2024年11月23日( 土 )

中国発の市況悪化で苦しむ韓国石油化学業界(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

窮地に追い込まれている韓国の石油化学業界

 半導体、鉄鋼とともに韓国の輸出の大きな柱の1つであった石油化学業界に危機が訪れている。一時期、韓国の石油化学業界は中国への輸出などで韓国の輸出産業を支えていた。しかし、数年前から収益が悪化し、業界大手は赤字額を拡大させている状況だ。

 LG化学、ロッテケミカル、大韓油化など韓国の化学大手はナフサを分解して化学原料を生産する事業を展開しているが、顧客であった中国が自前でナフサ分解の設備を導入し、自給自足するようになった。その結果、韓国のナフサ分解設備(NCC)の昨年の稼働率は74.0%まで落ちた(2021年:93.1%)。ちなみに業界では「稼働率が7割を割り込んだ場合、工場を売却した方がまし」だといわれている。

 石油化学業界で業況を判断する指標としてエチレンのスプレッドが使われている。エチレンのスプレッドは、エチレン価格から原料であるナフサの価格を引いて求めるもので、300ドル以上が、工場の損益分岐点となっているようだ。現在の数値は183ドルで、300ドルを大きく下回っており、工場を稼働すればするほど、赤字が膨らむ状況となっている。

 石油化学企業は、ナフサを熱分解して出てくるさまざまな基礎化学品を販売して収益を上げているが、ナフサとエチレンの価格を比較すれば、業界全体の好不況がおおよそ判断できるという。ナフサを分解する設備で、エチレンを生産しているLG化学とロッテケミカルはそのあおりを食って大変な状況となっている。

プラスチックの原料「ナフサ」

ナフサ イメージ    ナフサとは、原油を蒸留・分離した際に得られる石油製品の1つで、さらに熱分解を進めることで、さまざまな基礎化学品を取り出すことができる。ナフサをナフサクラッカーという装置で熱分解して気体化すると、その気体から、エチレンやプロピレンなどの基礎化学品が取り出される。エチレンやプロピレンを原料として、分子結合を行うことで、ポリエチレンやポリプロピレンというプラスチックがつくられる。

 ポリエチレンはレジ袋や包装材、シャンプーや洗剤の容器などに、ポリプロピレンは自動車部品や家電製品、包装用のフィルムなどに使用される。とくに、エチレンは合成樹脂や合成ゴムのコア原料でもある。そのため半導体よりも先に「産業のコメ」などと呼ばれたことがあった。なお、韓国はエチレン生産量の約4割を中国に輸出していた。

(つづく)

(後)

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