コロナ禍に拠点倍増、九州地場サブコンの採用戦略(前)
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尾園建設(株) 常務取締役 松本 貴志 氏
工事部長 兒玉 裕介 氏躯体工事・尾園建設(株)はコロナ禍の2021年、九州内で4つの支店を新設するなど拠点拡大を図り、23年6月期には売上高50億円(グループ完工高60億円)を計上した。事業拡大する同社の常務取締役・松本貴志氏および工事部長・兒玉裕介氏に、業界環境の現状や職人不足への対応策などについて話を聞いた。
拠点増設で機動力上昇
──コロナ禍の2021年に大きく拠点数を増やしました。
松本 当社は本店がある福岡市のほか、北九州営業所、熊本支店、鹿児島支店、関連会社の南九州尾園建設(株)がある宮崎市に拠点を構えていましたが、21年に日向(現・宮崎)、延岡、長崎、大牟田の4支店を開設しました。九州各地に8つの拠点を構える地域に根差した会社として、九州全域を営業エリアとしています。
兒玉 当社の強みの1つは、九州圏内の現場でお声がけいただければ、すぐに対応できる「機動力」です。各地に拠点を構えていることで、元請会社や協力会社とのコミュニケーションが深まるほか、それぞれの会社の動向もわかりますので、いざ仕事が始まるとすぐに対応することができます。4支店を開設するまでは、受注するたびに近隣の支店から社員を送っていましたが、支店開設によりさらに機動力が強化されました。社員数は全体で150名を超えており、常に80~100現場を同時進行している状況です。
松本 自社で躯体一式工事を完遂できることも強みの1つです。当社はとび・土工工事業を主体としていますが、鉄筋部・土木部も設けており、ワンストップで躯体工事を行うことが可能です。
──22年11月には国土交通省から、建設業の担い手の確保および育成に積極的に取り組む企業として、優秀賞を受賞されました。
松本 国土交通省と建設産業人材確保・育成推進協議会(事務局:(一財)建設業振興基金)から優秀賞を授与されました。建設キャリアアップシステム(以下、CCUS)については、協力会社向けの年2回の説明会の実施や、加入後の継続的なフォローや入職者確保のための学校訪問、年間休日増加などの7項目で高い評価をいただきました。大変ありがたいことで、励みになります。
──業界環境の現状および見通しはいかがでしょうか。
松本 やはり福岡はじめ九州は活況ですね。福岡では天神ビッグバンや博多コネクティッド、熊本ではTSMC工場などあります。当社でも天神ビジネスセンターや福ビル、TSMCなどの大型工事に携わりました。また、物流倉庫新設も数多く予定されており、物件の大型化が進んでいると実感しています。現在事業者選定中の九大跡地も、再開発が始まるとより活気が出てくるでしょう。さらに、春日基地は終わりましたが、馬毛島の基地関連をはじめ、新田原基地など防衛関連工事も増えてきています。これから数年は、忙しい時期が続くでしょう。
在籍社員が誇れる魅力ある会社へ
──「2024年問題」を含めた職人不足への対策をお聞かせください。
松本 当社でも内勤社員の増員をはじめ、環境整備に取り組んでいます。4週8休を目指していますが、現在は4週6閉所が総現場数の40%ぐらいでしょうか。4月から新しく始める現場については、各ゼネコンも4週8閉所での計画を出してくると思いますが、現在継続している現場については工期の面で難しく、「閉所はせずに職人を休ませてくれ」という要望が元請からあると思います。残業についても同じことがいえます。要望に応えるためには、代わりの職人ならびに職長を入れないといけません。
兒玉 採用にはとくに力を入れています。ですが、建設業と他産業を比べると、建設業のほうがやることは大変なのに、給料面や休暇面、さまざまな面で追いついていないのが現状で、このままでは若い人が入ってきません。当社はいわゆるサブコンですが、業界に先駆けて労働環境を改善していかなければならないという、当社代表・尾園の強い思いがあります。九州ではTSMC関連や旭化成、キヤノンの工場などが新設・増設されており、建設業界活況の要因にもなっていますが、採用面ではそれらの業種と戦わなければなりません。
──そのようななかでも、毎期一定数の新入社員を獲得されています。
兒玉 例年、8名から10名の新卒社員に入社してもらっており、今年4月も5名の入社を予定しております。他産業や同業他社と比較して当社を選んでもらうために、「給料面」「休日」「アプローチ」が大事だと考えています。当社は主に高校生を対象に求人を行っていますが、初任給については5年前ぐらいから徐々に上げており、大卒の初任給並みの水準になっています。それにともない、在籍社員の給料もベースアップしています。
松本 来年度からは、男性社員の育児休暇制度も開始するほか、待遇向上に努めていますが、建設業界におけるもともとの給料面や休日面の条件が悪かっただけで、普通の水準に戻っただけだと考えなければならないでしょう。
新規採用では、入職者確保のために九州各県の学校訪問を毎年約30校行っており、ここにはとくに力を入れています。当社には工業高校卒業生が多数在席しており、学校訪問の際にはそれぞれの母校に一緒に行ってもらっています。在学当時の先生に、会社・仕事の面で良い面および悪い面を率直に話してもらうなど、近況報告を行っています。先生方も、「あの子も今こうやって頑張っているんだな」と喜ばれます。やはり卒業生を同行させると、学校側の受け取り方も随分違いますね。ほかにも、社員の後輩にあたる在校生も、「先輩と一緒に働きたい」と申し出てくることも少なくありません。私も入社後、母校に連れて行かれ、先生にありのままを話したことを覚えています。その後、母校からの卒業生の入社が5年ほど続きました。現在も継続的に入社しております。社員が友人を誘ってくるケースもあり、嬉しく思います。
現在働いている職人や社員に、当社の魅力的をいかに伝えるかが最も重要だと考えています。
(つづく)
【内山 義之】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:尾園 浩範
所在地:福岡市博多区博多駅南6-15-21
創 業:1962年
設 立:1966年2月
資本金:1億円
URL:http://ozono-kk.jp
<プロフィール>
松本 貴志(まつもと・たかし)
1974年、福岡県出身。92年に九州産業大学付属九州産業高等学校・建築科卒業後、尾園建設(株)に入社。とび工としてさまざまな現場にて経験を重ね、2022年、常務取締役に就任。趣味はゴルフ。兒玉 裕介(こだま・ゆうすけ)
1982年、宮崎県出身。2001年に日向高等学校卒業後、2年間、尾園建設(株)の協力会社に勤務の後、03年に尾園建設に入社。宮崎県を中心に現場職長を担い、グループ会社である南九州尾園建設(株)を経て、現職。趣味はスポーツ観戦。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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