2024年11月26日( 火 )

令和6年能登半島地震~特殊な地震型で津波が発生(後)

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 2011年の東日本大震災における未曽有の津波被害以来、将来的な津波被害の発生として懸念されてきたのは南海トラフ地震である。いずれも太平洋側での地震であるため、西日本の日本海側については津波への警戒が失われがちだったのではないだろうか。しかし、今回の令和6年能登半島地震が新しく認識されたメカニズムの地震であるように、西日本の日本海側でも従来の認識と異なる地震や津波が発生する可能性がまったくないわけではない。また、東北地方沿岸の日本海で発生した津波が九州に到達する可能性もある。このようなことから、今一度、日本海側で津波を発生させた過去の地震や、西日本の代表的な地震を振り返って心の備えを新たにすることも、今回の地震からの学びとして重要なことだろう。

日本海側での大津波をともなう過去の地震

 日本海でも、過去に大きな被害をもたらす津波を発生させた地震はプレート境界型地震だ。日本海では北米プレートとユーラシアプレートの2つが衝突し合っている。衝突の結果としてプレートに沿うかたちで、新潟沖から北海道の西方沖にかけて衝突のひずみが集中する部分が帯状にのびている。これは日本海東縁変動帯と呼ばれ、そのひずみが解放されるときに発生したとされる地震で、大きな津波を引き起こした事例が過去に少なくとも2つある。日本海中部地震と北海道南西沖地震だ。

日本海中部地震(1983年5月26日)

 マグニチュード(M)7.7。地震の震源は深さ約14kmと比較的浅く、海底近くで発生したため、津波を引き起こした。津波は最大波高15mに達し、秋田県、山形県、新潟県で大きな被害をもたらした。死者・行方不明者100人以上。

北海道南西沖地震(93年7月12日)

 奥尻島地震とも呼ばれる。M7.8。奥尻島の西方沖約15 kmで、地震にともなって発生した海底地すべりが津波を引き起こしたと推定される。津波は最大波高約31mに達し、奥尻島に甚大な被害をもたらした。死者・行方不明者200人以上。

 上記のような地震が発生し得るプレートの境界は、日本海側では能登半島から東側のみであり、それより西の日本海側にはプレート境界はない。しかし、これらの地震で生じた津波が、日本海の中央にある大和堆などで増幅され、山陰や九州北部まで到達する可能性もある。

日本付近で発生する地震 出典:気象庁
日本付近で発生する地震 出典:気象庁

西日本で発生する内陸型地震

 西日本で発生する地震は主に内陸型地震と呼ばれる。西日本が位置するユーラシアプレートは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込むことによって、ユーラシアプレートの地殻に力が蓄積し、断層の動きによって力が解放される。これが内陸型地震の発生原因だ。また、都市直下のごく浅い震源で発生するため、震源直上で巨大な地震を引き起こす。

 代表的な例では、1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災、M7.3、震源の深さ16km)、2005年の福岡南西沖地震(M7、震源の深さ9km)、16年の熊本地震(14日:M6.5、震源の深さ11km、16日:M7.3、震源の深さ12km)がある。

 プレート境界型地震は、地球の活動としてプレートが動き続ける限り、いつか必ず発生すると考えられている。そしてそれはプレートの境界で発生し、津波を引き起こす。一方で、内陸型地震もプレートに力が加えられ続けている限り発生するのだが、プレート上に複雑に広がる断層のどこで力が解放されて地震が発生するか、予測することが極めて困難とされている。

 そのようなことから西日本に住む我々は、いつどこで大地震に襲われてもおかしくないことと、津波が襲来する可能性も十分あることを念頭に置いて、今回の令和6年能登半島地震についての情報からさまざまなことを学んでいきたい。

(了)

【寺村朋輝】

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【熊本地震最前線レポート】(2016年連載)

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