2024年11月21日( 木 )

【特別対談】福岡・西中洲にヒカリ、まちをつくる地元の力とは(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)LANDICホールディングス
代表取締役社長 兼 グループCEO 中山 朋幸 氏
(株)サエキジャパン
代表取締役   佐伯 岳大 氏

コロナ禍の中洲に光を

 ──福博であい橋のシンボルツリーに代表される「ナカス ヒカリノ アドベント」のイルミネーションですが、2023年も引き続きLANDICがメインスポンサーを務められました。

(株)LANDICホールディングス 代表取締役社長 兼 グループCEO 中山朋幸 氏
(株)LANDICホールディングス
代表取締役社長 兼 グループCEO
中山 朋幸 氏

    中山 最初に佐伯社長とお会いしたのは21年でしたね。コロナ禍に中洲・西中洲を盛り上げるイルミネーションをやるということに共感したのを覚えています。当社は中洲5丁目に本社を構えており、オフィスからは中洲・西中洲を臨むことができます。あれだけ観光客らで賑わっていた明治通りがコロナ禍で閑散としている状況で、当社としても何かできないかと考えているところでした。

 佐伯 コロナ禍の当時、中洲は非常に厳しい状況でした。それまで、クリスマスマーケット(現・クリスマスアドベント)を中洲でやろうという発想はなかったのですが、何か自分にできることはないかと考えたときに、やっぱりクリスマスを通した取り組みだな、と。コロナ禍で大きな打撃を受けた中洲に希望の光を灯そう、というのがナカス ヒカリノ アドベント(当時、ナカス キボウ ノ ヒカリ)のテーマでした。

 2年目の21年、これをさらに拡大したいとお世話になっている先輩経営者に相談したところ、それならと中山社長をご紹介いただいたのが、お会いすることとなったきっかけです。中山社長とのミーティングを重ねた結果、博多区と中央区、中洲と西中洲~天神をつなぐ福博であい橋に光を灯そうということになったのです。ナカス ヒカリノ アドベントでは、福博であい橋の真ん中の大きなツリーがシンボルとなっていますが、このアイデアも中山社長へのプレゼン機会がなければ思い浮かばなかったと思います。

 中山 当社では貴賓館の南側でホテル開発を計画していたのですが、コロナ禍となったことでプランの見直しを行っているところでもありました。貴賓館がある西中洲の天神中央公園は、行列ができる飲食店がいくつかあり、人が集まるカルチャーは定着してきたものの、公園を楽しむカルチャーはまだなかった。そこに、公園を楽しめるイルミネーションをもってくるということで賛同し、「一緒に光を灯そう」ということになりました。

    佐伯 コロナ禍はクリスマスアドベントも非常に厳しい運営環境だったのですが、博多や天神という会場ごとではなく、福岡のまちがつながるきっかけをコロナ禍にはもらった気がします。それまで、イルミネーションのみの取り組みは考えもつきませんでしたが、結果的に博多駅や天神などの会場をつなぐ重要なポイントとなりました。

ナカスヒカリノアドベント 福博であい橋のシンボルツリー
ナカスヒカリノアドベント 福博であい橋のシンボルツリー

まちの体験価値を高める

 ──飲食、物販がないナカス ヒカリノ アドベントが、結果的にクリスマスアドベント全体に人の流れをつくったということですね。福岡・美野島のL+(LANDIC DESIGN STUDIO)もコロナ禍の開業でした。

 中山 クリスマスアドベントは博多と天神だけではなく、福岡が一体となるとても裾野が広いすばらしい取り組みです。直接マネタイズできる事業だけでなく、まちづくりやコミュニティをつなぐ事業をつくっていかないといけない、佐伯社長に出会ったのはそういう思考に切り替わったタイミングでもありました。お話をうかがって思い出したのは、阪神・淡路大震災後に見た神戸ルミナリエでした。イルミネーションで明るく照らされ、人でごった返す神戸のまちに感銘を受けたのを覚えています。また同時に、ナカス ヒカリノ アドベントがそういったものになる可能性を秘めていると感じました。コロナ禍に開業した福岡・美野島のL+も、まちとまちをつなぐというアプローチはナカス ヒカリノ アドベントに近いものがあります。

(株)サエキジャパン 代表取締役   佐伯岳大 氏
(株)サエキジャパン
代表取締役   佐伯 岳大 氏

    佐伯 まちの体験価値を高めるために何をすればいいのか、そういう点で中山社長からは多くのものを学ばせていただいています。私は、クリスマスを通じて福岡を魅力あるまちにして、みんなに楽しんでもらいたいという一心でクリスマスアドベントに取り組んでいます。そういった意味でも、L+は興味深い取り組みです。天神や博多ではない場所で人を惹きつけ、実際に人を集めている。美野島のL+はリニューアルを控えているとお聞きしています。

 中山 4月から着手して、秋ごろには新たにSunday Bake Shopさまご協力の下、リニューアルオープン予定です。Sunday Bake Shopは東京・幡ヶ谷の閑静なまちにある焼き菓子店で、私も実際に足を運んで食べてみたのですが、おいしいのはもちろん、使っている材料や商品に対するオーナーの考え方などに非常に共感しました。何より、Sunday Bake Shopがあることで、幡ヶ谷のブランド価値が上がっているように思えました。

 ──まちのブランド価値とは、どういったものを指すのでしょう。

 中山 まちのブランド価値は、人がつくっていくものです。たとえば、Sunday Bake Shopができることで、おいしくて、使っている素材が良くて、環境にも良い、そういったものが意識の高い人だけではなく、一般の人にも広まっていく。これが重要なのです。バタフライ効果のように、まち全体に環境への配慮が進んでいき、まちのブランド価値が上がっていくのです。だからといって、コンビニ弁当は悪だとかそういうことになってはいけなくて、知識を得ることでいろいろな選択肢をもつことができるようになる、そういう人が増えることで、環境が良くなっていく。L+は見て楽しい、食べておいしい、写真に映えるだけじゃなくて、いろいろなワークショップなども通じて、知識や新たな価値観を得られる場所にしていきたいと考えています。

 佐伯 環境配慮という意味では、実はイベントというのはすごく無駄が多いんです。イベントは、終了後に多くのゴミを出します。まちを盛り上げるためにクリスマスアドベントをはじめとした季節の風物詩が必要だと思って、我々は取り組んでいるのですが、中山社長がおっしゃるように環境への意識も欠かせません。当社が関わっている福岡ボルドーワイン祭りでは、プラカップのゴミが出ます。これも何かに活用できないかと考え、子どもたちとワークショップを行うことにしました。ワークショップでは、プラカップにメッセージを書いて、照明をつけて、クリスマスツリーをつくり、クリスマスアドベントで天神中央公園に飾りました。また、昨年はビーチクリーン活動を2回行い、集まったゴミでサンタクロースをつくり、こちらも飾りました。ゴミでつくったことに気づく人はなかなかいないかもしれませんが、こういった活動はしっかり発信していくことが重要だと思っています。

(つづく)

【永上 隼人】

▼関連記事
天神・博多・中洲と一線画す「西中洲」ブランドとは?(前)


<COMPANY INFORMATION>
(株)LANDICホールディングス

代 表:中山 朋幸
所在地:福岡市博多区中洲5-3-8 アクア博多6F
設 立:1993年12月
資本金:1億3,300万円(グループ合計)
URL:https://www.landic.com

(株)サエキジャパン
代 表:佐伯 岳大
所在地:福岡市中央区清川3-21-10
設 立:2007年8月
資本金:300万円
URL:http://saekijapan.jp


<プロフィール>
中山 朋幸
(なかやま・ともゆき)
1967年3月17日生まれ、福岡市出身。マンションデベロッパー勤務を経て93年12月に(株)ランディック(現・(株)LANDIC ホールディングス)を設立。代表取締役に就任した。22年5月には、マンションデベロッパーの団体である(一社)九州住宅産業協会の副理事長に就任した。

佐伯 岳大(さえき・たかひろ)
1981年4月1日生まれ、福岡県鞍手町郡出身。2007年8月、(株)サエキジャパンを設立。13年からは、「福岡クリスマスマーケット(現・クリスマスアドベント)」を主催。総合プロデューサーとして、クリスマスアドベントを福岡の冬の風物詩にまでつくりあげた。

(後)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事