2024年11月21日( 木 )

2024 年相場の本質、地政学が決定的要因に(後)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は1月16日発刊の第348号「2024 年相場の本質、地政学が決定的要因に~なぜ日本株の突出した強さが続くのか~」を紹介する。

(2)地政学展開の帰趨、トランプ再選でも不安なし

 このように経済と金融市場面からは2024年は明るい年と観測されるが、人々の心理は暗い。中国による台湾侵攻可能性の高まり、ウクライナ侵略ではロシアが優勢に立っていること、ハマスによるイスラエル攻撃とイスラエルの反撃など中東の争乱に終わりが見えないことなど、国際法に基づく国際秩序は大きく揺らいでいる。米国のプレゼンスの低下が大きい。オバマ政権が米国は世界の警察官の任には堪えられないと言い、トランプ政権はMAGAを唱えて同盟軽視を強めた。中国が異例のスピードで軍事増強を進めるなかで、米国防衛予算は、米ソ冷戦末期のレーガン時代の対GDP比7.7%から2022年には3.6%と半減した。この地政学混乱の根本原因は米国覇権の衰弱にある。まるでパンドラの箱を開けた如くである。

 専制国家専横の悲劇はウクライナを見れば明らか、世界は世界の警察官たる米国覇権の強化を求めているが、それがおぼつかない。台湾総統選挙における民進党頼候補勝利は好材料、台湾人が台湾の香港化を拒否したことの意義は極めて大きい。にもかかわらず消えない悲観の根源は、アメリカの世界覇権維持の意志が疑われているからである。支持率が高まり、次期大統領の可能性が最も高いとされるトランプ氏に孤立主義のにおいがある。米国の政治意志がたしかめられるのは2024年末大統領選挙の後であり、当分不安が続く。確かにトランプ氏の選挙アジェンダとして「輸入関税10%、移民規制&禁止(イスラム教国から)、対中MFN撤廃、反環境石油・ガス増産、EVシフト再考、公務員人事制度に介入し解雇を容易にするなど強権(独裁色)強化、伝統的価値観の復興、NATO離脱、同盟関係再構築? 核拡散容認など米国国益を基準としたよりラディカルな国際秩序の再構築」などが報道されている。孤立主義の傾向は否定できない。 

米国の台湾放棄はあり得ない

 トランプ氏はウクライナからの撤退を主張している。となればより大きな犠牲が予想される台湾防衛にどこまでコミットするか、信用できないのだろうか。 武者リサーチはトランプ氏であっても誰であっても次期米国大統領に台湾放棄の選択肢はないということを強調したい。中国の台湾併合が成功し日韓のシーレーンが核保有国中国に支配されれば、日韓は中国の軍事的影響下に入る。それは米国が世界の成長センターであるアジアから撤退することを意味し、米国覇権は終わる。ドル覇権は崩れ、人民元経済圏が優勢となっていく。それは世界最大の債務国米国に対する各国の債権取り立てを一気に強め、ドルの大暴落を引き起こす。米国で強烈な輸入インフレ起き、米国経済の世界プレゼンスは急収縮する。米国人の生活水準の急激な悪化は避けられない。

MAGAの一丁目一番地はドル覇権の維持である

 図表8、図表9に見るように米国は巨額の対外債務を積み上げているが、基軸通貨であることによりその債務履行に債権者はまったく不安を抱いていない。しかし一度ドル覇権が終わるとなれば、その債務返済額は膨大となる。この巨額の返済義務のない借金という特権を米国が手放せないことによって、どのような犠牲を払ってでも米国は台湾にコミットせざるを得ないのである。トランプ氏のMAGA(Make America Great Again)にとってドル覇権維持は生命線であることを強調したい。

(了)

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