2024年12月27日( 金 )

財務省に騙されてはいけない

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「最低所得水準引き上げのための政策を断行するべきだ」と訴えた3月23日付の記事を紹介する。

2021年9月の自民党総裁選で岸田首相は「分配問題が重要」と述べた。その通りだ。しかし、岸田首相は本当に何もしていない。

失われた30年と呼ばれる日本経済の長期低迷期。日本経済は成長力を完全に失った。諸外国と比較すれば、日本の低迷、停滞は鮮明だ。

ドル表示の名目GDP。1995年を100として2022年にどれだけの水準になったか。米国GDPは333に拡大した。中国GDPは2447になった。24倍の規模に拡大したのだ。

日本は76に縮小した。2022年の日本の名目GDPは1995年の4分の3に縮小した。2022年の国税庁民間給与実態調査。1年を通じて勤務した給与所得者。その51%が年収400万円以下。21%が200万円以下である。

OECDが公表する平均賃金水準。こちらは購買力平価換算だ。円安でドル表示価格が小さくなる影響を取り除いてある。先進5カ国と韓国の6カ国での比較。1991年に日本は米国、ドイツに次いで6カ国中第3位だった。2022年の順位は6カ国中第6位。最下位だ。

2022年の内閣府年次経済財政報告。世帯所得の中央値は1994年に505万円だったが2019年には374万円になった。131万円も減った。

労働者1人あたりの実質賃金は1996年から2023年までの27年間に17%も減少した。最近では22カ月連続で前年同月比割れである。他方で大企業は史上最高益を更新している。株価が上昇しているのは企業利益拡大を反映するもの。株価上昇は労働者分配所得減少という「犠牲」の上に成り立っている。

日本はかつて一億総中流と呼ばれた。中間所得者層が分厚い分配構造を有していた。ところが、市場原理にすべてを委ねる経済政策が推進されて、世界有数の格差社会に移行した。真面目に一生懸命働いても年収が200万円に届かない人の比率が2割を超えている。

生産活動の結果として生み出される果実をどのように分けるか。これが分配問題だ。これを是正すべきことは当然である。最重要の課題は、最低所得水準を引き上げること。これが分配問題の中核なのだ。

岸田首相は「賃上げ、賃上げ」と叫ぶが何も解決しない。現在の状況で賃上げできるのは力の強い大企業だけ。力の弱い中小企業は賃上げどころの状況にない。結果として何が起こるのか。格差のさらなる拡大だ。

※続きは3月23日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「財務省に騙されてはいけない」で。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

関連記事