【新春トップインタビュー】諸先輩から受け継いだ理念を後輩に伝え、国家観を示し、国民の信頼を取り戻す
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衆議院議員 武田 良太 氏
2022年7月の安倍晋三元首相襲撃事件から、国民の政治に対する視線は一層厳しさを増した面がある。内政・外交・安全保障と待ったなしの状況のなか、今こそ「木を見て森を見ない議論ではなく国家観を語り、国民の信頼を取り戻すべき」と語るのが福岡11区選出で、総務大臣(菅義偉内閣)を務めた武田良太衆議院議員。世論に迎合せず、持論を展開する同氏への期待は大きい。
派閥の役割は教育と相互扶助
──与党の一員として、岸田政権をどのように評価されますか。
武田良太氏(以下、武田) 今回のように、政治とカネにまつわる問題について国民の疑念を抱くようなことがあったことは、全員が反省しなければならないと思います。民主主義の健全な発展のために、政党や政治団体などの政治資金の収支の公開や授受等の規正などを定めた「政治資金規正法」としてルールが定められており、これを踏み外すことは決してあってはなりません。再発防止策を行い、いち早く国民の信頼を回復させなければならないと考えます。
──所属されている二階派でも問題が指摘され、派閥を退会する議員が出ています。
武田 退会された理由はさまざまかと思いますが、その一部がパーティー券に絡められた面もあるように思います。派閥としてはノルマを所属議員に課しておりません。派閥というのは自民党の伝統的な政策集団という機能があるとともに、互助会としての役割ももっています。政策を立案するうえでも、国民各層から寄せられる陳情を処理・解決していくうえでも、派閥が大きな母体となっています。それを運営していくうえで、みんなで運営費を負担していく必要があります。
応能負担としてノルマと呼ばれるのは1つの目標としてありますが、達成できなかった場合に補てんを求めることはありません。派閥の年間行事のスケジュールを決めたうえで、人件費を含めて必要な運営費を想定し、その負担に関する目標として割り当てを決めております。こうしたやり方が間違っているとは決して思いません。
政策実現には組織での議論が不可欠
──野党などからは派閥政治や政治にお金がかかりすぎるなどの批判の声も聞かれます。
武田 我が国では政党政治が行われています。自民党においては各派閥が異なる理念をもち、政治や外交をどのように進めていくのかそれぞれ考えています。政治は携わる分野が広がるほどコストがかかります。民主主義において1人では何も実現させることはできません。組織やグループを構成し、協力し合って政策を実現していく必要があります。
──派閥解消論や政治資金パーティーを禁止すべきとの声もありますが、派閥の教育機能を見直す声もあります。
武田 民主主義は自分と異なる考えを排除するものではありません。立場や考え方が違ったとしても、別の意見を受け入れながら、角を丸くして、国民の願いを実現していくことが民主政治であると思います。そのことを徹底して議論し合いながら学ぶのが派閥だと思います。
なかには、無派閥を選択したり、単独行動に出たりする方もおられますが、組織上のコンセンサスや協調を通じて物事をつくり上げていくという協調性を学ぶ機会が得られません。自民党の伝統的な教育システムである派閥は、目には見えませんが、大きな役割があると思います。
──二階派事務総長である武田議員には将来の会長として期待の声があります。
武田 これまで我々がお世話になり、育んでいただいたグループですので、先輩方から学んだことを後輩議員へ継承していく責任がございます。これまで学んできたことをしっかりと伝えていけるように、努力をしてまいりたいと思います。
冷静に見る必要がある政治-宗教関係
──審議なかの旧統一教会の被害者救済法案をめぐり、財産保全に関して被害者などから不十分との声もあります。
武田 旧統一教会に限らず、大前提として踏まえなければならないのは、憲法が保障する信教の自由との整合性です。宗教団体のみならず、政党でも企業でもさまざまなコンプライアンスにまつわる問題が出てくることがあります。しかし、組織において教義や組織方針に従ってまじめに、謙虚に活動している方々もおられることを考えなければならないと思います。国の役割は、そのうえで社会的なエチケットや法令に抵触した場合に指導していくことだと思います。
今回、自民党と旧統一教会の関係について指摘を受けていますが、宗教2世の方々の苦しみや葛藤について、ほとんどの自民党の先生方は、以前は耳に届いていなかったと思います。
自民党に限らず、政治家はさまざまな不特定多数の方々と交流を重ねて、選挙区で戦っていかなければなりません。たとえ、関わりをもつ方が異なる思想信条をもっていても、他党の支持者であっても、選挙区外の方であっても、困りごとや悩み、要望をもたれた方々に対して、しっかりと胸襟を開いてその相談に乗らなければなりません。統一教会との関係性もそうした活動のことを指摘されていると思いますが、すべてを否定することはあってはならないと思います。
旧統一教会は反共産主義を掲げており、我が国の価値観と一致していたことは事実で、北東アジアの平和と安定のための安全保障政策において価値観を共有しています。過度な献金などは是正する必要がありますが、すべてを否定することは行き過ぎではないかと思います。
──岸田首相が自民党の点検(調査)を行い、教団との関係断絶を宣言されました。
武田 点検当時(2022年9月前後)においては、教団と政治家の関係性、接点が次々明らかとなり、関係性を見直すとした判断は正しかったと思います。統一教会もさまざまな関連団体をもっています。女性の人権や権利に関する活動や世界平和、北東アジアの平和など個々の活動を行う団体があり、多くの国会議員の先生は、直接的に宗教とつながることを知り得なかったのだと思います。団体として、特定の宗教を勧誘、強要することはありませんでした。
税収と支出のバランスを
──賃金上昇がなかなか進まないなか、減税を望む声も聞かれます。
武田 経済政策についてもいえますが、老後や子育ての不安を解消する施策を行う必要があります。そのためには国民の皆さまに、全員に関わる問題との認識をもったうえ、全員で携わっていただきたいと思います。老後や子育て、教育、社会の安心安全に関してコストがかかるということを全面的に打ち出していかなくてはなりません。
財源に関して、小手先の税制改正ではなく抜本的な改革の必要があると思います。まず収入の部分を見直す必要があります。本来いただけるところからいただけているのかどうかを調査・検討することや、税収を担保としたうえで特別措置法を制定することなどを決める必要があります。しかし、現実には税収の部分を議論しないまま、支出のことばかり議論しています。日本は人口が減少していきますが、地域に住む高齢者が老後も安心できる社会にしていくことで、可処分所得は必ず増えるでしょうし、地域経済も向上し、安心して住める国になると思います。
──国に国民への給付金を望む意見もあります。
武田 コロナ禍において国民や事業者に対するさまざまな給付が行われましたが、それを当たり前のものとすべきではないように思います。災害や感染症など想像しえなかったさまざまな災いにおいては国民の生活や生命が脅かされるため、給付金が必要な場面が出てきます。瞬時に給付できるシステムを平時からつくることが重要と思います。しかし、健全な国家運営は給付金などを前提としたものではないと思います。
東アジアにおいて
一方に偏らない外交を──菅元首相が会長の日韓議員連盟で、幹事長を務めておられます。
武田 北東アジアにおいて我が国は韓国・アメリカと同盟関係にあります。北東アジアの平和と安定を維持していくためには日米韓の同盟関係は不可欠なものです。アメリカ・韓国との同盟関係はキープしながら、隣国との関係を安定させていくことは、当たり前のことであり決して二律背反ではないと思います。2つのカードをゆるぎないことにしていけば、日本の外交は確固たるものになると思います。偏りすぎるのが一番ダメだと思います。アジア地域での役割、世界での役割、どちらも冷静に見極めて、外交を行っていく必要があります。
──日韓関係は近年良好ではありませんでしたが、改善がみられます。
武田 慰安婦問題について岸田総理が外務大臣のときに、「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と表明し、韓国政府が元慰安婦を支援するために設立する財団に日本政府が10億円を拠出し、両国が協力していくことの確認を行いました。レーダー照射問題はあってはならないことです。日韓双方現場では主張はあるかと思いますが、両国の政治家が感情的に批判の応酬を行うのはナンセンスだと思います。我々も、韓国の政府ならびに国会議員の先生方とも対話を行いましたが、韓国側もそのことは理解しています。
現政権は前政権と異なっており、とりわけ対日政策では違いを明確に打ち出しています。両国の若者は、文化や美容を通じてお互いを深く理解し合っていると思います。将来の子どもたちに日韓関係の大事さ、両国の子どもたちがお互いの国を好きになるような環境をつくり出すことが、我々日韓議連の一番のテーマだと思います。
ライドシェアと地域振興
──地域交通の問題からライドシェアの必要性が叫ばれるようになりました。
武田 タクシー運転手の人手不足がいわれています。輸送に限らずさまざまな分野で同様の問題がありますが、運転手の高齢化は深刻です。公共交通機関が脆弱な地方ほどタクシーの需要が高いのが現実です。世界各国でライドシェアの成功例が出てきています。日本だけ取り組みが遅れている、なぜやらないのかという声が挙がっています。需要はマーケットが決める時代からユーザーが決める時代です。そこで大事なことは安全性をどう担保するのかです。誰でも参入できるようにしていいのかという問題があります。事故が起きた場合に誰が補償するのかなどの課題はありますが、議論を否定してはいけないと思います。
──福岡11区は、山間地も少なくなく過疎化が進んでいます。地域の発展についてどうお考えでしょうか。
武田 国会に送っていただいて20年となりますが、ようやく交通の大動脈が形成されつつあり、北九州経済圏と福岡経済圏の力が田川に注ぎ込まれる土壌ができました。北九州空港の滑走路増設が事業化され、世界から貨物便が大量に来ることが可能となりました。周防灘沖エリアの行橋・豊前・苅田では、トヨタ自動車と日産、安川電機、TOTO、それに付随したさまざまな工場が建設されています。災害が少ないことから産業も育ちやすいです。これまで物流コストがかさむという問題がありましたが、道路交通網の整備と空港の充実により、めまぐるしく発展する地域になると思います。
──超党派の「サウナ振興議員連盟」を立ち上げました。
武田 サウナブームのなかでこれを過疎地や地方の振興に使えないかということで始めました。日本には1,000を超える道の駅がありますが、税金で建設されており、そこにサウナを併設することで、都会から多くの人がきてくれることになるとインバウンド効果が達成できると考えています。サウナにはさまざまな法令が関係しています。これを簡略化し、安全面を担保しながら、難しい手続きや監督官庁が多岐にわたるものを規制緩和して、ワンストップ化したいと思います。
政治家には国家観が不可欠
──安倍晋三元首相の事件で、浮上した問題もありますが、日本という国をどのように運営していくのか問われているように思います。
武田 国民の皆さまからの政治不信について、少子化問題や税制や経済などさまざまな取り組みをしているものの、大きなベクトルを示しきれていないことが要因としてあると思います。自民党は国家観をもった基軸保守政党です。金融政策、農業政策、教育政策などにおいて、国家とは何かを明確に示していかなければなりません。しかし、個別の議論に走り、木を見て森を見ない状況があります。国家を見ていくということがこれからの自民党、政治家に課せられた大きな課題だと考えます。
【近藤 将勝】
<プロフィール>
武田 良太(たけだ・りょうた)
1968年、福岡県田川郡赤池町(現・福智町)生まれ。明治学園中学校、県立小倉高校、早稲田大学卒業。亀井静香衆議院議員の秘書を経て1993年、旧福岡4区から自民党公認で出馬も落選。2回の挑戦を経て、03年の第43回衆議院議員総選挙(福岡11区)で初当選し、自民党に入党。09年、早稲田大学大学院公共経営研究科修了。08年8月、防衛大臣政務官。13年9月、防衛副大臣。19年9月、国家公安委員会委員長、行政改革担当大臣、国家公務員制度担当大臣、国土強靭化担当大臣、内閣府特命担当大臣(防災)として初入閣。20年9月、総務大臣。現在7期目。日韓議員連盟幹事長なども務める。関連記事
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