ワンヘルスを万博通じて広めたい、シンポジウムで蔵内FAVA会長ら語る
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「大阪・関西万博」の来年4月開催に向け、福岡市の福岡市科学館で「ワンヘルス、いのち輝く未来へ」と題したシンポジウムが2日、開催された。
福岡県として万博に出店
主催は、内閣官房国際博覧会推進本部事務局。主催者代表として、自見英子担当大臣がビデオメッセージを寄せた。
自見大臣は「大阪万博は、コロナ禍を超えた世界で初めての万博になる」としたうえで、「ポストコロナの時代に求められる社会像を世界とともに提示していく場所となる」と語った。また「万博が掲げているテーマとワンヘルスは極めて親和性が高い」、「福岡県によるワンヘルスの取り組みが万博という機会をとらえて、加速化するキックオフの場となることを祈念している」と述べた。
開会挨拶に立った服部誠太郎福岡県知事は、「福岡県においてもワンヘルスをテーマにした万博への出展を計画しており、それを通じて世界に向けてワンヘルスの理念と実践を発信していきたい」と述べた。
そのうえで「人の健康、動物の健康、人と動物が共に暮らす地球の健全性、この3つを一体として守っていくことがワンヘルスの理念である」と述べ、「3年以上、新型コロナウイルスのパンデミックに苦しめられた。これは動物由来の感染症であるが、感染症の6割が人獣共通感染症でもある。ワンヘルスは次のパンデミックに対する備えとしても極めて重要」と、ワンヘルスの取り組みの意義を語った。
来賓として香原勝司福岡県議会議長、秋田章二ワンヘルス・地方分権等調査特別委員会委員長が紹介された。
その後、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサーを務める宮田裕章慶應義塾大学医学部教授がプレゼンテーションを行った。宮田氏は「万博を行う意味合いがかつてとは変わってきている。情報革命はSNS、スマホから派生しているが、社会の在り方が根本的に変わるときに必要なのは技術を使うだけではなく、ビジョンを持ち寄りながらどう未来につなげていくのか。万博が必要な理由はここにあるといって過言ではない」と万博開催の必要性を強調した。
感染症以外でのワンヘルスの重要性
パネルディスカッションは「ワンヘルスと万博、その先にある未来社会」をテーマに行われた。宮田氏のほか、日本医師会名誉会長・横倉義武氏や、アジア獣医師会連合(FAVA)の蔵内勇夫会長、福岡を拠点に活動しているアイドルグループ「HKT48」の豊永阿紀さんが登壇した。
横倉氏は、「幸福な生活を指す概念としてWell-beingという言葉があるが、最初にWell-beingという言葉が使われたのは1947年に採択された世界保健機関(WHO)憲章の前文である。感染症ばかりでなく、非感染性疾患であるがんや生活習慣にともなう高血圧や糖尿病などさまざまな問題があるが、非感染性疾患を克服するためにもワンヘルスは非常に重要」と指摘した。
蔵内氏は、横倉氏と同じ福岡県南出身であり、長い交友関係にあることに言及した。「ワンヘルスは1つの国だけではだめだ」と考え、横倉氏の協力のもと、世界医師会・世界獣医師会に発信を行い、昨年8月、アクロス福岡に「FAVAワンヘルス福岡オフィス」を開設するなどの経緯を語った。
さらに「人獣共通感染症が発生するのは世界のなかでもアジアからである」と警鐘を発したうえで、「アジアにワンヘルスを広めていく必要がある。さらに、世界中から人が集まる万博を通じてワンヘルスを広めたい」と決意を語った。
討論において、今後、どのような社会や人の在り方が求められているのかについても、議論が展開された。
宮田氏は、貧困を含めた多様な人たちにどう寄り添うのかと問題提起したうえで、「日本においては、平均的な生活から外れた途端に厳しくなる」と現状を指摘し、「シングルペアレンツ(片親)の貧困率がOECDのなかで日本はワーストで、病気になると生活が成り立たない」ことを憂慮した。
豊永さんは、自身について「より良い生き方を選択している若者なのかなと思いつつ、周りを見てみると、モノが豊かな土壌で育っているからこそ、自分でより良いものを見つけることに難しさを感じている。生活が豊かでないと心も豊かにならない」としたうえで、「現代の若者にとって難しい社会なのかなと思う」と理想と現実の狭間で苦悩する心情を語った。
会場には政府関係者や、県議、市町村議員のほか、獣医師会関係者やワンヘルスに関心を寄せる市民など300人が集まり、熱心に討論に耳を傾けていた。
【近藤 将勝】
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