2024年11月26日( 火 )

求められる一層の「自助」 能登半島地震が示す大規模災害への教訓

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 新年の祝賀ムードを一瞬にして喪失させてしまった1日発生の能登半島地震。最大震度7を記録した石川県を中心に北陸地方で甚大な被害が発生している。まずは亡くなられた方々へのお悔やみと、被害に遭われた方々へお見舞いを申し上げたい。

 その被害状況だが、石川県の災害対策本部のまとめによると、5日午前8時時点で死亡者が92人、安否不明者が242人、負傷者が464人、住宅被害(全半壊)が308棟などとなっている。

 輪島市や珠洲市、能登町ではそれぞれ「多数」「確認中」などという表示があること、道路の寸断による孤立地域がいまだ解消されていない状況などから、被害の全体像が明らかになるのにはまだ時間がかかりそうだ。

 孤立地域では水道や電気、ガスの供給といったインフラの崩壊はもちろんのこと、支援物資が届かず水や食料、灯油などが不足。簡易トイレ不足などにより衛生面の問題も浮上しており、お年寄りや子どもなど災害弱者と呼ばれる人々の健康状態が強く懸念される。

 被災地の復旧を難しくしているのが、各市町村の高齢化、過疎化だ。このうち高齢化については、石川県全体の老年(65歳以上、2022年10月時点)人口率は30.5%で、全国のそれが29.0%(同)であるのと比較して大きな差はない。

 ただ、被害が大きかった地域の老年人口率はさらに高い。珠洲市の52.8%を筆頭に能登町52.0%、穴水町50.3%、輪島市47.9%、志賀町46.6%などだ。人口の約半分が高齢者では、自助はもとより共助さえ厳しい状況だろう。

 北陸地方は寒さが厳しい地域。今後は降雪がさらに強まる時期が到来するだけに、一刻も早い万全な寒さ対策がなければ二次災害といえるような事態を招きかねない。公助だけでなく、日本全体による共助が求められる状況だ。

 さて、私たちは被災地支援を行うだけでなく、この大規模災害を教訓にせねばならない。能登半島地震で起こっている状況は、近い将来に発生するとされる南海トラフ大地震などでも起こり得る状況だからだ。

 超高齢化、人口減、人手不足の時代であり、災害時の復旧・復興ではマンパワーが限られる。しっかりとした備えがなければ、国の機能を失う事態、国家転覆も覚悟せねばならない状況である。

 そうしたことを政府は十分に認識しているのだろう。東日本大震災以降、国民へ災害への備えとして一般的な災害なら3日分、大規模災害の場合では1週間分の食料・飲料・生活必需品など、家族の人数分備蓄することを強く推奨するようになった。

 つまりは国民1人ひとりの自助の必要性をより強調しているのだ。備えとして推奨しているのは物資だけに止まらない。たとえば、寝室の回りに転倒の恐れがあるモノを置かないこと、避難経路の確認や家族での安否情報の共有など、暮らし全体を含めている。

 企業に対しても事業継続計画 (BCP)の策定による備えを求めている。これは企業版の自助を促すものである。いずれにせよ、限られた人的、経済的資源のなかで災害に立ち向かわなければならない時代を迎えているのは間違いない。

 今日、今からでも自助につながる行動が必要だ。

【田中 直輝】

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