕はドンバス・アリーナでプレーしたことはないが、すばらしいスタジアムだと聞いている。将来すべてが終わって、そこでプレーするのが僕の夢です」と答えてくれた。
2010年以来シャフタール・ドネツクでプレーするステパネンコ選手は、「ドンバス・アリーナはヨーロッパでもっともすばらしいスタジアムの1つだと思っている。今はそこでプレーできないのは皆さんもご存じの通り。ただ、僕はもう一度あのドンバス・アリーナ、僕にとっての夢の舞台に立ちたいというのが目標です。それが選手としてなのか、また別のかたちなのかはわからないけれど、シャフタール・ドネツクの一員としてドンバス・アリーナでプレーするのは僕の夢なのです」と話してくれた。
フットボールクラブにとって、ホームタウンとホームスタジアムは切っても切り離せないもの。そのつながりを戦火によって強制的に断ち切られることの悲しみ、喪失感は、平和な日本にいて想像するのは難しい。
また、この質疑応答では両クラブの選手の意識の違いも浮き彫りになった。ステパネンコ、スダコフ両選手からは何度も「ウクライナの兵士たちが戦場で戦うという義務をはたすように、私たちサッカー選手はピッチでプレーするという義務をはたす」という言葉が聞かれた。また、21歳と若くサッカー選手としての将来を嘱望されているスダコフ選手は、「僕がサッカーをプレーするモチベーションは、まず国のため、そして家族のため。サッカー選手としての自分のキャリアのためにウクライナ国外のクラブに移籍するという選択肢は考えていない」と断言した。サッカー選手としてのプロフェッショナリズムとはまったく違う次元のモチベーションを持つ相手との試合は、アビスパ福岡の選手たちにとって大きな経験になるのではないだろうか。
試合は18日19時キックオフ。Abema テレビで生中継される。視聴については以下の通り。
■INFORMATION
Abema テレビ
放映日時: 12月18日(月)午後6時40分~
視聴URL:https://abema.tv/channels/world-sports-1/slots/97vvzcA229xFGjチャリティーマッチ特設サイト:https://ukrcharitymatch.org/
※シャフタール・ドネツクのホームタウンであるドネツク市は、2014年のロシアによるクリミア半島占拠以降ロシアが実効支配している。同市にあるドンバス・アリーナは2014年以降閉鎖され、サッカーの試合は行われていない。シャフタール・ドネツクは、2014年以来ウクライナ国内のリヴィウ、ハルキウで活動していたが、2022年のロシアによる侵略以降は隣国ポーランドに移転して活動している。 ^
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