中国発の市況悪化で苦しむ韓国石油化学業界(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏相次ぐ中国のナフサ設備新増設
数十年間にわたり、韓国は中国に石油化学製品の基礎化学品を輸出してきた。しかし、中国は、自国内に化学工場を新増設することによって自給ができるようになり、韓国の輸入量は急減。中国の代わりにインド、米国、ベトナムなど輸出先が多様化したものの、輸出量の減少は避けられなかった。
中国のエチレンの生産能力はすでに世界1位で、自国の需要を賄うことはいうまでもなく、余った分は東南アジアに輸出している。中国だけでなく、米国もエチレン増設競争に加わり、エチレンは供給過剰の状態にある。
中国の要因以外にも逆風が
中国への輸出の急減が韓国の石油化学業界にとって大きなダメージとなっているが、それ以外にも業界に逆風が吹いている。それはプラスチック使用に対する世界的な規制の動きである。さらに石油企業が化学業界に参入することによって化学業界の競争が激しくなっている。以前はエチレンなどの需要の多い基礎化学品を生産しているだけで売れていたが、現在は中国企業との競争も激しくなり、価格が落ち、その結果マージンも減っている。よって、汎用品では中国企業と競争できないので、韓国企業に戦略の転換が求められている。中国と競争するのではなく、中国では生産できない高付加価値の製品を生産しない限り、石油化学企業は生き残れなくなるからだ。
解決策を模索するが
石油化学業界では、今回の市況悪化は一時的なものというより構造的な問題に原因があり、状況は簡単に解決されないと見られている。そこで事業の構造調整とともに新事業に活路を求める戦略を模索している。
各社は原料のバイオ化や、CO2の利活用、リサイクル技術の開発など、環境負荷低減の取り組みを進めている。LG化学は第2工場を売却する方法まで検討しているようだ。なぜかというと、汎用製品の生産では、中国の価格攻勢に太刀打ちできないからだ。売上高の半分以上を占めている石油化学事業に対する構造調整に取り組むと同時に、車載電池、環境に優しい素材、創薬などの新しい成長エンジンを育てるという戦略である。
ロッテケミカルも現在の状況に危機感を感じており、事業の主軸を高付加価値製品や環境に優しい製品として、生産拠点を海外にシフト。インドネシアに新生産拠点を構えるなど、車載電池などの新分野にも活発に投資をしている。
需要減、中国企業の供給過剰、プラスチックへの規制の動きなど、複合的な要因で市況が悪化しているなか、各社の課題解決能力が問われている。
中国発の供給過剰への警鐘が10年前から鳴らされていたようだが、それに耳を傾けず、その対応を疎かにした韓国の石油化学業界につけが回っていると言っても過言ではなく、今回の危機に対応できるかどうかが世界から注目されている。
軽工業から重工業へと産業の軸をシフトさせ、世界的に例を見ないほどの成功を収めたといっても過言ではない韓国経済だが、昨今はさまざまな分野において中国に主導権を奪われつつあり、韓国の国家競争力が懸念されている。
(了)
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