日伊フォーラム、食料安全保障などをテーマにローマで開催
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日伊経済連合会(JIEF、会長:ディサント・ダニエレ、ディサント(株)代表取締役)は19日、「日伊フォーラム」(第11回)を5年ぶりにローマで開催した(2部構成で第1部のみオンライン配信も実施)。同フォーラムは日伊両国の参加者がさまざまな取り組みやイニシアチブについて紹介し合い、成功事例や課題へのソリューションの共有、相互交流を図るもの。
今回のフォーラムは、イタリア上院の後援とイタリア上院第9委員会の特別協力を得て、イタリア国立農業研究・農業経済調査機構(CREA)、イタリア農業連盟(CIA)との共催で実施された。イタリア農業連盟は食品生産者の業界団体で、イタリア農産物の日本での普及促進を図る覚書を日伊経済連合会との間で締結するなど協力関係にある。「日伊の農業の持続可能な成長の方法と成果」というテーマで、食料安全保障や気候、環境保護、地政学的問題、世代交代などといった日伊両国が共通して抱える課題に焦点を当てて発表、議論が行われた。
第1部の開催に先立って、両国の国会議員や各組織の代表らが挨拶を行った。イタリア上院第9委員会(工業、商業、観光、農業、アグリフード) のルカ・デ・カルロ委員長は、「政府が取り組んできた新しいゲノム編集技術による進化支援植物(TEA)、土壌を守ること、炭素クレジット、若手の農家育成と世代更新などの重要な問題についての議論や成功事例を国際レベルで共有することは、新たな刺激や有益な取り組みを前進させる可能性を高め、我々の農業をより良くする」「日伊フォーラムのような機会は、9月にシチリア島で行われるG7農業大臣会合を視野に入れる際、重要な役割をもつ」と述べ、同フォーラムの意義について強調した。イタリアは今年のG7サミット議長国。
ディサント日伊経済連合会会長も、「今日の不安定な世界情勢において、食料安全保障を確保する農業システムを築くことは、地理的に離れているが共通点の多い社会・経済的システムをもち、人口の高齢化、世代交代など共通した課題を持つ日伊両国の政治的優先事項となっている」と、日伊が連携して取り組むことへの意気込みを語った。
クリスティアーノ・フィーニ・イタリア農業連盟会長によると、日伊の貿易は第1次産業において強く、イタリアの農産物輸出の20%が日本向けという。フィーニ会長は「若い世代に農業の魅力を伝えるため、専門知識の付与、デジタル化、研究などに重点を置く革新的なソリューションの共有に期待する」と協力への意欲を示した。
滝波宏文参議院農林水産委員長、鬼木誠防衛副大臣、ジャンルイジ・ベネデッティ在日本イタリア大使、大塚建吾在イタリア日本国大使館公使、アントニオ・バリーレ・イタリア東洋商工会議所会頭などもそれぞれも挨拶を行い、農業や担当分野での日伊協力について述べた。
日伊での取り組み紹介に関しては、品種改良の事例と成果、農業の現況、土壌・植物栄養学(肥料学)を通じた日伊協力について日伊両国から発表が行われた。品種改良について、新しいゲノム編集技術による進化支援技術と呼ばれる遺伝子改良をめぐって、日本は同技術により栄養価の高められたトマトを市場に出した最初の国であることなどが紹介された。
また、農業の現況について、気候変動への対応、生産コスト増加による経済的持続可能性への不安、農村部活性化や若手農家育成のためのスマート農業やデジタル技術など、農業事業者の付加価値の向上を目指す国際レベルでの交流の重要性が改めて強調された。
土壌・植物栄養学を通じた協力について、日本は米の自給率が100%でイタリアはEUで水田の面積が最大という特徴を有しており、幅広く連携を進め、農業生産性の向上と環境負荷の低減を通して、経済発展と食料と環境の安全保障に寄与していくことへの抱負が語られた。
最後に田中雅敏日伊経済連合会副会長(明倫国際法律事務所代表弁護士)が、挨拶を行った。田中副会長は自身が知的財産権の保護に関わった「あまおう」や高い収入を得ている北海道の農家の事例について触れたうえで、「農業は決して労働集約ではなく知識集約であり、付加価値を高め競争力をつけていくことは必ずできる。日本とイタリアが協力することによって、近く100億人に達する世界人口を支え、付加価値を付けて高い収益を得ることで農家そのものも持続させていく取り組みにつなげていくことができれば」と協力の意義について語った。そして「日伊経済連合会として、両国の団体、自治体、企業などと協力し、G7や2025年大阪万博も視野に入れ、相互交流とビジネス支援の新たな機会を創出できるよう取り組みたい」と述べ、第1部を締めくくった。
第2部では、日伊の農業の未来を担う両国の青年農家グループが対面し、事業付加価値を高めるためのイタリアの取り組みを紹介するセミナーと、農業分野における振興と持続可能化のための情報を交換するディスカッションを行った。
イタリア国立農業研究・農業経済調査機構公式YouTubeチャンネルにて同フォーラム(第1部のみ)を視聴できる。
【茅野 雅弘】
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