2024年11月22日( 金 )

【大学ラグビー】帝京3連覇12度目の日本一、明治創部100年目祝砲放てず

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国立競技場 イメージ    1月14日(土)東京・国立競技場にて、第60回全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝が行われた。決勝のカードは、帝京大学と明治大学。(観衆:18,374名)

 結果は、34-15で帝京が選手権3連覇・12回目の日本一となった。明治は創部100周年を迎え、2018年度以来の大学日本一が期待されたが、その夢は露と消えた。

 試合開始20分過ぎの落雷によって、約1時間の試合中断。雨→雹→吹雪と厳しいコンディションにもかかわらず、両校とも全力を尽くしたゲームとなった。

 得点の内容は、帝京4トライ(T)4コンバージョン(C)2ペナルティゴール(PG)34点。明治は、2T1C1PGの15点。前半は14-12のクロススコアであったものの、後半は20-3。結果、ダブルスコア以上となった。以下帝京の勝因について、記す。

FWが圧倒

 さまざまな分析があるが、帝京が勝利した1番の要因は、フォワード(FW)が圧倒したことに尽きる。セットプレイ(※1)─スクラムは強烈なプレッシャーをかけ続け、ラインアウトも帝京マイボールはほぼ100%確保し、相手ボール(明治ボール)は成功率約70%とスクラム同様プレッシャーを与え続け、明治アタックを寸断させた。つまりFWでのボール争奪戦で、終始帝京がイニシアチブをとっていた。

 互いのラインアップの陣容を見ると、実力的には互角と予想したが、とくにコリジョン(※2)の部分で帝京が優勢であった。帝京FW選手のボールキャリー時のほとんどは、ゲインラインを超えるアクション─足の運び(レッグドライブ)の可動の躍動で、帝京FWがボール支配において優位に立った。

※1:セットプレイ 反則やボールがデッドになった際に、所定のルールに基づいてゲームを再開するプレイ。該当するアクションはスクラム、ラインアウト、キックオフ、ドロップアウト。
※2:コリジョン 相対する選手間の身体接触の総称。コンタクトとも示される。

トランジション(※3)─「守から攻」を制す

 帝京は、ディフェンス成功率が77%であったが、コリジョン・エリア=タックルからブレイクダウンのシチュエーションで、ボール争奪への意志統一がなされていた。つまり、「ボールを奪還できる」と判断を下し、一気に争奪へのアクションを遂行した。トランジション─「守から攻」へのアプローチを瞬時の判断で実行し、10回以上のボール奪還を成立させた。

 そのほか、ルーズボール(※4)への迅速な働きかけ、15人一体となった精度の高いパスワークによるアタックの構築によって、試合を通して帝京がボール、そしてエリアとも60%以上の支配を継続した。

 前記以外でも帝京の3連覇の勝因があるが、筆者が見たなかでは、FWの圧倒とトランジションを制したことが大きい。

 帝京大学ラグビー部の3連覇で、大学ラグビーシーズンは幕を閉じた。

※3:トランジション 守備から攻撃、攻撃から守備に移り変わる局面の総称。サッカー、バスケットボールでも使われる。
※4:ルーズボール 誰も保持しておらず、両チームどちらも働きかけることができるボール。

当たり前を払拭

 帝京ラグビーの強さを象徴する言葉の1つに「脱・体育会系」─これまで部内の雑用一切は、下級生が行っていた慣習を、3,4年生=上級生が行うことを断行。この断行は、“皺寄せ”がいく学年が発生したのも事実であろう。それでも前監督の岩出雅之氏(現・帝京大学スポーツ局局長、同学スポーツ医科学センター教授)は、「上級生が下級生に尊敬されるような部に」「下級生が所属するチームに誇りをもてるように」とするおもいで、部のマネジメントを方向転換させた。一方で業界関係者によると、「上級生が雑用をやってくれる」ことが下級生にとって“当たり前”の雰囲気を払拭させるために、「誰かがやるべきことを上級生が担っている。そして下級生は、自分のトレーニングなど自身の準備に集中できる。先輩たちに対して常に感謝の意を心に刻んでおくよう」と部内を引き締めることに抜かりがないという。続けて「トレーニングおよび試合の戦法においても、今までのことが“当たり前”であってはならない。常に改善と進化を求めることが大切」(前出関係者)

 ラグビーエリートが集結する帝京大学ラグビー部は、その才能のみに傲ることなく、真摯にラグビーに向き合っている。再び帝京の黄金時代がめぐってきた。

【青木 義彦】

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