新型インフル行動計画 パンデミック条約否決でも「粛々と進める」と新藤大臣(前)
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政府が6月に閣議決定を目指す「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」について新藤義孝感染症危機管理担当相は10日、パンデミック条約や国際保健規則(IHR)改定が6月のWHO(国際保健機関)総会で否決されても「粛々と進める」との考えを示した。同計画には偽情報・誤情報への取り締まりも盛り込まれている。
同計画は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくもので、感染症危機が発生した場合にはこれを参考に基本的対処方針が策定される。新型コロナ騒動を受けて、岸田文雄内閣が7年ぶりの改定を目指す。
13項目の対策のうち「情報提供・共有、リスクコミュニケーション」には偽・誤情報を監視する「モニタリング」の実施や、それら情報に対して国がSNS(交流サイト)などのプラットフォーム事業者に対し要請・協力を行うことなども定められている。
言論統制につながるのではないかとの懸念があり、日本新聞協会加盟社で唯一、中部日本放送(名古屋市、CBC)がこの問題を3日に取り上げた。4月24日から2週間実施した意見募集(パブリックコメント)には約19万件もの応募があったことを新藤氏が明かした。
行動計画と
パンデミック条約・IHRの類似性新型インフルエンザ等対策政府行動計画改正の背景にあるものは何か。同改正案には、パンデミック条約やIHR改定の提案書と同じような文言が頻出する。
たとえば、行動計画案の⑨治療薬・治療法に「抗インフルエンザウイルス薬を含む感染症危機管理対応医薬品等の備蓄・確認、流通体制の整備」の項目があるが、IHR改定案には「保健製品の割り当て計画を通じて生産手段を管理させ、パンデミック対応製品を指示通り供給させるよう求める」の記述がある。
ワクチンパスポートに関する部分では、行動計画の⑤水際対策に「帰国者等の健康監視に必要なシステム整備(厚労省、デジタル庁)」の項目があるのに対し、IHR改定案には「旅行者の健康状態についての申告書を策定し、適用する仕組みを確実につくる。……被接触者追跡の促進のようなあらゆる予防対策が提供されるようにする」のくだりがある。
公共交通機関内での乗客の隔離について、行動計画案の⑤水際対策に「国は、有症状者が搭乗手続きをしようとした場合には、必要に応じて搭乗拒否を行うよう、船舶・航空会社などに要請する」「船舶または機内における必要な感染症対策を講じるよう、船舶・航空会社に対応を要請する」などの一節があるのに対し、IHR改定案にも「飛行機のパイロットまたは船舶の船長に対し、その輸送機関内で疾病のまん延を防ぐため必要に応じて実行可能な対策を取るよう要求することができる」との記述がある。
言論統制を思わせる箇所では、行動計画案に「偽・誤情報への対策として、国はSNS等のプラットフォーム事業者が行う取り組みに対して必要な要請・協力などを行う」とあるのに対し、IHR改定案には「誤情報・信頼のない情報への対抗措置、メディア、SNSなどにおける予防および対策と活動」の項目がある。パンデミック条約案にも「間違った情報または誤解を招く情報もしくは虚偽情報と闘う」の文言がある。
この偽情報対策についてはほかにも、「感染症に関するリテラシーを高める」(行動計画)と「パンデミックに関するリテラシーを強化する」(パンデミック条約)、「科学的根拠に基づいて分かりやすく説明を行う」(行動計画)と「科学と証拠に基づいた情報アプローチを推進」(パンデミック条約)など同じキーワードが見られる。行動計画にある「インフォデミック」も、パンデミック条約案の23年10月30日版まであった語句だ。
(つづく)
【ジャーナリスト/高橋清隆】
<プロフィール>
高橋清隆(たかはし・きよたか)
1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)、『山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった』(Amazonオンデマンド)。ブログ『高橋清隆の文書館』関連キーワード
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