2024年11月30日( 土 )

能登半島地震による輪島市の復旧状況(5)

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運輸評論家 堀内 重人

 元旦の午後4時10分に発生した直下型地震の能登半島地震。気象庁の発表では、この地震のマグニチュードは7.6であり、内陸部で発生する地震としては日本でも稀な大きさの地震であったという。3月10日時点の輪島市の交通インフラやライフラインの復旧状況を中心に、現状を報告したい。

情報通信(1)通信サービス

 携帯電話の基地局は1月3日時点で、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク・Y!モバイルを合わせて839局が電波を送信できない状態になった。固定電話では同6日時点でNTT西日本とソフトバンクで、設備故障などの影響で石川県内の一部で障害が発生した。それ以外に、NTT西日本では3日頃から、通信設備において商用電源の未復旧と非常用電源の枯渇により、能登地方の一部で回線の利用が不可能となる地域が発生した。

 また非常用電源によるサービス提供を行っているエリアは、枯渇による影響範囲が拡大する可能性があった。携帯電話は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの大手4社が停電などの影響があり、能登地方を中心として石川県や新潟県で障害が発生した旨を報告した。3日の時点でも、能登地方や新潟県の一部で障害が継続した。

 2月21日時点でも、輪島市の一部で、固定電話370回線などが引き続き利用不可能な状態となっていた。同月27日には、携帯電話大手4社のなかでソフトバンクが、携帯電話が使用できない基地局が残っている被災地全域において衛星通信などを利用するかたちで復旧を完了した。今後は、これを契機に携帯電話は基地局ではなく、今後は衛星を活用した通信が普及するかもしれない。

 通信各社は、被災地の住民の通信料金(固定電話・携帯電話)に対し、支払期限の延長や減免、使用限度量の増量などの応急処置を講じた。

情報通信(2)公共放送

 石川県の一部では、中継局への燃料供給が途絶え、かつ非常用バッテリーが枯渇したため地上波テレビ、ラジオが放送停止した。

 「ラジオは時代遅れな公共放送である」という人が多いが、地震などの自然災害で被災すると、テレビは電気が来ないと視聴することができないが、ラジオは乾電池でもニュースなどを視聴できるため、被災地の人が情報を得るのに適した公共放送である。また器用な人であれば、コイルとバリコン、ダイオードを組み合わせて、ゲルマニウムラジオを組み立てられる。ゲルマニウムラジオは、電池がなくても稼働するため、イヤホンがあれば聴くことが可能である。

 だが今回の地震では、非常用のバッテリーも枯渇してしまったため、ラジオ放送も停止する事態となった。

 そこでNHKは1月9日の午後6時より、BS衛星放送の空きチャンネル(BS103)を使用して、地上波のニュース番組や地震関連情報の放送を開始した。なおNHKは、被災地周辺で稼働できるヘリコプターがなく、かつ東京拠点のヘリコプターにエンジンのトラブルがあり、現地で空撮ができなかった。そこで視聴者の投稿映像が、頼みとなっていた。

 多くの放送局は、石川県に関しては、県庁所在地である金沢市にしか本拠地がなく、道路などが被災しているため、能登半島の被災地に向かうことが難しかった。その上、能登半島に本拠地を置いていた地元の放送局も、施設自体が被災したことから、報道が難しい状況となった。

 このような場合は、被災地の方がYouTubeで被災情報をアップロードして、配信することも今後は検討する必要があるかもしれない。

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 3月10日、金沢から鉄道と路線バスを乗り継いで、輪島市に到着した。輪島市に近づくにつれ、能登半島地震の被害が顕著になった。市内には、倒壊した家屋などを目にするようになり(写真12)、心苦しい思いがした。かつての輪島駅のあった場所の傍にある「輪島ステーションホテル」などは、建物の一部が倒壊するなどの被害があった。

写真12
写真12

 のと里山海道の一部はいまだ復旧していなかったが、高速バスに乗車すれば、金沢まで片道2時間強で到着するなど、徐々にではあるが、復旧へ向けて動き出している様子が感じられた。1日も早い全面復旧を願っている。

(了)

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