安保法案反対デモが残したものとは?(後)~福岡市で公開討論
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いのうえしんぢ氏は、「デモは、一般の人にはハードル高いと言われるが、ラブレターと同じ。好きな気持ちを打ち明ける。そのときに、『恋人になれる可能性もないのに、ラブレター出すのはおかしい』とは言わない。まず、告白する気持ちが大事で、動かなければ可能性はゼロ」と指摘した。
いのうえ氏は、台中貿易協定をめぐって台湾学生50万人(主催者発表)が抗議集会を開き、立法院を占拠した「ひまわり運動」のエピソードを紹介。立法院側から妥協案が示され、撤退するか継続するかが問われた時、1人の学生が壇上に登って「幹部だけで決めるのは納得できません」と発言し、丸1日かけて占拠している約300人の意見を聞いて撤退を決めた。壇上で発言した学生がその決定に対し、「個人的には受け入れられないが、僕の意見を聞いてくれてありがとう」と述べたという。いのうえ氏は「民主主義は、少数派がありがとうと言えるシステムではないか。今の日本は(少数派が)『ありがとう』と言えるか」と批判した。
これまで、サウンドデモをはじめ、玄海町長へのインタビューのUSTREAM(動画共有サービス)中継、デモ中のマジックショーなど、さまざまな表現方法に取り組んだ。
「僕は自分が言うメッセージを権力に妨害されたくない。表現の自由を確保したい」と述べ、「デモとは、ベタだが、一人一人の気持ち、声を発すること。内容にこだわって、次は小さなデモで語らう場をやってみたい」と語った。土肥氏は、研究者であると同時に、デモ歴は2000年の九州沖縄蔵相サミットまでさかのぼる、行動する学者だ。「ポスト・フクシマの政治学」(法律文化社)の執筆者の1人であり、『デモをする社会』のデモクラシー」の章を担当した。
「デモの転換期は2011年、反原発の官邸前デモだ」と、土肥氏は指摘する。江戸時代から抗議行動はあったが、20世紀における労働運動の台頭とともにデモが民主主義と結びつき、学生運動、環境運動、平和運動など新しい社会運動の時代を経て、21世紀は、サウンドデモなど従来と違ったスタイル、SNSやツイッターでの広がり、「普通の人が集まっている」という変化が生まれているという。また、排外的な主張のデモもあり、デモリテラシーが求められていると述べた。
土肥氏は会場の人々に「デモで政治が変わるのか」と問いかけ、「第1に、議会の議員構成は変わらないので、狭義の政治(首相、議員)は変わりません」「第2に、政治は変わった。街頭で政治について表現する人が増えたように、広義の政治(政治意識)は変わった」と語った。SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の「民主主義ってなんだ」のコールが象徴し、憲法学者の水島朝穂氏や音楽家の坂本龍一氏がスピーチで指摘したように、安保法案反対の国会前デモには、民主革命の様相があった。しかし、「60年安保」では、安保条約批准と引き換えに岸首相は退陣したが、安倍首相は政権に居座り続ける。GDP600兆円という非現実的な「新3本の矢」に続き、「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」(自民党ポスター)の公約に違反して、TPP閣僚会議で大筋合意した。
安倍政治ノーのデモ・集会が東京などで開かれ、倒閣・落選運動や安保法違憲の集団訴訟などにも発展しつつある。福岡市でも10月9日に、FYMによって中央区天神で安保法制に反対するアピール行動が計画されている。(了)
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