プラント足場に特化、創誠の魅力ある環境づくり
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(株)創誠
営業部長・一級とび技能士 前田 彰 氏日本全国を営業エリアとして、主に原子力・火力発電所などのプラントの足場設営工事を手がける(株)創誠。同社の営業部長・一級とび技能士の前田彰氏に、業界環境の現状や職人不足への対策などを聞いた。
強みはとび・土工一式とプラント足場
──御社の概要および強みについて、お聞かせください。
前田 当社は1997年2月に、長崎にて前田工業を創業したのが始まりです。前職の経験を生かし、当初は一人親方として始めましたが、その後徐々に社員を増やしていき、2005年6月に(有)創誠建設として設立し、11年4月に(株)創誠に組織変更し、福岡に移転しました。
現在、職人は8名。ここでいう職人とは職長を務めることができる人で、ほかに7名職人見習い・作業員がいます。うち外国人技能実習生は4名在籍しています。当社の特徴は、発電所などのプラント足場設置が8割、建築工事が1割、土木工事が1割の受注構成となっており、プラント系が圧倒的に多いことです。原子力発電所や火力発電所などは全国に点在しているので、それぞれの土地に協力会社や一人親方などが80名ほどいます。
強みは、とび・土工工事を一式で請けられることです。足場組立、鉄骨等の組立、重量物設置などのほか、クレーンの立て方や木造建築なども行います。オールマイティーといいますか、現場で即対応できますので、元請からも「複数社に頼まなくていい」と喜ばれています。
また、もともとは建築工事の下請を主体にしていましたが、11年頃からプラントの足場設営工事に主軸を移してきました。理由は労務単価の問題です。たしかに建築では、長崎に比べると福岡の労務単価は1人あたり2,000~3,000円は高かったのですが、問題は社会保険料や雇用保険料などの法定福利費が労務単価に含まれていることです。当社は株式会社に組織変更したころには、全社員が社会保険に加入しました。正直、負担を考えると厳しかったのですが、今後、社会保険に加入していないと入れなくなる現場が増えることを見越して切り換えました。とくにプラント関連は加入が必須となっています。プラント関連の良いところは、労務単価が建築と比べて2,000~3,000円高く、かつ出張費やガソリン代などの経費を出してくれるところです。また、支払サイクルも30日と建築に比べて早い。そのため、自ずとプラント関連が多くなりました。
足場の組み方も、建築とプラントではまったく異なります。建築では枠組み足場が主流となっていますが、プラントなどの複雑な箇所での工事の足場は、ほとんどで単管足場が用いられます。単管足場の特徴は、ほかの足場に比べて自由に組み立てることが可能で、足場設置箇所が狭い場合でも設置することが可能な点です。逆に、おおよそスパンや型が決まっている建築とは違い、管の長さもさまざまで、臨機応変さが求められます。さらに設計図もなく、現場ごとに毎回違うので、面白くやりがいはあります。
──業界環境の現状および今後の見通しについて、考えをお聞かせください。
前田 建築で見ると、とくに福岡都市圏は活況でしょう。プラント関連も大きな波はなく、安定している業界だと思います。原子力、火力、風力、バイオマスなどの発電所はなくなりません。というのも、生活するうえで電気はなくてはならないからです。現在は、メンテナンス工事がベースとなりますが、二酸化炭素の排出の問題もあり、LNGのガス基地やバイオマス発電、次世代発電として期待される水素や燃料アンモニアなど環境に優しい発電所への切り替えも、今後進められていくでしょう。
職人不足への対応策
──職人不足への対応をお聞かせください。
前田 全国にわたるプラント関連工事では、出向制度を取り入れています。社会保険や建設キャリアアップシステム(以下、CCUS)の加入が必須だからです。当社はもちろん加入していますが、協力会社には一人親方や小規模な会社が多く、すべてに加入しているかというとそうではありません。ですので、出向元と当社で雇用契約を締結し、働いてもらっています。在席出向と呼ばれるものです。
ほかには、外国人技能実習生の雇用も進めています。現在4名ですが、新たに2名の雇用を予定しております。しかし、原子力発電所での工事は、帰化もしくは永住権をもっていないと外国人は入れません。ですので、やはり日本人雇用が重要で、社員採用および出向制度をうまく活用していきます。
急がれる労務環境改善
──専門工事業を含む建設業界の課題について、お聞かせください。
前田 先ほども述べましたが、やはり労務単価と社会保険未加入問題が課題でしょう。プラント関連の現場では、社会保険加入は必ず必要です。しかし、建築工事の現場では、いまだに社会保険やCCUSに加入していなくても入ることができています。そうすることで労務単価を抑え、受注競争にも有利に働きます。つまり、きちんとしている企業が損をする仕組みが建設業の大きな課題です。安い労務単価では、いずれ職人は付いてこなくなるでしょう。その結果、職人不足となり、元請からの仕事の要請も断らざるを得なくなります。私は、なぜ下請―とくに二次下請以降を育てていこうとしないのか、不思議に思っています。
また、これは持論なのですが、建設業における年齢制限を見直してほしいですね。労働安全法では、満18歳に満たない者を危険な業務や重量物を取り扱う業務には就かせてはならない、高所作業に従事する年齢は18歳以上などの規定があります。実際に16歳や17歳の子たちが「働きたいです。一度使ってみてください」と言ってきたことがあります。本気で担い手を育てようと思えば、習得期間もですが、覚えの良い若いうちから教えることが大事だと思います。逆に、65歳以上は現場に入れません。手続きを踏めば65歳を超えても働くことは可能ですが…。70歳を超えても、まだまだ元気に働ける方はたくさんいます。今後ますます職人不足が加速していきますので、早期に年齢制限を見直してほしいです。
──専門工事業業界には今後、どういったことが必要だと思いますか。
前田 魅力のある環境づくりが必要だと思います。私もそうでしたが、若いころはいつか社長になりたいと思っていました。今でも、いつか会社を興したいと思っている若者は多いです。協力会社のなかには、小規模で個人事業のところや一人親方が多数います。そのような人たちを育て、後押しできるようになりたいと思っています。そのためにも、プラント関連工事を確実に受注し、皆で助け合い、協力し合って仕事に取り組むことはもちろん、労務単価を上げていき、より良い環境づくりをしていきたいと思います。
【内山 義之】
<プロフィール>
前田 彰(まえだ・あきら)
1970年、長崎県出身。卒業後、90年4月とび・土工工事の広瀬工業に入社。とび工としてさまざまな現場にて経験を重ね、97年に前田工業を創業、2005年6月(有)創誠建設として法人化、11年4月に(株)創誠に組織変更。1級とび技能士資格をもち、現在は営業部長を務める。趣味はゴルフ。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:前田 美佳
所在地:福岡市南区長住2-1-5
設 立:2005年6月
資本金:1,000万円
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