2024年11月25日( 月 )

八女市議会、ハラスメント条例を求める市民の声を潰す動き

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 東京都の小池百合子知事が、顧客からの理不尽な要求といった「カスタマーハラスメント」を防ぐため、条例の制定を行うことを表明するなど、現在、日本社会におけるさまざまなハラスメント行為に対する対策が急務となっている。

請願を継続審査に持ち込みたい市議

 首長や議員によるパワハラやセクハラ、モラハラの話は取材でもたびたび耳にし、当事者は泣き寝入りを強いられている現状があることも聞いている。

 そうしたなか、八女市や久留米市など筑後地区の住民から八女市議会に「あらゆるハラスメントの防止を求める条例制定を求める請願」が提出された。3月定例会において総務文教委員会(服部良一委員長)に付託され、3月6日に請願人からの意見陳述や討論、採決が行われることになっている。

 ところが、請願に対して所管の総務文教委員長が「継続審議にしたい」と議会内への根回しを進めていることが分かった。

 請願内容は、「公共性の高い場におけるハラスメントの横行は、行政・議会などの公共機関に対する市民からの信頼を失うことにもつながり、現場で働く職員の士気の低下などの影響は大きい」と指摘し、福岡県内においては「県議会が『福岡県における議会関係ハラスメントを根絶するための条例』を制定し、県下の市町村議員を対象に研修会を開催する」などハラスメント防止の取り組みを行っていることに言及している。

 そのうえで「ハラスメントは、人権問題であるとの認識に立って対市民を含めた『あらゆるハラスメント』の防止が必要」であり、八女市においても県条例に倣って条例制定を行うよう求めている。議会として可決して問題はない内容である。

 八女市に限らず地方議会においては、組織風土的に、職員や市民を大声で威圧したり、威圧的態度をもって行政に要求を飲ませる議員が少なからず存在していることは事実だ。このようなハラスメントがまかり通る議会の現実があっては、女性や若者の政治参画は進まない。今回の請願の趣旨は、そうした悪しき空気の是正に向けた動きであり、政党や思想的立場を超えて賛同できるはずだ。

 ところが、何が気に入らないのか、八女市議会では、同請願の継続審議をもくろむ総務文教委員長に同調する議員もいるようだ。

 このような動きに対してある市議は「県議会と市議会は違うと考える議員もいるようですが、同じです。宮若市の首長のパワハラ疑惑などが全国で問題となるなか、八女市議会も請願に反対したら全国から非難されます」と一部議員の動きを懸念する。

職員に対するハラスメント防止研修

 3月定例会には、執行部から八女市人権・同和啓発センターの設置に関する条例案と予算が提案されている。ハラスメントは人権問題であり、市民の相談を受けるべきものだ。

 法務省人権擁護局は、女性や子ども、外国人など17項目の人権課題を例示している。セクハラやパワハラは人権侵害であるとして、全国の法務局に相談窓口を設置しているが、筑後市の鶴ゆきこ議員は「法務局では議会のハラスメントは対象外だった」と語る。福岡県議会が条例を制定したのは、議会内や選挙におけるハラスメントを防止する必要性を、党派を超えて理解したからだ。

 行政の現場においては、議会に先行してハラスメント防止の取り組みが行われている。福岡県内全市町村が参加し設立された「福岡県市町村職員研修所」では、ハラスメント防止研修を県内の市町村職員(会計年度任用職員を含む)を対象に実施している。

 また、全国の自治体職員が加入する自治労は、2021年に総合労働局が予防・解決マニュアルを作成し、福岡県本部のホームページ上でも公開しており、自治労に加入する宮若市職員労働組合は塩川秀敏市長のハラスメント行為を調査するなど、職場におけるハラスメントをなくすための取り組みが行われている。

 自治体職員は任命権者である首長や上司だけでなく、議員との関係においてもハラスメントを受けることがある。

 昨年6月にハラスメント防止条例を施行した千葉県柏市は、女性職員が議員から「子どもは生まないのか」「交際相手はいるのか」など尋ねられるなど、プライベートに立ち入る言動や、長時間の叱責などを受けることが問題となっていた。

 地方議会が、ハラスメント防止に背を向けるようでは、市民に示しがつかない。11月には八女市長選挙も予定されている。人権尊重を謳う八女市は率先して、議会ハラスメント防止に取り組んでいただきたい。

【近藤 将勝】

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