2024年12月21日( 土 )

鉄道事業再構築協議会と芸備線の備後庄原~備後神代間の活性化(中)

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運輸評論家 堀内 重人

 芸備線は広島~備後神代間を走行する路線であり、広島県と岡山県に跨っている。そのなかでも、備後庄原から備後神代間は、1日当たりの輸送密度が48名と極端に低いことから、日本で最初に「鉄道事業再構築協議会」が設置された。広島県と岡山県、庄原市と新見市だけでなく、国やJR西日本が加わって、芸備線の活性化を目指すか、バスへの転換を目指すかを、原則として3年以内に結論を出すことが求められている。芸備線は、長大なローカル線でもあることから、バス化してしまうと沿線地域に与える影響が大きい。鉄道として活性化させる方法を模索する。

芸備線の現状

 かつての芸備線は、広島~米子間に木次(きすき)線を経由する、急行「ちどり」が運転され、広島~備後落合間に急は行「たいしゃく」が運転されるなど、陰陽連絡や都市間連絡の機能も担っていた。その後、高速道路の整備や国道の改良、モータリゼーションの進展、過疎化の進展に急行型車両の老朽化も加わり、急行列車は廃止された。

 現在の芸備線は都市間連絡の機能は有しておらず、志和口までは広島都市圏であるため運転本数も多く、オフピーク時であっても大型の気動車が2両編成で運転されている。そして三次までは、1時間間隔で運転されるが、三次~備後落合間は普通列車が6~7時間程度、運転間隔が開くこともある。

写真1 備後落合駅
写真1 備後落合駅

    備後落合(写真1)は、かつて機関区があったことから、ダイヤは備後落合で乗り継ぐようになっている。だが広島~備後落合間は広島支社の管轄、備後落合~備後神代間は岡山支社、備後落合で分岐する木次線は山陰支社の管轄であり、備後落合を跨いで運転される列車はなく、全列車が備後落合で乗り換えとなる。

写真2 新見駅
写真2 新見駅

    極端に輸送密度が低い備後落合~東城間では、1日当たり上下3往復しか列車が設定されていない。備後地区の中心地は東城であり、東城駅の裏側には大きな病院があるだけでなく、駅前には広島へ向かう高速バスが発着している。東城~備後神代間では、2~3時間に1本の列車頻度だ。芸備線の終点は備後神代であるが、全列車が新見まで直通運転される。

 新見(写真2)は、伯備(はくび)線だけでなく、姫新(きしん)線とも接続しているうえ、特急「やくも」、「サンライズ出雲」と接続すれば、岡山や京阪神、中京地区だけでなく、東京や横浜へ向かうことが可能である。

芸備線の備後庄原~備後神代間の活性化策

 協議会で、存続させるかバス転換を実施するかを議論する区間は、備後庄原~備後神代間の68.5kmであるが、列車は新見まで直通していることから芸備線の実質的な終点は新見である。

 芸備線の備後庄原~備後神代間を活性化させるには、先ずは備後庄原~新見間に快速列車を設定して、新見で特急「やくも」「サンライズ出雲」と接続させることで、新たな需要を開拓させるべきだ。

写真3 東城駅近くの病院
写真3 東城駅近くの病院

 次に、木次線からの列車はすべて備後落合止まりとなっているが、これを東城まで延長運転させることで、木次線の出雲坂根駅付近から東城へ向けた通院の需要(写真3)だけでなく、高速バスに乗り換えて広島へ向かう需要も開拓が可能となる(写真4)。

写真4 広島行き高速バス
写真4 広島行き高速バス

 備後落合は鉄道の結節点になっているが、駅周辺に集落もなければ高校もなく、病院もないうえ、広島を結ぶ高速バスだけでなく、地域内の路線バスも乗り入れておらずタクシーすら満足に待機していない。そのようなこともあり、備後落合は無人駅であることはいうまでもなく、1日当たりの乗降客数は18人と非常に少ない。 それゆえ、いつまでも備後落合にこだわっていては芸備線の備後庄原~備後神代間は、活性化しない。それよりも東城を拠点としたダイヤに組み替えなければならない。

(つづく)

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